森を壊す者
「お前ら・・・・・・誰と戦ってる」
トムの言葉に先ほどまでの空気が変わった。エストもイスもバツの悪い顔をしながら答える。
「なんの話でしょう?」
「ごまかすな、いつも森精霊の聖域によりつかないイスがここにいる時点でこの森で異常事態が起きてるのは明らかだ」
「我は偶々ここに・・・・・・」
明かに目を泳がせるイスにトムはジト目を向ける。
「嘘つけ、それにエストお前、消耗してるな。それも、自己修復できない程に。何と戦ってる加勢するぞ。困ってる友達を放っておけるほど俺は冷徹じゃない」
「はぁ、だからこそ話したくないのです。私たちはあなたの友人として、やっと普通の学生生活を送っているあなたの邪魔をしたくない。面倒事に巻き込みたくないのです」
エストの言葉にトムは拳を握りしめる。
「お前らが俺の事を思ってくれるのは嬉しいけど、頼ってくんないのは寂しい。確かに面倒事は嫌だし、同世代の友達と学校行って遊ぶ普通の生活なんて今まで無かった。けどよ、困ってる友達助けるのだって普通の事だろ?」
エストとイスは真っすぐとこちらを見つめる眼差しに、大きくため息をついた。
「分かりました教えましょう。正直厳しい戦いになってきたので加勢は助かります」
諦めたエストの口から語られた現状は芳しくなかった。二週間ほど前に二人のローブを着た男女がこの聖域までやってきてエストを襲ったそうだ。しかし、森の管理人である森精霊にたった二人でかなうはずもなく、ボコボコにして縛り森の外に放置したそうだ。しかし、仲間を呼んだのであろうローブの男女は森の外周から徐々に森を焼き始めた。そして見つけた羊を片っ端から狩り始めた。火の手が上がる度、エストは消化しながら彼らと戦う事をここ10日間昼夜問わず繰り返し、疲弊し始めていた。羊狩りも深刻化し、これ以上は生態系に異常をきたしかねないため、イスに頼み羊を森の奥にから出ないようにしているそうだ。
「敵は?」
ここまで聴いてトムは一番聞きたいことを訊ねる。
「【苦痛なき世界の会】だと思います。ローブの下に彼らの紋章が見えました」
「奴らは今どこに?」
「分かりません。気配遮断の結界何重にも施し動いてるようです。正確な位置が分からず。どれくらいの規模でこの森にいるのかは不明です。どうやら、私が人を殺さないのに気づいたようで、ここのところは昼夜問わず森を焼いています。今日はまだみたいですけど」
「手慣れてるな。【森殺し】か」
「えぇおそらく」
トムはおもむろに刀を抜き、刀身に手をかざす。
「【辻風】」
トムの声に刀身が緑に染まる。すると、目の前に小さな竜巻ができる。
「風の流れがおかしい所を探せ」
竜巻に話しかけると竜巻は溶けるように消える。トムはマリー達を振り返る。
「お前らはここに残ってろ。敵を見つけ次第、おれが行ってくる」
「兄さん私も」
「ダメだ」
「なんでですか!」
マリーの進言も即座に却下する。
「お前は人を殺したことが無いだろう」
「・・・・・・」
トムの言葉に黙り込む。
「確実に対人戦闘になる。人を殺すのは魔物を殺すのとは訳が違う。お前にはまだ早い」
「でも・・・・・・」
「マリーやめましょう。トムの言う通りよ。まだ早いわ。それに、森精霊を消耗させるほどの相手では、私たちは役に立たない。悔しいけどね」
エリーゼがマリーの肩を掴み宥める。トムはエリーゼに目礼して感謝を伝える。その時、エストが苦悶の声を吐く。
「っつ!・・・・・・始まりましたね。ここから北東に行ったところです」
「分かった。イス、エストみんなを頼む」
「えぇ、すみません面倒事に巻き込んでしまって」
「我が命に代えても守ろう」
「気にすんな、じゃあ行ってくる」
そういうと、トムは北東へ向かい走り出した。その背中をマリーは見つめる。
「まだ、あんなに遠いんですね」
小さな呟きは、木々のさざめきにかき消された。
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