トムのダンジョン学
トムの挨拶に教室がざわつく、そのうちの上級生らしい三人の男子生徒が立ち上がった。
「お前が講師?冗談だろ?俺よりも年下じゃないか、弱そうだし、そんなヤツに教わる事なんかない!」
「「そうだそうだ!」」
教室にいる上級生や同級生の生徒たちから不満の声が上がる。トムは『まぁ、こうなるわな』
と思い、用意していた策を提案しようとするが部屋が急激に寒くなってきた。
「あなた達黙りなさい、兄さんの授業を邪魔するなら許しません」
マリーがゆらりと立ち上がり、生徒たちを見る。クロムが横でたしなめようとするが声が届かない。
「特に、兄さんを弱そうといったあなたとその取り巻き、あまりやかましいと凍らせますよ」
光のない目で三人を見る。三人は椅子に倒れ込むように座りながらも悪態をつく。
「おまえ、オレが誰だかわかってるのか!俺はダンブルン家の長男レリック・ダンブルンだぞ!」
マリーは気にせず、未だ吠える三人に向かって杖を抜こうとしたとき、いつの間にか近づいていたトムがマリーから杖を取る。
「いい加減にしろ、マリー」
「でも兄さんアイツラニイサンノコトヲバカ二」
話しているうちにどんどんどす黒いオーラが出てくるマリーに、トムはデコピンする。
「予想してたことだ。落ち着け」
トムは全員に向かって言う。
「俺が、講師なのが気に食わないのは分かるが、これでも学園長が認めた講師だ。次の授業は実践形式にする。そこで、俺はみんなと戦おう。そこで俺に勝てたら授業なんて受けなくていい、俺に負けたら授業を受けるかどうかはみんなの自己判断に任せる。ただこれだけは約束する。探索者になるなら、ためになる事しか俺は教えない」
そこまで言い切り、教室のざわめきが一時的に収まったのを見てトムは授業を始めた。
「今日は、ダンジョンの基本的な知識を教えよう」
トムはそういうと、教卓の後ろにある黒板に向かいチョークを持ちピラミッドを書く。
「ダンジョンは、大きく分けて三種類ある。分かる人?」
トムが教室を見渡すと、マリーが天を突くがごとく手を挙げている。他の生徒は誰も手を上げていなかった。
「じゃあ、マリー」
仕方なくマリーを指すトム。あてられたマリーは嬉しそうに答える。
「古代ダンジョン・上級ダンジョン・下級ダンジョンです!」
自信満々に答えるマリーにトムは微笑む。
「正解だ、この世界に存在するダンジョンは、この3種類に分けられる。上級ダンジョンは通称、アルカナダンジョンと呼ばれ、古代ダンジョンは総称、原初シリーズと呼ばれている。これらのダンジョンは難易度で分けられており、上級ダンジョンは攻略困難、そして、古代ダンジョンは攻略不可能のされている」
ここまで、言い切るとクロムが手を挙げた。
「何で、上級はアルカナダンジョンって言うんですか?」
「上級ダンジョンは全て、当時の天才魔導士・アルカナ=スカイフォールによって作られたものだからだ。」
教室にどよめきが走る。魔法を学ぶ者なら、誰もが知っている偉大な魔法使いの名だったからだ。さらに、ドレットが続けて質問する。
「古代ダンジョンは何で攻略不可能なんだ?」
「それは、未だ一人しかその存在を確認した者がいないからだ」
「それって・・・・・・」
「あぁ、予想ついてる人も居ると思う。この国の【八偉人】の一人、探索王・ダルケン・ヘイカー、俺とマリーの父親だ」
ここで、さらに教室が騒がしくなる。トムはそれを無視して授業を進めようとしたとき、ナタリアが講義室に飛び込んできた。
「トム大変!って、コホン、ヘイカー先生に来客です」
生徒たちの視線に気づき急いで取り繕うナタリアにトムは訝し気に訊ねる。
「来客って、誰ですか?」
「それは――――」
「トム!久しぶり!」
ナタリアが言い切る前に白銀の甲冑を身に纏ったブロンドヘアーの女性が現れた。
その人を見た生徒は目を丸くする。そして静まり返った教室の中、「おーい」とのんきに手を振る女性に生徒の一人がつぶやいた。
「【剣聖】レベッカ・タスティフォード・・・・・・・」
トムは、レベッカを見て目をつむった。
『今日の授業はここまでだな』
未だ、トムの名前を呼びながら、手を振るレベッカにトムはため息をついた。
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