ファンタジーに火をつけて
一体何でこんな駄文書こうと思ったんでしょうかね~。不思議ですね~。多分Sウィルスに感染したのだと思います。もしくは感染していないか。どっちかですね。
※この作品はフィクションです。実在の人物・企業には一切関係がありません。
第零章 プロローグ
いったい何がいけなかったのか、今の自分にはわからない。
精一杯、視聴者さんの笑顔のために、何より自分の笑顔のために頑張ってきたつもりだったのに……。
なぜ?どうして?なんで?こうした疑問が頭の中をぐるぐるしている。
俺はぼやけた意識のままで、これまでの、自分の幻想を振り返っていた……。
第一章 無断転載
8月某日、人生の絶頂期が期待されたオフ会開催日から2週間が立とうとしていた。
失意のうちにうぴーしたオフ会動画は自分が思いもしない形で盛り上がった。盛り上がった、といってもファンの人が、ではない。アンチどもだ。
オフ会0人という結果が相当に面白かったのだろう。YouTubeのコメント欄も心なしかいつもより荒れているように思えた。
あまりに腹に据えかねたので、コメントを全部ブロックしてやろうとアンチコメを片っ端から消していたところ、ふと気になるコメントを見つけた。
「こいつの動画ニコ動でも炎上してるwwwwwwwwww」
は?ニコニコになんて俺はうぴーしてねーぞ?いったいどういうことだ?
疑問ばかりが先行したが、考えるうちに嫌な予感がした。
かつてまだ俺が月神という名前で活動していた時のことだ。
ゲーム実況はニコニコ動画のほうが盛り上がると考えた俺は湾岸ミッドナイト実況や雛見沢症候群のようなフリーゲーム実況をニコニコにうぴーしていた。
しかし、ニコニコにおける新人実況者の宿命なのか、執拗なアンチが湧いて動画をやたら批判しまくってきた。あまりにもしつこかったために活動拠点をYouTubeに変える遠因になったのだが、今思い出してもひどいものだった。
嫌な予感がしたのは、あまり思い出したくない記憶が脳裏に浮かび上がった故だろうか?あまり乗り気ではなかったが、事実を確かめるために即席でニコニコのアカウントを登録し、「Syamu_Game」と検索した。
すると、検索結果31件の通知の下に俺がうぴーしたと思われる動画のサムネがずらっと並んでいるではないか!
いつからうぴーされてたのか気になったので、投稿が古い動画順で並べなおしたところ、一番上の動画のタイトルには「ホモと学ぶ大物YouTuber」と書かれていた。
率直な感想を述べるなら意味が分からないと言わざるを得ない。まず俺はホモじゃない。動画の中でそんな発言をした覚えもなければ、ホモと疑われるような行動をとった覚えもない。
それに“大物YouTuber”という表現だ。確かに俺のチャンネルは登録者3000人を突破し、動画の総再生回数も500万を超えている。
しかし国内トップレベルのYouTuber(例えばヒカキン氏)ほどの大御所ではない。なぜここで大物と呼ばれるのかが理解できなかった。
とはいえわざわざ“大物YouTuber”と書いているぐらいだから俺のファンかもしれない。
以前人の動画の再生リストを勝手に作った心もとない人物もいたが、ネットのモラルが低下しているのは今に始まったことではない。
俺のファンであってもマナーが悪い人がいるというのはあり得ないことではない。無断転載も許されることではないが、ファンの人が俺の存在を広めようとやったことなのかもしれない。
なんにせよ中身を確かめないことには始まらないだろうと、俺は動画を再生した。
しかし動画を再生してすぐに俺の甘い期待は裏切られる結果となった。
早いペースで流れていくコメントのほとんどは俺に対する罵倒に他ならなかったからだ。
見るに堪えなかった俺は再生時間の中ほどであっさりとブラウザーバックした。
この動画だけ特別酷いのかと思って他の動画も確認したが、どの動画においても俺を否定するコメントばかりだった。怒り心頭でPCの電源ごと画面を消してやろうかとまで思った矢先、動画の再生回数が目に入った。
