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短編集

異世界にいた魔導士の話

作者: あみにあ

異世界へきた彼女の話にでてくる魔導師視点のお話です。

ある異世界にて一人の少年がいた。



俺は昔から女は嫌いだった。けばけばしい化粧をし、臭い香水を身につけ俺にすり寄っていくる。甲高い声で自分勝手な話をし、こちらの態度が悪いとすぐに泣く。煩わしいことこの上ない。


12歳で社交界にでてからは、女をみると嫌悪感を抱くようになった。

冷たい態度をとり、辛辣な言葉を投げつける。

そんな俺は冷徹の魔導士と呼ばれるようになっていった。


俺は14歳となり父上と母上は婚約者をみつけろと煩くなってきた。

12歳で婚約者がいなければおかしいのだと父、母は言う。

俺はそんな言葉をすべて無視し、そんな物に時間をさく暇があるのなら魔術の研究にいそしんでいた。


カリカリ


今日も煩わしい事を忘れる為、俺はひたすら紙に新しい魔術を書いていく。

もう何日部屋からでていないだろうか、そろそろ父上、母上が煩くなって来る頃だ。


チカッ


そんな時ふとペンを止め、大きな窓のほうへ目を向け、庭にある小さな池を見た。


なんだ、何か池がひかったような。


気のせいかと思い書類に目を戻そうとしたその時、突然池の水が爆発したような水しぶきをあげ、辺りを濡らした。


ヴァサッ

「はぁ。。はぁ。。はぁ。。」


人がいる。

俺はすぐに剣を取った。そして慎重に

気配を殺しながらゆっくりとその現れた存在に近づいていった。


「お前は何者だ」


女の細く白い首に剣先を向ける。


「・・・」


何も答えずその女はゆっくりと首を上げた。

美しい漆黒の髪をひとつに束ね、吸い込まれそうな闇の瞳に目が離せなくなった。

どれぐらいそうしていただろ、

まるで時間が止まったような感覚が自分襲った。

ふと我にかえって女の姿を確認した。

胸と下半身の一部以外、白い滑らかな肌がむき出しになっているではないか、なんて格好をしているのだ。


「お前のそのかっこうなんだ。娼婦でも今時こんなかっこうはしない」


俺は強い口調で言った。


黒い髪の美しい女は唖然とした顔をしてゆっくり自分の体を確認するように首を下した。

そして確認が終わったのだろうか。

顔を上げ俺を不思議そうにその澄んだ目で私を射ぬいてくる。

俺はとっさに自分の羽織っていたローブを掴み女に投げつけた。


「見れたものじゃない今すぐこれを羽織れ」


バサッ


女は静かにローブを羽織った。これでまともに会話ができると思ったが女は黙ったままゆっく深い呼吸を繰り返していた。


「・・・」


「おい!何も言わないのか。」


とっさに剣先を彼女に近づけてしまった。

水が乾ききっていない白い彼女の首に赤い血が流れた。


やってしまった、泣くか・・

泣けばうるさくなるな・・煩わしい・・・

これだから女は嫌いだ、俺は嫌悪の表情を浮かべ視線を逸らした。


「ローブありがとうございます。」


美しい透き通るような声が聞こえた。


俺は驚いて彼女を見た。

俺はこの状況でお礼言った女に驚き、

しかしよく考えてみるとこの女危機感がなさすぎではないかと呆れ、俺は深いため息をついた。


この女はバカなのだろうか、真剣にこちらが対応していては疲れるだけだと判断し、俺は剣を納め何も言わずに強引に手首をひっぱり持ち上げた。


立たせた彼女は俺と同じ身長だった。

目の前に澄んだ黒い瞳と目が合い言葉を失ってしまう。

吸い込まれそうなその漆黒の瞳はこの世界ではみたことがない色だったから。

俺が彼女を見つめていると彼女の声が聞こえた。


「ここはどこでしょうか。海を泳いでいたらおぼれてしまったようで。。。気がつくとここにたどり着いていたのです。」


その言葉を聞いて思い出した。昔父上が代々王族のみに伝わる伝承を話してくれたことがあった。

「あの王宮の池からこの世のものとは思えない美しい女性が異なる世界からやってくるんだそうだ。そして王族はその異国の女性を歓迎しなければならない。まぁ俺も観たことはないがなー ガハハ、まぁ伝承なんてもんは眉唾物だ。きにすることはない」


