private letter
煌々と明るいディスプレイ
電子の海の彼方にいる
親愛なるひとよ
鉄塔の見える
狭いベランダから
飛び立ち
私は
海の見える坂道のそばにいます
止められない紫煙は
今も緩やかに
闇に立ち上り
缶の冷えた発泡酒は
夜を
速やかに潤す
まるで変わりがないように見えて
刻々と変わる心情に
当たり前のように振り回され
今も
仰ぐ空の先
ひたすらに打つ文字の向こう側
まだ見ぬあなたを想う
hello
hello
誰ともつかぬ私から
軽やかに
呼びかけるよ
眼差しは夜の彼方へ
風は擦り切れながらも
続いていく
か細い線を辿り
泣き出しそうな縁をなぞり
交わした言葉の数だけ
重ねた想いの数だけ
確信よりも頼りのない
大丈夫を捧げるから
今は
笑いかけるよりも
そっと掠めるような
hello
hello
今じゃないいつかに
また笑えればいい
荒波も
さざ波も
凪いだ日も
すべて君の美しい海
だから送り続ける
hello
hello
返事なんていらないから
さりげない日々が
また君に
訪れるよう
うたうように送るよ
切っ先の橙は
希望とは程遠いけれど
喜びも
怒りも
悲しみも
すべて君の美しい海
ひたすらに打つ文字の向こう側
先に行く
hello
hello
すべては君の美しい海
いつか辿り着くように