そこには転載元である自分の投稿動画の再生回数の2倍を優に超えるであろう数字が見て取れた。
気になって他の動画も見たが軒並み500再生を超えており、一番再生回数が多い「ホモと学ぶ大物YouTuber オフ会誰も来ずへこむ 1/2」においては2000回を超えていた。
アンチが増えていることは薄々感づいていたがまさかここまでとは……。
あまりのショックに頭を冷やすのにそれなりの時間を要した。
なんとか落ち着いた俺は無断転載動画をもう少し詳しく調べることにした。調べるといくつかのことが分かった。
1、無断転載は同一のうぴー主、月影という人物によってなされていること。
2、オフ会の動画にあったコメントはアンチによって寄せられた嘘のコメントであったこと。
3、ここ最近のSkypeやグーグル+へのアプローチは、動画内に俺のアドレス等が晒されていたためであったこと。
無断転載動画を経て、俺のことを知った人がアンチになったと考えれば、YouTubeへのアンチコメやSkypeの謎の着信履歴も納得できる。
冷静に無断転載動画について考えていたつもりだったが、考えれば考えるほど月影という人物への怒りが収まらなくなってきた。これ以上の被害を防ぐためにも、視聴者さん達にはこのことを知らせなければ……。そう考えた俺は動画の収録準備を始めたのだった。
無断転載のうぴー主を晒しながら動画を撮っているのだが、どうにも気分が悪い。
視聴者さんのためにとりわけ酷いコメントへの非難を詳細に行っては見たものの読み上げるたびに腹が立ってくる。
ヒカキンチルドレンなどというガキの蔑称をつけられるのは甚だ不本意だし、アトピーという天性の問題まで侮辱するのは、同じくアトピーで苦しんでいる他の患者さんに失礼ではないのか?
ましてや知的障碍者などという言葉は口にすることすら憚られたが、怒りのあまり読み上げてしまった。
いったいどういう風に育ったらこのような言葉を軽々しく言えるのだろうか?怒りを通り越して呆れてしまう。
100歩譲って俺に対する罵詈雑権はスルー出来るかもしれないが、こんな汚い言葉が他の視聴者さんの目に入ってしまったら気分を悪くするということが分からないのだろうか?
アンチたちの自分勝手な言いぐさに対して、怒りからくる様々な疑問が後を絶なかったが、あまり長く話してもしょうがない。
自分のファンであれば自分がいかに傷ついたか分かってくれるだろうと思い、収録を終えた。
ただ「こいつはいつになったら気づくんでしょうかね?」というコメントだけが妙に頭の隅に残って離れなかった。
無断転載ならとっくに気づいていると動画内では言ってみたものの、まるでどこかから監視されているかのような薄気味悪さがどうしても拭い切れなかったのだ……。
第二章 ネットの闇
無断転載を晒しても俺への誹謗中傷は収まらなかった。
過去にうぴーした自宅紹介動画から住所が割り出され掲示板に書き込まれた。
普通であればそれだけでも異常なはずなのに、ネットにはまるで俺が悪いと言わんばかりのコメントで溢れていた。
個人情報を晒すのは立派な犯罪だろう?なぜ犯人が擁護され、俺が非難されるのか?
改めてネットの怖さを痛感した。
またネカマにも騙された。
言葉巧みに俺を騙し、そのやり取りを晒すことで俺を罵倒して楽しんでいたのだ。
今年で30歳になる俺は結婚願望が前より強くなっていた。
かといってリアルでの助詞との出会いには期待できなかった。
街コンというのが流行っているとは聞いているが、お金もかかるし、自分を気遣ってくれるかはわからない。
やはり俺に残された道はネット恋愛しかない!とネット上での恋愛活動に力を入れていた。
そんな矢先、助詞のふりでも気のあるようなコメントをされたら騙されるのも仕方ないのではないか?
それを馬鹿にされるのはやはり俺の恋愛自体を馬鹿にされているようで我慢できなかった。
もちろん俺はなるべく相手のことを疑ってかかった。
ただ、もし本当に俺のことが好きな助詞だったら?そんな人を疑ってばかりでは失礼ではないのか?