あぁ彼女は異界の女なのか、すぐに父上に連絡せねば、

ワレにかえると彼女は今きた池をじっと見つめていた。

その表情は今にも池へ戻ってしまうんじゃないかと思い

おれは慌てて彼女の手をつかみこちらに引き寄せた。


「王宮へ向かうすぐに支度をせよ」


メイド達を呼びつけ至急王宮に行ってもおかしくないかっこうに着替えさせろと命じた。メイドはそんな私の様子にビックリしたのか、慌てた様子で彼女を着替えさせる為に彼女を連れていった。


王宮へ謁見の申し込みをするため俺はペンをとり書状をしたため、魔術を施し、父のもとへ飛ばした。

その間にドレスアップが終わった彼女は、黒い髪と瞳に合わせた深いブルーのドレスを身につけ現れた。

初めて女性に魅入った瞬間だった。


今まで女性の服などをほめたことがない俺は彼女の姿にどう言葉をつなげばいのか分からなかった。

はっと意識を回復させ、俺は慌てたように彼女について来ることを命じた。

後ろからメイドと彼女何か話しているようだが、俺は気にせず足を進めた。


謁見の間へとたどり着くと彼女はドアを物珍しく見ていた。


異国の者の常識がわかなかったので、王との謁見の仕方を簡単に説明した。


「入ったら頭を下げ礼をしろ、顔は下げたままだ。」


念には念をと重要なことをもう一度言った。


謁見の間に入るとそこには父上と母上が座っていた。

そして俺に目線を合わせニヤリと笑った。

なんかむかつく。。。


「ようこそ異世界の乙女よ」


突然の父の挨拶に唖然としながら、俺は黙って聞いていた。


「代々王族に伝わる伝承にてあの池から異世界人がきた場合丁寧にもてさせとされている、そして異世界人にはもう元の世界に戻れない」


俺は彼女に目を向けた。

彼女は呆然とその言葉を聞き、慌てたように王に質問をした。


「恐れながら、私以外の異世界人があの池からきておりませんか。プラチナの髪をもつ瞳が赤い男性がきませんでしたか。」


やけに具体的な内容に不快感を感じだ。なぜだろう。


「あの池からきた異世界人はそなたが初めてだ。他はおらぬ」


その後軽い自己紹介を行い俺たちは謁見を終わらせた。


父上と母上は終始俺の顔を見て嬉しそうにほほ笑み、やっと婚約相手が見つかったわねとコソコソ話していたが無視だ。


自己紹介でわかったことだが、彼女はマリエというらしい、年は俺よりも6歳上には衝撃を受けた。

どうみても俺と同じ年かもしくは下だと思っていたからだ。

彼女の世界の住人はみな年齢より幼く見える容貌だそうだ。世界はいろいろあるのだな。


この国では相手の許可がないと名前呼んではいけないこととなっている。

名前は特別なものだからだ。

だから私の場合皆魔導師は魔導師殿と呼ばれている。

そして彼女は異界の女と呼ばれることとなった。


謁見が住み彼女は王宮で生活することとなった。

なれないことも多いようだが彼女は前向きにここの生活に慣れるように努力していた。俺はそんな彼女に色々教えていった。

一緒にいてわかったことだが、彼女は俺の知っている女とは違い、化粧もあまりせず、香水もつけない。豪華な物にも興味がなく、質素な生活を好んだ。


ある時彼女が突然魔法勉強したい言い出した。

俺自身魔法研究が趣味だったので快く引き受けた。

彼女は魔術の吸収力、理解力が早く今までに見たことがない魔術を開発していった。


魔術ついてこんなに会話ができる人が今までいただろうか。

俺は毎日彼女過ごすようになっていった。

彼女の魔法の研究独特だった。

紙には書かず、まずは魔法の反応見ていくその新しい研究法に驚きだった。

俺はそんな彼女過ごす日々が楽しくて、心地よくて、毎日寝る間も惜しみ魔術を教えていった。


彼女と魔術の研究していた時、彼女は新しい研究を思いついた。

俺の魔術を彼女の魔術に融合させるというものだった。

面白そうだったので俺の魔術を流してみる・・・・


ドッカーン


研究室で大爆発がおきた。とっさに俺は彼女と自分に防御魔術展開無事だったが、研究室に大きな穴をあけてしまった。その光景二人で眺め、呆然とし、そして大笑いをした。

こんな笑ったのはいつぶりだろうか。

