授業の講評と会の報せ
ダンジョンからマリー達が帰還し、生徒全員の前にトムは立つ。
「今回の疑似ダンジョン攻略で粗方分かったと思う。今の自分がダンジョンに入ったら死ぬって言う事実とダンジョンがどれだけ怖いか。今回は物理トラップのみにも関わらずほとんどの生徒が死亡判定だ。本物に潜ったら魔物や魔法トラップなども気にしながら進まなきゃいけない。あのゴーレムなんてダンジョンでは当たり前のようにいるし、あれ以上の強さの魔物もうじゃうじゃいる。そんな中依頼されたものを探し、何日もダンジョンの中で暮らすんだ」
「ダンジョンで暮らす?」
「あのゴーレムが当たり前・・・・・・」
ほとんどの生徒たちの顔が引きつるのをみて、トムは腕をまくる。制服の袖からあらわになるその腕は大きな傷が奔っていた。
「これは最近オレが入ったダンジョンでつけられた傷だ。この前の決闘を見ていた奴なら分かると思うが、【剣聖】に引き分ける力とダンジョン攻略の経験がある俺でもこうなる。ダンジョンでは常に死と隣合わせだと知ってもらいたい。一緒に行ったパーティーメンバーが次の瞬間には死んでるかもしれない、そういう場所だ」
マリー以外の生徒は思わず息を呑んだ。
「それでもまだ探索者になりたいなら構わない、このまま講義を受けてくれ。自分が本当に探索者になりたいのか、よく考えておいてくれ。今日の授業はここまで。次の授業からこの疑似ダンジョンに各自参加してくれ」
その場で解散した生徒たちは表情暗く、探索者になるかどうか話し合いながら帰っていった。マリー達はトムに近寄り話しかける。
「良かったの?生徒減っちゃうかもしれないわよ」
エリーゼが尋ねるとトムはリルイを頭に乗せながら答える。
「良いのさ、これでダンジョンに軽率に突っ込んで死ぬ奴が減るなら。それに全て本当の事だこの事実に
臆するならやめた方がいい。というかドレット前から思ってたがお前最悪だぞ。突っ込んで敵の死亡確認せず背中見せるなんて、リコさんがいなかったら死んでたぞ」
ドレットはバツの悪い顔をしながら頭を掻く。
「イヤー参った。ゴーレムの相手だって初めてだしよ。リコさんありがとな」
「そそそ、そんなお礼なんてご無事でよかったです」
リコがかぶり振りながら謙遜するのを微笑ましく思いながら、全員は少し雑談をした後に帰路についた。
六人はすっかり仲良くなり、お互いを呼び捨てで呼び合える中になっていた。エリーゼ達と途中で別れ、トムとマリーが茜色に染まる家路進むレンガ屋根の家々を見ながら帰る。見慣れた屋敷の前にはいつも道理サクトゥが待っていた。
「おかえりなさいませ。トム様、マリー様」
「また偶然か?サクトゥ」
「もちろんでございます。トム様」
「ただいまサクトゥ」
お決まりの会話をして、二人はサクトゥに荷物を預けリビングに進むとレイカが一つの封筒とにらめっこしていた。その封筒には封蝋がしてあり、その模様はこの国で知らない者がいない物であった。
「ただいま戻りました。お母さま」
「ただいまです母様」
二人が帰宅の挨拶をすると、レイカもにこやかに返事をし、二人を自分の対面に座るよう促す。二人は何だろうと思いつつ席に座る。その時、トムの目に封蝋の紋章が目に入り、動きが止まる。
「それ、王家の家紋ですよね?何かのパーティーのお誘いですか?」
うすうす何の用か検討のついているトムは白々しく聞く。レイカは相変わらずほんわかとした笑みを浮かべながら、トムに封筒を差し出した。トムが封筒を開け中身を確認する。マリーも横から覗き込み内容を見ると、自分の兄に同情的視線を向けた。トムも内容が分かると大きくため息をついた。
「トムちゃん【偉人会】に行ってきてね!」
母・レイカの明るい声がリビングに響き、トムは一層深いため息をついた。
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