作成依頼
無事に王族参観が終わり、偉人たちによってダンジョンがボロボロにされてから、数日がたった。今日はアカデミー帰りにエリトリッヒと外周部に行くことを伝え、マリー達は先に帰っていった。
「ハーディはお店を継いだんだね、なんだかタイムスリップしたみたいだ」
「お前、ロシュ―に魔石入れようとして、うっかり取り込まれるって、てか良くその状態で何年も生きてたな」
「状態保存の魔法式を編み込んでたからそれが作用したんじゃないかな?入れた魔石なら三年は持つはずだし。でも助けてくれて良かったよ。あのまま、状態保存が切れてたら、今頃ミイラだったよ」
道中、長い事【自立式ぬいぐるみ】ロシュ―の中に囚われていた理由がそんなうっかりだったと聞いて、トムは改めて、エリトリッヒの性格を思い出す。
「前からうっかりしたところはあったけど、ここまでとはな」
昔話に花を咲かせていると、アカデミー卒業生のハーディの働くデュアル魔道書商店に着いた。中に入ると、ハーディが出迎えてくれる。
「驚いた。本当にエリトリッヒなんだな」
「心配かけてごめんハーディ」
「良いんだよ。こうやって、また会えたんだから」
ハーディの目にはうっすら涙が浮かぶが、その表情は笑顔だった。ハーディは店の奥にある自宅に二人を招き入れる。
「汚いところで悪いな」
案内されたハーディの部屋には無数の本の塔が築かれている。
「相変わらずの本の虫だな」
本をどけて、三人が座る空間を作るハーディを見ながらトムは近くの本を手に取る。
「【古代の呪い大全】か。またマニアックなものを」
「トムのこれから行く古代迷宮にも役立つかもしれないぞ?」
「もう読んだんだよ。今は詰まってるけど」
「そういえばそうだよね、トムはこのまま古代ダンジョンまで行くものだと思ってたよ」
本を片付け、三人は腰を下ろす。
「ちょっといろいろあってな」
【知恵の塔】はまだ公表されていないため、二人には言葉を濁す。
「そうか、そういや、エリトリッヒはやっぱりロシュ―の中にいたんだな」
ハーディが少しあきれ顔でエリトリッヒを見る。エリトリッヒは恥ずかしそうにはにかみながら下を向く。
「面目ない」
「やっぱり?」
トムはハーディがエリトリッヒの居場所に心当たりがあるかのような口ぶりが引っかかった。
「エリトリッヒが行方不明になったって聞いてから、俺らはどうせ、ロシュ―の中に入って動けなくなってんじゃねぇかって話してたんだよ」
「なんで、探さなかったんだよ」
「そうだよ、そしたらもっと早く起きれたのに」
エリトリッヒの居場所をドンピシャで当てたハーディを睨む。
「無かったんだよ。どれだけ探しても」
「なかった?」
「そう、部室にも、こいつの部屋にも。だから教員に訊いたんだロシュ―は何処ですかって、そしたら、処分したっていうから中に人はいなかったか聞いても、いなかったって言うから。俺らもそれ以上探せなかったんだよ。一応、アカデミー中探したんだぞ」
「妙だな。その教員だれだった?」
「トムは知らない教員だよ。お前が居なくなった後に来た人だったからな。名前までは覚えてないんだよな。確か眼鏡をかけてる、ちょび髭の教員だった」
ハーディの言う人物像は、トムの中で副理事長と合致した。
『確かあの人は後から来たって言ってたな』
「ていうか、そうだ、トムあのことは良いの?」
すっかり忘れていた本題をエリトリッヒが思い出させてくれた。
「なんだ?なんか用があったのか?」
「この店に【魔法衣服・装飾大全】って置いてあるか?」
「そりゃ、魔道書商店だから、あるけどあんな服ばっかり載ってる本何に使うんだ?」
そう言いながら、本の山をかき分けて、目的の本を見つけ出し、トムに渡す。
「ちょっとエリトリッヒに作ってほしいものがあったんだけど、こいつ必要な素材は分かるのに、作り方分からないって言うから、調べようにもうちにそういう本が無くてな。ハーディなら持ってると思ったんだ」
トムはしゃべりながら、一ページ一ページめくっていく。めくる手が止まり、衣類の一つを指さす。
「こいつを作ってもらおうと思ってな」
「なんだよ、こんなの、その辺の店行けば買えるだろ」
「エリトリッヒが作るんだぞ?」
トムは笑みを浮かべる。それは悪戯を思いついた子供のようだった。
アカデミー内、生徒会室では、生徒会の面々が顔をそろえる。
「これで、宜しいですか?副理事長」
生徒達は、机の上にある資料をまとめて、窓際に立っている副理事長に手渡す。副理事長は資料に目を通し、満足そうにうなずく。
「計画は完璧だ。これでようやく、悲願を果たせる。君たちもここまで良く耐えてきた。計画が成功した暁には、幹部候補として、迎えよう」
副理事長が資料を置き、生徒会の面々を向く。すると、さっきまで、自分のいた位置から声がする。
「へーこれがあなた方が用意した【講義室】を破壊する計画ですか。計画ですか」
全員がそこを見ると見覚えのある一人の女生徒が立っていた。
「君は!」
全員が杖を構えようとするも、体が凍り付いたのように動かない。
「この計画は失敗しますよ。これでは兄さんを止められない。私が協力しましょうか?」
「君が?」
「えぇ、あなた方の目的には毛ほども興味ありませんが、ダンジョンを破壊できるなら協力しますよ」
「なんでヘイカー家の、トムの妹である君が私たちに協力する!」
「ダンジョンが憎いからです。ダンジョンは私から兄さんを奪い、父さんを奪いましたから」
そう冷たく言い放つのは、いつもの明るさはない、冷めた目をしたマリーだった。
最後まで読んで頂きありがとうございます!
連続投稿の最後になります!