彼女いると俺の生活は鮮やか世界へと変化していった。

まぁその後父上が煩くなってきたが駆けつけ怒鳴られてしまったのはお約束だな。


ある日彼女突然町に出たいと言い出した。

スランプ気味だった彼女は新しい物に目を向け新たな魔術を開発したいと。

二人で外出用の服に着替町へと出掛けていった。

彼女は落ちついた青いワンピースを身につけ髪をおろし、どこかのご令嬢のような雰囲気になった。

そんな彼女服に合わせ、俺も紺いろのブレザーを身につけた。

一緒に歩くとまるで恋人同士のようだった。

彼女は市場へ着くと目を輝かせ、屋台へ向かい亭主と話をしていた。俺はあまり人と話するのは苦手だ。彼女の後ろにたち、まわりを見渡した。

配達だろうか荷物を下げて走っていた男性や、恋人と一緒に来た男性、小さい子供が立ち止まりこちらを見ていた。

視線の先には彼女がいた。艶やかな仕草に、天真爛漫に笑う彼女の表情に、周りに男たちはみな彼女釘付けだった。

異国だとわかる黒い髪が物珍しいのもあるが、彼女の容姿は人を引き付ける。

そのようすに俺はなぜかわからないがだんだんイライラし、彼女手を引きよせ男の目から彼女を隠した。

彼女は驚いた顔をして、俺にいたずらっこのような微笑みをくれた。


そうしてゆっくりと色鮮やかな時はすぎ、気が付けば2年の月日が流れていた。

俺は成長し彼女と同じぐらいの身長だったのが今では見下ろすまでに成長していた。

彼女が俺と話すために顔を上に向ける姿が愛らしくずっと見ていたいと思うようになった。

昔の俺は冷徹の魔導士と呼ばれていたが、今ではその呼び名も聞かなくなった。

表情が豊かになったらしい。自分ではわからないのだが。

きっと彼女と過ごす日々が俺を変えているのだろ。


ある日彼女がいない研究所で、彼女の研究書類が目に入った。

今までの研究は彼女からの報告により話を聞いていたが、今は何を研究しているのだろうか。

俺は気になり、書類に目を通した。

そこには【移転魔術】と記載されていた。

俺が教えた魔術や今まで二人で考えた魔術、彼女の創作の魔術などが応用されてた。

彼女は自分の国に帰るために、今まで必死に魔術を身に着けていた事実を俺は初めて知った。


ある満月の夜、研究所に私と彼女と二人になった。


あの書類を見てしまってから、俺は胸の中が黒い感情で渦巻いていた。

彼女と一緒にいても今までのように満たされる気持ちにはならなくなっていった。

彼女を見ていると、今では胸の中でなんとも言えない感情が込み上げてくる。

俺は彼女に声をかけた。


「この魔術が完成すればお前はすぐに帰るのか?」


彼女は驚いた顔をした後、作業に戻りゆっくりとうなずいた。


「うん。私は大事な人をおいてきてしまったから早く帰らないと、彼が待っているから」


作業に没頭する彼女の存在を確認しながら、俺は今聞いた言葉を頭の中で反芻していた。

【彼が待っているから】

あぁ彼女は今までこのために研究していたのか。

彼女がかえってしまう。

かえってほしくない。

ずっとそばにいてほしい。

その時俺はようやくこの胸の内にあった思いに気が付いた。


俺は彼女を愛しているのだと。


この思いに気が付いた俺はゆっくりと、作業をしている彼女へ無意識に近づいていた。


彼女のなめらかな頬が月明かりに照らされて美しく輝いていた。


帰れらないで。

ずっとそばにいてくれ。


といえば彼女は帰るのをやめてくれないだろうか。

こっちを向いて、俺のそばにいて、離れないでくれ。


しかし俺は口にすることができない。

なぜなら彼女が異国の思い人を愛おしそうに考える表情をしていたから。


俺はそっと彼女の頬に触れようとしていた手をおろし、何も言わず研究所を後にした。


俺が彼女の恋情に気が付いてから1年の月日がたった。

彼女への思いは募っていく一方だが彼女は帰るための研究に力を注いでいた。

そんな彼女の姿を見ているのが苦しくて、俺は研究所へ行くことを減らしていった。

時々研究所で会う彼女の姿は愛らしく、俺は彼女の研究が完成しないことを祈り月日が過ぎていった。。


