ヘイカー家
長い事放置してしまい申し訳ございません!
森から出てきたトムをマリー達が迎える。
「兄さん!」
「わるい、待たせた」
トムは手を上げならみんなに近づく。
「苦痛なき世界の会の奴らは?」
「今、メイリーが騎士団に引き渡しに行ってる。悪かったな、せっかくの休息日なのにこんなことに巻き込んで」
「そんな事きにすんなよ」
ドレットの言葉にみんな頷く。
「俺らも、森を出よう」
「分かったわ」
全員が森を出る準備をする中、トムはイスとエストに向き直る。
「指揮官以外は処分した。遺体はそのままにしてきたけど大丈夫だろ?」
「えぇ、土に戻り、自然の円環に還っていくでしょう。ご迷惑をお掛けしましたトム」
「我からも礼を言う。ありがとうトム」
二人は頭を深く下げた。
「気にするな、またなんかあったら読んでくれ」
「えぇ、トムも無理しないで」
エストがトムの手を掴み優しく撫でる。
「おう」
トムは短く返事をして、マリー達の元へ走っていった。その姿を、エストは大きく手を振って見送る。
「また遊びに来てくださいねー!」
「おう!」
振り返り、全員で手を挙げて答える。
日が傾いてきたころ、ヘリルに戻ってきた全員は、各家に戻っていくためここで別れる。
「今日は付き合ってもらって悪かったな」
「いや、構わねぇよ。それよりも明日も休息日だろ?明日はどうだ?」
「あぁ、明日なら一日暇だな」
トムとドレット達は明日ヘリルの街を散策する約束をして、ヘイカー家の屋敷に戻ってきた。門前には、いつもどうりサクトゥが立っていた。
「おかえりなさいませ、ぼっちゃま、お嬢様」
「ただいまサクトゥ」
トムはエストからもらった葉の束とメモを、サクトゥに渡す。
「サクトゥ、これで薬湯を作ってくれるか?作り方はこれに書いてある。あと、メイリーは戻ってるか?」
「かしこまりました。メイリーでしたらもう戻っております」
「俺の部屋に来るように伝えておいてくれ。あと、食事後にこの屋敷の者を全員集めてくれ」
「かしこまりました。リビングに皆を集めておきましょう」
「すまないな」
「いえ、お気になさらず。坊ちゃまからのお願いも久しぶりですから皆喜ぶでしょう」
「そうか」
頬を掻き、照れるトムを孫を見るような優しい眼差しを向ける。
「食事の時間までまだありますので、メイリーに薬湯を渡しておきますね」
「ありがとう」
礼を言い部屋へと戻っていく。少しラフな部屋着に着替えて、ベッドへうつ伏せになる。心地よいまどろみに身を任せていると、ドアがノックされ、入室の許可を出すとメイリーがティーセットを持ってきた。
「薬湯をお持ちいたしました」
メイリーは慣れた手つきで、ティーカップに薬湯を注ぎ、トムに差し出す。受け取って一口すすって息をつく。
「ふぅー。これで、【枯山水】と【後光】が回復すれば良いけど……。あいつは騎士団に?」
「ハイ。引き渡しました。聴取結果はこちらにも教えてくださるそうです」
「そうか、メイリー。これからの屋敷の警備について、サクトゥと話し合って強化するように言っといてくれ」
「承知いたしました」
メイリーは深々と頭を下げると部屋を出て行った。トムはもう一度カップを手に取り、薬湯を飲みほして横になる。そして、下がる瞼を受け入れて、眠りについた。
トムはノックとともにマリーの声で目を覚ました。
「兄さん、ご飯が出来たそうですよ」
「あぁ、すまん、今行く」
気だるそうに体を起き上がらせ、頭を掻く。扉を開け、マリーについてリビングへ降りるとレイカはすでに席についていた。二人が席に着くと、食欲を誘う匂いと共にメイドが食事を運んでくる。父親を抜いた一家団欒を楽しんだ後、使用人たちの食事も終わり、ヘイカー家のメイド、執事、コック、庭師、レイカ、マリー、トムの総勢二十名がリビングに集まった。トム達を中心に、集結した使用人たちは姿勢正しく整列している。
「みんな、これから休む時間だというにも関わらず申し訳ない」
「坊ちゃまの五年ぶりのお願いですから、皆喜んで集まってくださいました」
にこやかな表情を使用人全員がトムに向ける。ダンジョン巡りへと旅立ったあの小さかった子の成長を喜んでいた。そんな視線を受け恥ずかし気に頭を掻く
「ありがとう。すぐに済ませるな。今日【苦痛なき世界の会】の連中がシープフォレストを襲撃していて交戦した。指揮官らしき男は、騎士団に引き渡したからこれから詳しいことが訊けると思うが少し妙な事がある」
「妙な事ですか?」
マリーが首を傾げる。
「この前、学院街でのモンスター暴走事件でもあいつらは関与していると騎士団から聞いたんだが、今まではこんなに頻繁に動く連中ではなかったし、ここまで過激な手を使う事もなかった」
片目に大きな傷のあるコック長が手を上げる。
「何で急にそんな過激になったんですかい?」
「指導者が変わったそうだ。そこで、みんなに気を付けてほしい事なんだが、あいつらが狙う【苦痛を与える対象】にはもちろんダンジョンが含まれる。そこの管理を任されている、ヘイカー家はあいつらにとっては悪の親玉同然だ。ここが標的になる可能性がある。そこで警備を強化してほしいのと、怪しい人物を見かけたら、母様か俺に伝えてほしい。みんなが遅れを取るとは思わない。しかし、油断はしないでくれ」
「「「「「承知いたしました!」」」」」
使用人全員の凛とした返事がリビングにこだまする。
「サクトゥ」
「はい」
「ダンジョンの管理に携わってるやつらにも、気を付けるよう通達してほしい。異変を感じたらすぐに伝えるように。そしてもし、ダンジョンが崩壊を起こしたら、自分の命を優先して動けと伝えてくれ」
トムらしい指令にサクトゥは微笑み頭を下げる。
「速達でお送りいたします」
「面倒をかける」
「滅相もない」
「みんなも、こんな時間にありがとう。ゆっくり休んで、明日も頼む」
「「「「はい!坊ちゃま!」」」」
使用人の力強い返事と共に皆が部屋や持ち場に帰っていく。トムはリビングの窓から外を見てため息をついた。
「親父……」
小さな呟きは誰にも届かなかった。
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