帰宅。
石畳の道を、二人の影が屋敷へと向かう。
「兄さんとアカデミーに通えるなんて、嬉しいです。」
「そうか?俺はめんどくさいんだがなぁ」
笑顔のマリーとは対照的に、トムは憂鬱そうに溜息を吐く。
「兄さんの授業、絶対聴きに行きますからね!」
「良いよ来なくて、お前に教えること少ないし」
目を輝かせ、こぶしを握るマリーの決意は固いようで、トムはまた溜息をつく。屋敷が見えてきたとき、スーツ姿の老人が門の前に立っていた。
「おかえりなさいませ、トム様、マリー様。」
二人に気づいた老人は洗練された、美しいお辞儀で二人を迎える。
「ただいま、サクトゥ」
「ただいま、ずっとここで待ってたのか?」
「まさか、たまたまでございます。」
そう言いながら、門を開け二人の持ち物を預かるサクトゥ。
屋敷のリビングに行くと、着物を着た、黒髪の女性がソファに腰かけていた。
「レイカ様お二人がご帰宅いたしました」
「お母様、ただいま帰りました」
「ただいま」
二人が声をかけると、女性は立ち上がる。
「おかえりなさい!」
そして、マリーを抱きしめる。そのあと、トムを抱きしめようとしたが、トムはレイカの顔を抑える。
「勘弁してください!母様!もう小さい子供じゃないのですから」
「トムちゃんはつれないのね、お母さん悲しい」
わざとらしく崩れ落ちるレイカに、困った顔をしていたら、リビングのテーブルから光の塊が飛んできた。
「二人ともおかえりー♪」
「リルイお前、見ないと思ったら帰ってたのかよ」
「だってお話、つまんないんだモーン」
リルイは頬を膨らましながら、トムの肩に座る。崩れ落ちているレイカをマリーが励ましていると、サクトゥがやってきた。
「夕食の用意が出来ました」
「ほら、夕食だってよ母様」
「ぐすん、分かったわ」
そのまま、三人は、テーブルに座る。家族団らんの夕食が始まった。トムはこれまでの話をしたり、ダンジョンで起こったことなどを二人に話した。すると、レイカが切り出した。
「それで、トムちゃんは入学できたのかしら、」
「ちゃんとできたよ、条件付きだけど」
「条件?」
首を傾げるレイカにマリーが興奮した様子で話す。
「兄さん、先生になられるんです!」
「あらー、それはすごいわね、是非とも、授業を見に行かなくちゃね」
「いや、やめて、本当にやめて」
賑やかに食事を終えた後、トムは部屋へと向かう。
「三年ぶりだなこの部屋も」
ドアを開けて驚いた。三年前と同じ状態になっている。しかし、埃もかぶらず、チリ一つなく掃除されていた。
「レイカ様が、トム様がいつ戻ってきてもいいようにと我々に掃除を命じていたのです」
いつの間にか後ろに現れたサクトゥに驚きながらも、トムは暖かい気持ちになった。
「ありがとう、サクトゥ、メイド長のサクラと母様にもそう言っといてくれ」
「かしこまりました。ですが、後日またご自身の口から感謝を伝える事をお勧めします」
「あぁ、ちゃんと言うよ」
「それが宜しいかと、では、お休みなさいませ」
「お休み」
変わらぬ部屋の変わらぬベットに寝転がる。
「小さくなったなぁ、このベット」
「ここが、トムが暮らしてた部屋?」
リルイが、ドアの隙間から入ってきた。探検するようにあたりを飛び回り、トムの腹の上に着地する。
「良い所だねーなんか落ち着く♪おかーさんもいい人だし♪」
「そうだな。」
三年間自分を待っていてくれたことをこそばゆく感じ、トムは睡魔に任せて眠りについた。
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