客人
トムは学園の応接室にて、二人の女騎士と向き合っていた。一人はエルヴェスト王国の中でも珍しい女性のみで構成された騎士団、アスター騎士団。その団長レベッカ・タスティフォードはエルヴェスト王国に属する【八偉人】の一人だった。その横に座る眼鏡をかけたもう一人は、レベッカの右腕と名高いローレン・ミルフィンだった。
「久しぶりだね!トム!」
「そっちは相変わらず元気そうだな、レベッカ」
「まぁね、トムがいなくて退屈だったけど」
期待を込めた視線を向けてくるレベッカに、トムは何を期待しているのか知っているので、ローレンの方を向く。
「お久しぶりです。ローレンさん、本日はどのようなご用件ですか?」
「久しぶりね、トム君」
「なんで、無視するのさー!試合しよ!試合!久しぶりに!ねぇってば!」
レベッカは流れるような動きで素早くトムの隣に座り、腕に抱き着く。
「はぁ、い・や・だ!」
トムが拒否するとレベッカは崩れ落ちた。コロコロと表情が変わるレベッカにローレンが言う。
「話が終わってからにしてください」
「ローちゃんまでぇ」
レベッカが白々しい泣きまねをし出したが、二人は気にせず話を続ける。
「今回来たのは、先日の襲撃の件です。被害は学院街のみでした。使われた魔法は【怪物饗宴】のようです。ですが、高等部グラウンドに出現したものは―――」
「【怪物行進】でしょ」
ローレンが言い切る前にトムが割り込む。ローレンはトムの言葉に静かにうなずく。
「さすがです。トム君」
「大方、学院街はブラフ、狙いはこの学園の何か」
「はい、我々もそう考えています」
「何か、心当たりはありませんか?」
ローレンはトムの目をみて言う。
「無いですね、というよりそういうのは学園長に訊くべきでは?」
ローレンはしばらくトムの態度を見て、息を吐きだした。
「はぁ、学園長にはすでに聞きました。この質問は、この学園の教師全員にする質問です」
「騎士団は、学園内に犯人がいると?」
トムが訊くと、ローレンは水晶を取り出し、トムの前に出す。水晶から光が出てきて、空気中にある画像を映し出す。そこには、ローブを目深にかぶる人物が映っていた。誰なのかは分からないがこの人物のローブの左胸に、水の雫に斜線が引かれたようなマークがあった。それを見たトムは見たくないものを見せられたかのように顔をしかめる。
「この人物がここ最近、学院街で目撃されています」
「【苦痛なき世界の会】だな」
「その通り、あなたとは因縁深いですよね」
「まぁ、あいつらはダンジョンを全て破壊しようとするからな、どうしてもぶつかることがあります。もしかして、レクチャールームを狙ったと?あいつらは学園を襲えるまで力をつけたんですか?」
「近年、急激に力をつけてきています。指導者が変わったと聞きしました」
「なるほど、学園内に入り込んでいるかもしれないと」
「はい、そこで、ご協力いただきたく思います」
「分かりました」
トムが快諾するとローレンとレベッカは驚いた顔をした。
「何か?」
トムが訊く。
「いや、トム君はもっとごねるかと」
「どうしたの!トム!ダンジョンに行き過ぎておかしくなった?!」
レベッカに肩を揺さぶられながらトムは不本意そうに答える。
「おかしくなってねぇよ!ただ、あいつらは事あるごとにちょっかいかけられて、イライラしてたから協力しようと思っただけだよ!」
ローレンは満足そうに笑いながら、トムと握手をする。
「じゃあ今回の件、協力よろしくね」
「えぇ」
トムは手を離すと応接室から出ようと立ち上がろうとした瞬間、肩を押さえつけられた。トムの肩がミシミシというほどの怪力でレベッカは満面の笑みだった。
「トム、試合しよ」
「いや―――」
トムは言葉を言い終わる前に、レベッカに引きづられていった。
最後まで読んでくださりありがとうございます!
次回は苦手な戦闘シーン……
頑張らなくては