しかし思いとは裏腹に研究は順調に進み、とうとう完成目前までせまってきた。

彼女の表情が明るくなり、柔らかな表情をするようになっていった。


そんな彼女の様子に気が付きメイドは言った。


「最近毎日幸せそうにしておりますね。魔導士殿と何か進展がありましたか?」


なんてことを聞くんだ、

彼女は俺の気持ちに気が付いていないのに、

俺はメイドを強く睨みつけ、それに気がついたメイドは急ぎ足で研究所を出て行った。

彼女は何かを考えるようにメイドを見送っていた。


ある日自室で魔術の資料を作成していた時のことだ、


コンコンコン


勢いよくドアが開いた。

彼女は扉の前で美しい笑顔で


「完成したんだ」


と嬉しそうにほほ笑んだ。


あぁ、ついにこの日がきてしまったか。

彼女は嬉しそうに急ぎ足で俺のところへかけてきた。


「帰るのか」


彼女は頷き


「彼が待っているからね」


と最高の笑顔で答える。


そんな表情が愛しくて、触れたくて、引き留めたくて、俺のために笑ってほしいと思ってしまう。

俺はそっと彼女に手を伸ばし、彼女の頬に触れた。


彼女の驚いたような困ったような顔をみて、俺は彼女の頬をつねってやった。


あぁ魔術完成がこんなにうれしくないことは初めてだ。

完成なんてしなければよかったのに、

俺のそばにずっといればよかったのに、


それでも幸せそうな彼女の顔をみて俺は褒めてやることしかできなかった。


「おめでとう。」


「えへへ、今までお世話になりました。ありがとうございました。私は明日の夜帰ります。」


彼女の言葉に衝撃を受け、自分の理性を抑えられなくなった。

このままは彼女を抱きしめて、彼女のその赤い唇に口づけをし、

逃がさないように無茶苦茶にしていまいたい。


黙ったままの俺に彼女は困ったような表情を浮かべているのに気が付き、俺は冷静さを取り戻した。


だめだ。

彼女を困らせたくはない。

彼女の幸せな笑顔を壊したくないんだ。

そう自分に言い聞かせて、俺は黙って研究所のドアを開けた。


次の日の夜、


満月の光があたりを照らす明るい夜に


俺は彼女と二人で、庭にある池の前にきた。


彼女はゆっくり王宮の池に足を滑らせる。

服はこちらに来たときに着ていた破廉恥な服を着用し、

水位が腰の位置までゆっくり歩いた。


行かないで、行かないで、行かないで・・・


彼女が魔術を唱えようとしたとき、俺はいてもたってもいられなくなった。

俺は女の扱いは下手でこんなとき何をいっていいかわからない自分が悔しくて。

どうすればいいのかわからない。


「お前は私と居て楽しかったか」


こんなことを言いたいんじゃない。


行かないで・・・俺のそばにいて・・・


俺は君を愛しているんだ。


「はい、魔導士様と出会えたことは私の人生でかけがえのないもです。」


月明かり照らされた彼女は池の水が反射し、幻想的なものとなっていた。


彼女が妖艶な笑みでにっこり微笑み、懐かしむように私に視線を向けた。


俺は足元に目を移し、彼女の存在が俺にとって手の届かない存在になった気がした。


月が雲に隠れ、暗闇が訪れた。

もう彼女の表情を見ることができなくなった。


「そろそろ行くね」


待て、行くな、待ってくれ、


俺はとっさに彼女のほうへと一歩踏み出した。


「おいっ」


愛している。そういえば彼女はどうするのだろう。


行くのをやめてくれるだろうか。


ずっとそばにいてほしいと言えば彼女はどんな表情を見せてくれるのだろう。


ふっと彼女の魔術が完成したときの表情が脳裏によみがえった。


ダメだ、こんなことを言ってもきっと彼女は戻ってしまうのだろう。


あぁ俺を置いていってしまうのだ。


最後に、彼女の口から特別な言葉がほしい。


「・・・・最後に私の名前を呼んでくれないか。」


少し驚いた顔をした後、彼女は微笑みを浮かべ


「ありがとうございました。魔導士 エルヴィン様」


その透き通るような声で自分の名前を呼ばれ、俺の心は満たされていった。


バッサーン

大きな音がした。


彼女はこの世界から消えてしまった。