そう思うと疑ってかかれなくなるのは他の人も同じだと思う。
人の善意に付け込んで俺を笑いものにしたネカマもまた、ネットの闇であるように思った。
第三章 束の間の幸せ
日増しに増えるアンチコメと戦いながらも俺はYouTubeをやめる気にはならなかった。
俺のことを応援してくれるファンだってたくさんいるし、何よりも自分がやりたくてやっていることだ。
このまま馬鹿にされたままで引退するのは逃げるみたいで嫌だった。
収入を増やして、彼女を作ってアンチを見返すまではYouTuberを続けてやると自分の中で誓ったのだ。
策だってある。自分が話題になっていることを知ったYouTuberのシバタ―さんがコラボを申し出てくれたのだ。
シバタ―さんといえば炎上商法で稼いでいる正真正銘の大物YouTuberだ。
俺としては少し怖い印象を受けるが、こうして俺とコラボしたいと言ってくれてるわけだし、いい人に違いない。
奇しくも自分はネットで炎上している。シバターさんに聞けば、この状況を収入に変える策を教えてくれるだろう。そうすればアンチどもを見返せる。
それだけではない。今度こそ本物の助詞と出会えた。
えーと、そう。三香ちゃんだ。これまで数多のネカマが俺を騙してきた。
疑心暗鬼の俺を慰めるように優しく接してくれた助詞こそ三香ちゃんだったのだ。
すでにデートの約束まで取り付けた。これまで俺を騙してきたネカマたちが知ればさぞ悔しがることだろう。
力強い協力者のシバターさんと愛しの彼女である三香ちゃんがいる今の俺は何をしても失敗するようには思えなかった。あぁ、十三ニチィ!が楽しみである。
第四章 ファンタジーに火をつけて
「順平、目ぇ醒ませ」
────母親に呼ばれる声で我に返った。
ボーとしているうちに少し眠ってしまっていたらしい。
これで終わりなんだろうか……。
俺は、YouTubeの自分のチャンネルが映し出された画面を見つめた。
削除アイコンの周りをカーソルで円を描くように囲っている。
つい先日までのバラ色の希望が今では嘘のようにしぼんでしまった今の自分にYouTuberを続ける心の余裕はなかった。
シバターや三香に騙されていたと知っただけならまだ我慢が出来たのかもしれない。
しかしこれまで親友だと信じていたエイミンからの裏切りは決定打となった。
もはやネットのなにもかもが信じられなくなった。人を信じるということが出来なくなってしまった。
でも……。
それでもここでYouTubeをやめてもいいのか?
ここでやめて公開しないのか?
あと一歩踏ん切りがつかない俺だったが、後ろに振り向けば、心配そうな家族が俺の決断を見守っている。
自分がこれまでやってきたおふざけがここまで家族に心配をかける結果になるとは思ってもみなかった。
最初は仕事に口出しをしてくる母や妹を迷惑にしか思わなかったが、今思えば俺が傷つくのをわかって警告してくれていたのかもしれない。
もっと早く気付けていればと公開してみれど、すでに起こった結果は変わってはくれなかった。
これ以上家族に迷惑をかけられない……。
俺はPC画面に向き合い、削除アイコンにマウスカーソルを合わせ、意を決した。
俺の決断を試すように、確認画面が出てくる。
「ここで終わっていいのか?」
PCが俺に挑戦的な質問を投げかけてきたようにも感じた。
しばし手が止まったが、何事もなかったように俺は再び削除の意思を表明して見せた。
まるで死の瞬間のように、これまでのYouTuber活動が走馬灯のように駆け巡るかと思ったが、意外にもあっさりと動画の削除が終わってしまい、感慨にふける暇も与えられなかった。
4年続けたにしてはあまりにもあっさりとしたネット活動の最期だった。
「これでよかったけん」という妹の口調からは、ホッとしたと言わんばかりの安堵を感じられた。
「これで、よかったんかなぁ……」
自分がやりたいことで誰かが笑顔になってくれるなんて素敵なことだと思って続けてきた活動が結局自分の首を絞めているだけだったのだろうか?
自分が思っていたファンや視聴者の笑顔なんて結局は自分の幻想にすぎなかったのだろうか?
無断転載動画の「こいつはいつになったら気づくんでしょうかね?」というコメントが不意に思い出された。
「俺は気づけてなかったんかなぁ……。俺の活動は、自分の幻想に火をつけただけだったんかなぁ……。」
画面には
削除が完了しました。
という無機質なコメントが残されているだけだった。
第?章 エピローグ
その夜順平は夢を見た。
夢の中では見覚えのある男が叫んでいて、まるで吠える猿のようだった。
「おい!なんでYO!ここで終わりなんだよコンチクショォォオオオオオオオオオオオオオオ!
見てろよ~!必ず見返してやるからな!こんなところじゃ終わられねぇ!
ンマァ~でも改めて考えるとすごいな~と思うな俺はやっぱ。
動画がダメでも執筆活動すればいいって話でしょ。私はそう言いたい。
それでは次の機会にお会いしましょう、またの~っ!!」
その夢が現実に出てくるのはまた別のお話。
ここまでご覧いただき、ありがとうございま~す。
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それじゃあ、またのー!