ササーキは勇者を召喚出来るらしい…
大魔道師が異世界奇譚に出現した
コマンド?
とある異世界にササーキという大魔道師が住んでいた(挨拶
ササーキはなんと「勇者」を異世界から召喚出来る能力を持っていた
すでに異世界からこの世界に来ていた「よくわからんがひたすら迷惑な力を使う魔王」を討伐するために強力な勇者を望んでいた国王ターナカは、武官たちの報告を聞くなり早速とばかりにササーキを王宮に呼ぶと、すぐに「大量の勇者を召喚せよ」と命令した。
召喚魔法を使う舞台は、王宮最上階にある「謁見の間」だ。
一般の人手は入ることも叶わないこの場所で今、この世界の命運を決める召喚が始まる
玉座に座って状況を見守る王様をはじめ、この国の数多くの武官や魔道神官が
ササーキと彼の開発した新型魔方陣をとり囲むように集まっていた。
「それでは始めます。
『おお、遙かなる悠久の歴史と多重なる異世界の変遷する門をくぐり抜け、
我らの強靱なる意志と未来への渇望に応えられし勇者よ!今ここにきたれ!」
大広間の中心に描かれた、複雑な文様が円形に並ぶ直径10m程度の魔方陣に向かい、ササーキは手に持った巨大な杖を掲げて、独特だが変な抑揚のある叫び声で叫んだ
「おおーっ」
「なんだこりゃー」
「ついに我が家にも勇者が来るのか?」
ターナカ王をはじめ、周囲で見ていた武官たちが、突然光り出した魔方陣に驚く
「べ…べつに珍しくなんかないし」
「ていうか、ファンタジーなんだから当たり前だよな」
魔道神官たちはそう言って平静を装いながらも、
見たことのない魔法に対する興味と驚きを隠せない様子だ
そうこうしている間にも魔方陣から放たれる光は強くなっていく
魔方陣の目の前に立っているササーキは古代文明の結晶「グラサン」をかけて対閃光防御をしつつ、さらに杖を両手で高く掲げると特殊な呪文を叫んだ
「ウエルカモーンオーイエーユウシャスアァアン!!!」
魔方陣からの光が消えていくと、魔方陣の中心に今までいなかった「人物」が姿を現す
「おお…勇者がついに?」
目を守っていた腕を下げながら、ターナカ王は勇者の姿を見るべく視線を向けた
魔方陣の中心に立っていたのは、体重100㎏は越えようかという巨漢の若者だった。
「なんだぁ?俺の注文したオムライスが光ったと思ったら、メイドのアノマロカリスちゃんが突然、ヒゲのおっさんに変わったぞ?まさにサプライズだぜイエッフー!」
喜んでるのか驚いているのかよくわからない声を上げながら、空気椅子のポーズで召喚された勇者は床に尻餅をつくと、そのまま後ろに1回転して魔方陣から離れた位置に止まり、気絶した。
「これが…勇者…」
「なんというか…防御力が高くて頑丈そうだな…」
「きっと、回転技を得意としてるに違いないっ」
状況を見ていた武官たちは王様の機嫌を取ろうと、とりあえず思いついた限りの言葉で勇者を褒め称えるが、その視線は空中を泳いでいた。
「残念ながら失敗でございます、申し訳ありません」
ササーキは深々と王に向かって頭を下げる
ターナカ王はそんなササーキに対して不満そうな顔を向けた
「ですがご安心ください王様。私めの魔方陣は複数の勇者を呼べるようにチューンナップされておりますゆえ」
そう言うとササーキは魔方陣の一部を書き換えて、再び勇者召喚を開始した
「勇者よ来たれー…以下略ぅぅっ!」
杖を再び高々と上げたササーキに呼応して、床の魔方陣が再び輝きだした
「まさか呪文を省略できるとは…」
「さすが希代の魔道師ササーキ殿。これほどの改良をすでに施されておられるとは」
「高速で召喚するための創意工夫。まさに魔法界の未来を先取りじゃ」
周囲の魔道神官たちは、ササーキの新しい発動方法に次々と感嘆の声を上げる
内心では「「「省略出来るならさっさとしろよハゲェ」」」とシンクロしていたが…
そして、2度目の召喚の光が収まると、魔方陣の上には新たな勇者が出現していた
腰回りだけ布で作られた防具をまとった…体重100㎏は越えているだろう巨漢である
「なんだ?突っ張りしていた柱がいきなり消えてしまったでゴワス」
そう言いながら巨漢の勇者は、張り手を引っ込めた際にバランスを崩すと尻餅をついて後ろに一回転し、そのまま石畳に頭を打って気絶し動かなくなってしまった。
「おおっ…この勇者、うちの近所に住んでたエド=モンドさんに似てるな」
「ああ、きっとエドさんの…ような高速攻撃が出来るのだろう」
「あのエドさん似なら、ゴブリンなら一発で倒す攻撃力を持っているに違いない」
周囲の武官は視線を空中に泳がせながら、適当に作ったエドさんをネタに勇者を誉めてみた。
内心では「「「エドさんって誰だよ?」」」というツッコミを押し殺しながら
「またも失敗でございます」
王様の機嫌を必死に取っていた周囲の人々の額に冷や汗が走る
王様の前でなければ全員、このハゲ魔道師に蹴りを加えていただろう
「では気を取り直して、『はいっ次っ!』」
