晩餐会
偉人会後は、王宮で行われる晩餐会の参加が義務づけられている。それは普段集まることのない偉人達と王族との交流の場である。晩餐会とは言うが、どちらかというと砕けた食事会に近い。
勇者は心を折られレイウス教皇国に帰っていった。帰り際、トムは聖騎士に向けて怒気を飛ばしながら不機嫌に告げる。
「今回の事は、聖騎士長に正式に抗議させてもらう」
その言葉に聖騎士たちの顔が青ざめていく。そんなの関係なしに、今度は虚ろな目をしている勇者に向かっ
て言う。
「あの腹黒巫女に伝えとけ、『用があるならお前が来い』」
言う事だけ言ったトムは王城に戻り正装にまた着替えなおす。そして、王宮の大広間に通された、そこには八偉人と王のほかに三人の女性が既に席についていた。女性の一人がトムを手招きする。
「兄さんこちらです」
「おいおいマリー、無礼講とはいえ晩餐会なんだから行儀悪いぞ」
その女性の一人はマリーだった。マリーの隣に座る女性と王の隣に座る女性にトムは挨拶する。
「フィリー様。ララ様ご無沙汰しております。先ほどはお騒がせしました」
「構いませんよ」
「私も見たかったー」
この国の女王フィリー・エルヴェストとマリーと同い年の姫ララ・エルヴェストだった。あと王族には王子もいるのだが現在、次期王になるため見分を広めに外国へ留学している。ちなみにあの気さくな王はコルン・エルヴェストという名前が立ったりする。トムは席に着き料理が運び込まれていく。
「兄さん、勇者は強かったですか?」
「私も気になる!教えてよお兄」
マリーとララのキラキラとした目がトムを射貫く。
「んー?マリーの方が強いんじゃないか?」
「その程度で兄さんに決闘を?」
「その人スゴイ馬鹿だね」
ララの言葉にその場の全員が頷く。
「なんか、拍子抜けだったなぁ」
「あの自信はどこから来てたのかのぅ」
「魔力は多かった」
「【加護】がスゴイのでは?」
「あぁ勇者は強力な【加護】を持っているからねぇ」
偉人達の勇者への評価は、期待外れだったからかさんざんだ。トムはもう終わったこととばかりに、目の前の料理を楽しむ。さすが、王宮料理番の料理、一品一品手が込んでおり舌を喜ばせている。そんな中、王が口を開く。
「でもねぇ、巫女の予言も気になるねぇ」
「魔王の復活、ですか」
いつになく真剣な顔の王と王女は思案する。
「あの腹黒巫女が何考えてるのか知らないけど、あいつが【予言】だというなら間違いなく復活するでしょう。まぁ。魔王討伐は勇者しかできないですし、教皇国が魔王討伐するまでこちらは耐えるしかないでしょう。当面は【魔人】対策でしょうけど、この国には【守護聖女】の結界がありますから、月交代で八偉人が六人ずつ駐在すべきでしょうね」
「うーん、みんな頼める?」
トムの意見を聞き王が八偉人たちに訊ねる。と言っても半数が王国の軍などに属しているため、自由奔放な【探索王】【歩法老師】【歴史魔女】が月交代で王国に拘束されるだけで、他の偉人達には特に影響がないため全員が了承した。
「しばらくはここで、弟子たちをきたえようかのう」
「じゃあ、最初はゲイルで決まりね」
「父には伝えておきます」
「まぁダルケンがいなくても、トムがいればいいけどな、てかもうトムも偉人にしちまおうぜ。もう【ダンジョン王】って言う、立派な通り名もあるし」
オイゲンがトムに言うと明らかに嫌そうな顔をするトム。
「嫌ですよ、偉人認定なんててめんどくさい。それに偉人にたる成果も残せてませんし」
「いや、上級ダンジョンの全て踏破してる時点で十分だと思いますけど」
「それは父と一緒だし」
「だけど、トムのおかげでダンジョンの正しい知識も得られるようになって、新人探索者の死亡件数も格段に下がったでしょ?」
「それはそうだけど」
偉人達との会話を真面目に聞いている王だがすごく残念そうにトムを見る。
「本当は、偉人認定してあげたいんだけどね~もうダンジョンに関する偉人がいる以上、同系統の偉人は規則的にダメなんだよね」
「残念ですね」
「全然残念ではありません」
王と女王が残念がる中、きっぱりと断る。
「そういえば、マリーから聞いたけどお兄ってアカデミーで講師やってるんでしょ?私もいきたいなぁ?」
「それは、私も行きたい」
ララと【大魔装】ティナの無垢な目がトム突き刺さる。
「兄さんの授業は素晴らしいですよ」
マリーが何故か胸を張り、鼻高々といった様子に二人は羨ましそうマリーを見る。
「実際、面白かった」
タケルがつぶやくとトムがあきれた視線を向ける。
「タケル、お前いつ来てたんだよ」
「レベッカとの決闘あたりからずっと、あの疑似ダンジョンは楽しそうだった。今度使わせてほしい」
「お?そんな、面白そうなの作ったのか?俺にもやらせろよ」
「わしもやってみたいのう」
「私も!」
「八偉人が参加するような大層なもんじゃないから」
疑似ダンジョンに、オイゲン、ゲイル、レベッカが反応するが、トムは勘弁願いたかった。ふと王を見ると王を始め王族の方々が興味津々にトムを見る。その目の中には『やってみたい』と書いてあるのを確認し大きくため息をつく。どうやらトムは面倒な人を呼び寄せる体質の用だ。
「勘弁してください……」
トムの情けない声が響き、全員が笑う。そのまま晩餐会は進み、平和な時を過ごしていた。
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