最後に恋人のように名前で呼びあうことを許してほしい。


「私の愛しのマリエ、さようなら」


俺は目を伏せ来た道をかえっていった。


****************************


彼女がないない世界は色がなくなった。


毎日彼女を思い出す、一緒に行った研究や、彼女と生活したこの3年を・・・


俺は笑うことも泣くことも怒ることもできなかった。


俺はまた冷徹の魔術師と呼ばれるようになった。


彼女のいない世界は時間が止まってしまったようだった。


何度後悔をしただろう、思いを伝えられなかった愚かな俺を


あの時、いかないでくれ


愛しているんだ


ずっとそばにいてくれ


と言っていれば変わっていたのだろうか。


そんなことを毎日のように考える。


父や母は魔導士が帰ったことを知り、俺に婚約者を探せとせっつくようになった。


俺は彼女以外話すことも、そばにいることも想像できなかった。


臭いにおいを身に着け顔の原型がわからないような女が、

優越感浸るために金や地位を身に付けたがる女が、


彼女の代わりなんてなるわけないのだから。


3年前のように俺は机にかじりつき、つらい胸の内を忘れるため、

日夜魔術の研究にいそしんだ。

池は今日も変わらず、魚がおよいでいる。

俺は彼女が帰ってから毎夜に池に行くようになった。


わかっている・・・

彼女が戻ってくるなんてありえないのに。


月日がたち彼女がいない世界で6年がたった。


俺は23歳になった、彼女が帰ったときと同じ年齢だ。


俺は未だに婚約者も作らず、結婚もせず魔術を研究し続けていた。


研究は功績をあげ、俺は国一の魔術師となっていた。


「今日は満月か」


俺はゆっくり池のほうへ歩みを進めた。


「彼女は元気だろうか、知ってるなら教えてくれないか」


と魚に語りかけてみたが返事はない。当たり前だ。

馬鹿な事をしたと部屋に戻ろうと池に背をむけたとき


大きな爆発音が響いた。

俺はとっさに剣をとり、あたりを注意深く見渡した。

黒い人影が見えた。俺は気配を殺してゆっくりと近づいていく。


そこには6年前と変わらない彼女姿を見つけた。


あぁまた会えるなんて


彼女が帰ってきてくれた


今度こそ彼女に伝えよう


あぁ愛しいマリエ・・・


すぐに彼女へ駆け寄り彼女を優しく抱きしめた。


彼女に反応はない。俺は焦って彼女の呼吸を確認すると、胸をゆっくり上下にゆらしていた。

俺はほっとし、すぐに自分のローブをはずし、彼女に優しく巻き付けた。


急いでメイドを呼び彼女を着替えさせ、俺のベットへと運んだ。


起きたらすぐに伝えよう。


俺のこの気持ちを。


愛しい彼女を目の前に俺は心が満たされていくのを感じた。


しかし神とは残酷だった、彼女はなかなか目を覚まさない。


医者にも見せたが、どこにも異常はないという。


何か魔術がかかっているのかと調べてみたがそれもなかった。


彼女は目を覚まさない、やっと会えたのに・・・


どうして、どうして、どうして


いつものように笑ってくれ、次は俺のために笑ってくれ。


君が側にいてくれるなら何だってする、だから目をあけて。


神よ・・・彼女を助けてくれ・・・・・


彼女が戻って一か月がたった。


彼女はまだ目を覚まさない。


俺は彼女の手を握りしめて、今日も居るはずもない神に祈っていた。


そのとき突然声が聞こえた。


「おはよう」


俺は彼女に視線を向けた。

あぁ彼女の声が、

やっと彼女は戻ってきてくれた。

言いたいこと、伝えたいことがいっぱいあるんだ。


彼女は泣いていた、その泣き顔も愛おしくて・・・

俺はその思いをすべて伝えるように彼女を強く出し決めた。


泣かないで、俺なら絶対泣かせないから


もうどこにもいかないでくれ、俺が幸せにするから


どうかこの胸の中に今だけは俺のものでいてくれ


俺の愛しのマリエ


彼女と彼のお話はまた別の話




次は異世界(日本)に渡った彼の話を書こうと思います。

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