ゴーレム撃滅戦
「おい!モンスターは出ないんじゃなかったのかよ」
一人の生徒がトムにつかみかかろうとするが。トムがその手を交わして足をかける。生徒は地べたに倒れ込みトムを睨みつけるが、トムはまるで気にしない。
「ゴーレムは魔物じゃない」
「はぁ?」
「じゃあ聞くがお前ら、野生のゴーレムって見たことあるのか?普通の街道や、魔物の生息地で見たことあるか?」
そう聞かれても誰も答えられなかった。確かにゴーレムは魔物だと誰かに教わったことはない。しかし、自立行動をして人間を襲ってくるならそれは魔物だと判断していた。そんな周囲の反応をよそに、ギブアップした生徒たちに向かって言う。
「今の魔物学の講師が誰か知らんが、ゴーレムは魔物に分類されない。あれは魔道具に分類される。そして倒すためには中央の魔道具本体を破壊しなければならない」
そう言いながら、トムは制服のポケットから一つの球状の魔道具を取り出す。
「西方の国サザンでは、ゴーレムを使役し仕事をする者たちがいる。そのゴーレムを作り出すときに使われる道具がこれだ。この「ゴーレム核」を使って周囲の素材を集めゴーレムを作る。今回のあれはオレがダンジョンで見つけたゴーレム核を使って作った特別なゴーレムだ」
そこまでいうと、トムはリルイに言って画面を大きくしてもらう。空中にでかでかと映し出された映像には、マリー達が一歩も引かずゴーレムと対峙している様子が投影されていた。
「みんなよく見ておけ、これは今この瞬間も他のダンジョンで探索者が遭遇している出来事であり、探索者の日常だ」
他の生徒たちは投影される映像に目を向けた時。リコがその盾でゴーレムの受け流し、ドレットとクロムがゴーレムの足が打ち砕かれた。
空気を震わす轟音が部屋に響き渡る、リコが盾でゴーレムの攻撃をさばきながら、ドレットとクロムが足元に潜り込みゴーレムを破砕していく。ゴーレムはゆっくりと地面に倒れ込んだ。
「ふぅ、やったな」
額を拭いながらドレットが一息つくと、倒れたゴーレムが手を使いドレットの上に振り下ろした。
「ドレット!」
エリーゼが叫び近づこうとするがもう片方の手がエリーゼに向かってくる。横なぎに振るわ有れる手を軽々と飛び越え、その腕を斬り落とす。ドレットの方を見るとリコが盾で腕を受け止めている。
「【アクアリル・カッター】」
詠唱と共に水の刃がゴーレムのもう一方の手を斬り落とす。マリーはショートワンド片手にリコを担ぎ上げドレットを魔法で浮かし後方に飛ばす。安全圏まで離れた全員はもう一度体制を立て直す。
「リコさん少しじっとしていてください」
マリーがリコの腫れあがる足を治療する。暖かい光が足を包み腫れが引いていく。
「ドレットさん言いたいことはいくつかありますが、まずはアレを倒してからです」
「面目ねぇ」
ドレットが後頭部を掻きながら謝る。
「ねぇあのゴーレム再生してない?」
「ゴーレムは基本的に【ゴーレム核】を破壊しない限り復活します。再生している今なら魔力を放っているはず。リコさん見つけられますか?」
「少し待ってください」
リコは目をすませゴーレムを睦める。
「見つけましたちょうど中央あのお腹のあたりです」
「うげぇ、よりによってあそこ?」
クロムは心底嫌そうな顔をする。そこはゴーレムの一番硬い部分なのだ。
「リコさんまだやれますか?」
マリーはリコに語り掛ける。もはや、リコが動けないのであれば撤退するしかないと考えていた。
「大丈夫です」
「分かりました。リコさんあのゴーレムの気を引いてください。ドレットさんとエリーゼさんはゴーレムの動きを止めてください。私はお腹部分に攻撃を集中させ装甲を削ります。薄くなったところをクロムは全力でたたいて核を破壊して」
「分かった」
「おう」
「わかりました」
「分かったわ」
再生が終わりこちらに向かってくるゴーレムに、全員がマリーの作戦通りに動く、まずリコが盾を構え前に出る。
「行きます!【オン・ステージ】!」
リコから光があふれ出る。ゴーレムはリコしか見えなくなり唯一見えているリコに向けて拳を放つ。リコはその華奢な体で自分の体よりもでかい拳を受け止める。ゴーレムの動きが一瞬止まった瞬間に、その足元にエリーゼとドレットが滑り込む。
「ハッ」
「おりゃあぁぁああ」
ドレットの拳が足を砕きエリーゼの剣が足を斬り飛ばす。
「【アクアルバースト】」
マリーがうつ伏せに倒れそうになっているゴーレムのおなかに向かい高出力の水叩きつける。高圧でゴーレムを浸食する水の勢いに、起き上がり仰向けに倒れていく。高く飛び上がったクロムが拳を思いっきりお腹に叩き込む。
「【エクト式 華拳】!」
魔力を纏った拳は、ゴーレムに当たった箇所を中心に、魔力が華開くのように広がり爆散する。その威力はゴーレムの腹を深くえぐり、中の核もろとも破壊した。核を破壊されゴーレムは砂になっていく。
「やった!」
「クロム!」
全員息をつき勝利を喜ぶ。
その様子を見ていた外の生徒たちは手に汗を握っていた。
「この、激闘の後も探索は平然と続く、もし軽い気持ちで探索者になろうとしているなら、厳しいようだけど、やめた方がいい」
冷たいように聞こえるがそれが現実だった。トム自身、何人も軽い気持ちで入り、惨い死に方をする新人探索者たちを見てきている。その世界に飛び込もうとしている事をみんなに知ってほしくてこの疑似ダンジョンを作った。過去の光景を思い出し、トムは拳を強く握りしめていた。
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