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生徒会

 トムは柔らかいソファーに座り、テーブルに置かれたお茶を飲む。テディベアのロシュ―をマリー達に託し、生徒会室に来ていた。


「それで説明してくれるかな?」


トムと相対している目の前にいる金髪の青年。この学園の生徒会長であるノーヴァス・リーディが、その翠の目をトムに向ける。


「説明って言われてもな、どこから説明すればいいんだ?」


そういうトムの周りは、他の生徒かいメンバーに囲まれている。


「最初から頼む」

「最初からかぁ。まずドレット達から、手芸部の動くテディベアの話を聴いたとき、自分が以前諸事情でこの学園に通い詰めていたときの知り合いが作ってたテディベアを思い出したんだ」

「それがあれなんだね」


トムはうなずき話を続ける。


「最初は放置しようと思ったんだが、動いてるって聞いて、もし、動いてるのがそのテディベアだったら、生徒じゃ対応できないからさっさと処分しようと思って実物を見に行ったんだ。そしたら、起動したから、窓の外に放り出して、中からエリトリッヒ引きずり出して拘束したってところかな」

「なるほど。なんで中に誰かいると思ったんだい?」

「中から心臓の鼓動が聞こえてきたからな。ロシュ―の中にいるなら、エリトリッヒしかいないだろうと思った」


そう言って、トムはお茶菓子のクッキーをヒョイと口に運ぶ。


「あんなぬいぐるみの中の鼓動なんて聞こえるものなの?」


脇に立っていた。切れ長の目をした女生徒が、トムを睨みながら言う。


「俺の耳は、常人の耳より良いんだ。真っ暗な洞窟の中とか探索してると自然と聴覚や嗅覚が鋭くなっていく。お前らだって、魔力で聴覚強化すれば聞こえたはずだよ」

「フーン」


納得していない顔の女生徒をノーヴァスが諫める。説明する事も説明したため、トムは帰ろうとする。


「もういいか?」

「あぁ、もういいよ協力してくれてありがとう」

「そうか、じゃあ」


そう言って、生徒会室を出て行く。


「会長にあの態度!許せない!」


切れ長の目をした女生徒、憤慨するもノーヴァスに止められる。


「彼はあれで良いんだよ。変わらないなぁ」


そういいながら、トムが出て行ったドアに微笑みを向ける。


『あれが生徒会ねぇ……ノーヴァス会長どっかで見た顔なんだよな』


小骨がのどに引っかかっているような、不愉快さを覚えながらも、エリトリッヒが運ばれた医務室へと向かう。




 トムは、マリーと一緒に屋敷まで帰って来ていた。その後ろに、ノシノシ歩く巨大テディベアのロシュ―とロシュ―に抱えられているエリトリッヒ。お姫様抱っこされているその姿は中性的な容姿も相まってまるで女性のようだった。


「本当に良いのかい?君のところでお世話になって?」

「構わないけど、お前こそいいのか?」

「願ったり叶ったりだよ!卒業後の進路とか一切考えてなかったから、行く当てもないんだ。家ももうないだろうし」


そう言って暗くなるエリトリッヒをマリーが気の毒そうに見る。


「三年近くも行方不明だと、死亡扱いで処分されてしまいますからね」

「ロシュ―が残ったんだから良いだろ」


屋敷の中に入ると、サクトゥとメイリーが出迎える。


「おかえりなさいませ、マリーお嬢様。トム坊ちゃま。そちらは?」


サクトゥがエリトリッヒとロシュ―を見る。人よりも大きなテディベアを見てもあまり動じない当たり、サクトゥのハートの強さはライオン以上だろう。トムとマリーはメイリーに荷物を預けながら、エリトリッヒの事を説明する。


「使用人としてこれから雇う。俺の知り合いだ。信用もできるし、本人はあれだが、エリトリッヒの作る自立人形は戦闘でも普段の生活でも役に立つだろう」

「よ、宜しくお願いします!」


サクトゥは、ロシュ―に抱かれた状態で頭を下げるエリトリッヒを、見定めるような視線で隅々まで見渡す。


「技術者としてですか?」

「いや、使用人としてだ。庭師のガーディに指導を頼む」

「なるほど、彼なら大丈夫でしょう。承知いたしました」

「と言っても、三年眠ってたから通常生活できるようになるまでは客室で面倒を見てやってくれ」

「承知いたしました。ニーナ!」


サクトゥに呼ばれたのは、メイド服に身を包んだ小柄な少女だ。呼びかけに応じやってくると、トム達に丁寧にお辞儀する。


「客室の用意を、それと、この方を客室へ」

「かしこまりました」


そういうと少女は、ロシュ―を先導し二階へと上がっていった。





 屋敷の全員にエリトリッヒとロシュ―の事を紹介した後、部屋のベッドに横たわって学院の教科書を読んでいると窓からコンコンと音が鳴る。トムが目を向けるとリルイがいた。窓を開け、招き入れると机の上に置いてある、リルイ専用ミニチュア部屋へと入っていった。


「また、街の探検か?」

「うん!楽しかったー!」

「そいつは何より」


この街に来てから、リルイは街の探検にトムのそばをいつの間にか離れることが多かった。今では、ちょっとした情報通だ。


「面白い人もいっぱいいたよー」


探検後は、トムにそこで見た人や、面白いお店やできごとを報告するのが慣例になっていた。リルイが楽しそうに話していると、机に立てかけてある愛刀が緑に光り、トムの目の前に、深緑色の軍服のような、きっちりとした服を着た翡翠髪の青年は、トムにひざまずく。


「辻風?どうした」


トムが青年に向かって呼びかける。現われたのは自分の契約している風の精霊【辻風】であった。


「姫のお話の邪魔をしてしまい、申し訳ございません。マスター、お探しの男が見つかりました。男は貴族街のノクティ男爵の家を出入りしているようです。今もそこに」


トムは【剣聖】レベッカ達、アスター騎士団が探していた、【苦痛なき世界の会】のエンブレムを刻んだ男を思い出した。


「ノクティ男爵?知らない名前だな。よくやった辻風」

「恐縮です」


そういうと、辻風は空気に溶けるように消えた。トムはかけてる白いローブに手をかけ、身支度を整える。インクと使い二枚の便せんを書き、腰に愛刀の【白無垢】を差して、メイリーとニーナ、サクトゥを呼んだ。トムはメイリーに、先ほど書いた手紙を渡す。


「ニーナはこの手紙をレベッカに渡してきてくれ。サクトゥはこの家の使用人に襲撃に備えるように通達」

「「承知いたしました」」


返答と共にサクトゥは使用人部屋に行き。ニーナは騎士団の詰め所に向かっていく。


「メイリーは俺と来い」

「はい。どこへでもお供いたします」


トムと、メイリーは貴族街へと夜の闇に消えていった。


最後まで読んで頂きありがとうございます!

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