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打倒トム

アカデミーの放課後を知らせる鐘が鳴る。ぞろぞろと出て行く生徒たちの中に、ドレット達の姿があった。マリー達と合流したドレット達は学院街の中にあるカフェに入る。メンバーはドレット、エリーゼ、リコ、クロム、マリーだ。五人の手元にそれぞれ頼んだ飲み物が置かれ、ドレット頼んだアイスティーの氷がカランと音をたてる。


「そろそろアーツフェスティバルだな」

「そうね、あなたは今年もトーナメントに出るんでしょう?」

「もちろんだ!エリーゼはどうする?」

「今年はやめとこうかしら。トムを見るとどうしてもね二年からは自由参加ですからリコはどうするの?」


話を振られてリコが飲んでいた飲み物から口を放す。


「わ、私も今年はやめとこうおと思います。戦うのはあまり好きではないので」

「そう、じゃあ当日は私と一緒に回りましょう!」

「私でよろしければ」


エリーゼがリコの手を握り、リコは恥ずかしそうにはにかんだ。


「私たちは強制参加だもんね」

「そうねクロム」

「頑張ろうねマリー!」


クロムは鼻から息を吐きながら拳を握る。やる気十分のようだ。

「クロムさんは武術部門。マリーは魔法部門なのね」

「まぁ魔法部門はマリーちゃんの一人勝ちだろうな。聞いたぜ同級生から頭一個どころじゃなくとびぬけてんだってな」

「そんな事ありませんよ」


謙遜するマリーをよそに、クロムが自慢げに話す


「マリーはすごいんですよ!入学したばっかりの時、主席入学してダンジョン貴族っていう事もあって、絡んでくる生徒とかいたんですけど、片っ端から氷漬けにして黙らせたんです」

「ちょ、ちょっとクロム?」

「それで、プライド高い貴族の子が決闘申し込んできたんですけど、そいつ取り巻き数人連れてきたんですよ?信じられますか?女の子相手に複数でかかっといて何がプライドだって感じですよ。でもマリーはそんなの気にも留めずに、一瞬で全員氷漬けにしちゃってみんなから『氷傑のマリー』って呼ばれるまでに……」


ペラペラ話すクロムが不穏な空気を察し、マリーを振り向く。そこには笑顔のマリーがいたが、その笑顔を見ると怖気が止まらない。


「クロム?やめましょうか」

「ハイ……」


クロムがシュンと縮こまる。


「プッ『氷傑のマリー』」


思わず噴き出したドレットにマリーが笑顔を向ける。


「ドレットさん?」



ドレットは目をそらし、コップに口をつける。


「そそそ、そういえば、トムが教導戦に出るそうですね」


リコが早急に話題をそらして、ドレットを助ける。ドレットはマリーに見えないようにサムズアップする。そして、全力で乗っかることにした。


「そうそれで提案なんだけどよ。俺達でトムに挑戦しようぜ」

「私たちで?」

「面白そう!」


ドレットの提案に、エリーゼは首を傾げクロムは乗り気だ。


「おう、なんだかんだで俺達ってトムと戦ったことないじゃん」

「確かにそうですね」

「いいわよ。トムと戦うの楽しそうだもの」

「私もやります!」


エリーゼとクロムが参加する気になったようだ。



「リコとマリーちゃんはどうする?」


ドレットは何か考え込んでいるリコとカップを傾けるマリー。


「無理にとは言わないけどな」

「いえ!やってみたいです!」


リコが参加表明すると同時に、カップがソーサーに置かれる。カチャンと陶器の乾いた音がする。


「私は用事があるので止めておきます」


マリーの言葉にドレット達は驚いた。兄に認めてもらいたがっているマリーなら絶対参加すると思っていたからだ。


「えーマリー出ないの?」


マリーは散歩をお預けされた犬のような顔をするクロムの頭に、微笑みながらそっと手を置く。


「ごめんね。どうしても外せないの」



そう言って、マリーは自分の荷物をまとめて、お金をテーブルに置く。


「ドレットさんも済みません。せっかくお誘いいただいたのに」

「いや、良いんだ用事があるならしょうがない」

「ありがとうございます。すみません私はこれで失礼します」


そう言って、お店から出て行った。


「なんだか忙しそうね?」



エリーゼがマリーを目で追いながら言う。


「なんだか、生徒会のお手伝いしてるみたいです」


クロムはしょんぼりしながら軽食を口に運ぶ。その姿は小動物のようだ。


「マリーさんの実力なら、生徒会から勧誘があっても当然ですね」

「そうだな。そういや、なんかトムも忙しそうにしてたな今日もすぐ帰っちまったし」

「そうね。でもなんだろう?マリーが忙しいのは納得がいくんだけど、トムが忙しそうにしてると嫌な予感がするわね」


そう言ってエリーゼが飲み干したコーヒーカップの底には、残った粉によってまだら模様が描かれていた。


 トムは王城のダンジョン【シークレットベース】の最奥でコルン王と対面していた。トムの前にお茶を置いた黒髪のメイドであり、このダンジョンのダンジョンマスターセシルは王の後に控える。


「なるほど、それでわざわざセシルに忠告しに来てくれたんだ。なら、直接くればいいのに」

「陛下がいた方が最奥に着くのが楽ですから」


王はトムの言葉に笑みをこぼす。


「君くらいだよ、僕を便利アイテムみたいに使うのは。それで?【苦痛なき世界の会】以外にもあるんだろ?僕に報告したい事」

「はい。【魔王城】に関してです」


コルン王はいつもの柔らかな表情おから真剣な表情に変わる。


「聞こうか」


コルン王はセシルに目をやる。セシルは頷くとボス部屋の扉をゆっくりと閉めていく。



最後まで読んで頂きありがとうございます!

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