悪びれもせずにササーキは、片手で高く振り上げた杖を魔方陣にたたきつける
魔方陣は先ほどと同じように光り輝き、次の勇者の召喚体勢に入った
「…」
「…」
「…」
周囲の魔道神官たちは、すでに思考を停止している
そんなさなか、魔方陣は突然、白い光ではなく赤い光を放ち始めた
「なんと王様!今回は希少ですぞ!」
赤い光を見たササーキは得意満面な笑顔を王様に向ける
一方ターナカ王は「はよせいや」という顔をササーキに返す
やがて光が収まってくると、そこには2人の勇者が出現した。
魔方陣の仕様なのか、今回もデブ…いや、体重を武器に出来そうな勇者の登場だ
「まさか、大人たちの勝手な都合で運命分かつ哀れな双子の勇者なのか?」
「相反する属性を持った、汎用性の高い戦闘力を持ってるにちがいない」
「いや、伝説の黒い騎士から身を守るために女神の加護の力で姿を2つにわけられたのだ」
周囲の武官は、どこで思いついたか知らないが
宴会芸をしくじった新人をフォローする中間管理職のサラリーマンよろしく
中二病の若干入った謎の設定をでっち上げて、なんとか場を盛り上げようとする。
「…やっと、成功したようだな」
召喚後に不慮の事故で気絶しない勇者がやっと出たのを見て
王様は「まぁこれでいいか?」と納得し、話を進める事にした。
ターナカ王は召喚された2人を見下ろしながら玉座からゆっくりと立ちあがると、魔方陣の上で並んで立っている2人に向かって威厳を込めた声で騙り始める。
「勇者よ!まずは我らの召喚に応えてくれたことを、心から感謝する。
現在の我が国は『魔王の脅威』によって日々、人々が理不尽に殺され苦しめられている。
ゆえに…」
王様はここで一呼吸置いて溜め、2人に強く言い放った
「勇者よ!この悪しき魔王を討伐せよ!」
「なんでやね~ん!」
片方の勇者は王様の言葉に対して間髪入れずにそう返すと、
もう片方の勇者に「つっこんだ」
「お客さん、即興ネタを自由に言うて頼んだけど、設定長いでほんま!
しかも魔王を倒せって?そらないわ~…て、おま、どこつかんでんねん??」
「ツッコミした勇者」が「ツッコミを食らって後ろに倒れそうな方の勇者」に目を向けると
後ろに倒れないように自分の袖口を掴んで耐えている姿が目に入った
「『そらないわや』ないで!あかん…いつも後ろにあるはずの『支え』が消えてるわ」
「だから本番前にちゃんと確認しとけゆぅたやねっ…ちょまて…むりっちゅーねん!
あんた重すぎて支えられへんわーーーーーーー!」
前2人と同じ丸形体型の勇者たちは、支えている側が力尽きると同時に
2人とも後ろに向かって倒れ、回転した
「あ…」
「やばいっ」
「ぶつかるっ?」
周囲に緊張が走る
だが、すでに倒れていた2人の巨漢勇者に彼らがぶつかると思われた次の瞬間、
召喚された勇者は4人とも突然、周囲の人々の目の前から姿を消した。
「…」
「…」
「…」
「…なんだ?」
「…何が起こったのだ?」
突然のことに静まりかえる周囲と
勇者に命令するために先日から徹夜で考えていた「決めポーズ」を取ったまま
動くことも出来ずに固まり続けるターナカ王
そんな突然訪れた静寂を打ち破るかのように
ササーキが口を開く
「そうか。全員が同じ「肌色」だったから消えたんだな」
「…」
「…」
「…」
全員がササーキに向かって視線を向ける
「4人集まっただけで消える勇者などいるかっ!!!
このハゲを打ち首にしろーーーーーー!!!」
再起動したターナカ王が怒りの号令を発する頃、
ハゲ呼ばわりされたササーキはすでに大広間の外に向かって脱兎の如く逃げ出していた。
それを追って走りだす武官と魔道神官たち
「待ちやがれこの野郎ぉぉっ!」
「緊張感ですり減った俺の神経を返せ!」
「全員で貫徹ケツバットの刑にしてやる!!!」
普段は対立していた武官と魔道神官のグループはいま
共通の目的に向かって手を取り合うことで、お互いの力を何倍にも高めていた。
彼らの「強くあきらめない心(目的不問)」がある限り
いつかきっと、人類を魔王の手から解放する日が来ることだろう
人類の戦いはまだ、始まったばかりなのだ!
ちなみに4人の勇者は無事、
メイド喫茶と相撲部屋とお笑い講演会場に戻されましたとさ…
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ササーキ魔法使い先生の物語が読めるのは小説になろうダケ
今日もニョキニョキです
つづかない
魔王「…で?…俺の出番なし?」
作者「そう」
魔王「設定も?」
作者「考えてない」
魔王「…」
作者「そう落ち込むなよ。金沢カレーでも食いに行こうぜ?」
魔王「味噌カツじゃないのかよ?ニャゴヤ星人くせに」
作者「味噌カレーで行こう」
魔王「あるのかよ!?」
ナレーション「あります」
魔王「だから何だ?…喰うけど…」
作者「喰うんかい…」