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家出少女と食欲の秋

20話目です!

 朝晩が寒くなってきた今日この頃、体重計に乗り私は硬直していた。明らかにいつもより針が指している数字が大きかった。


 「嘘でしょ・・・」


 間違いなかった。何度測っても数字が減ることはなかった。


 「太っちゃった・・・」


 

 「どうしたの、食べないのかい?」

 「はい、ちょっとお腹が減ってなくて」

 「そう」


 嘘だった、本当はおなかが今にもなりだしそうなほどお腹が空いていた。しかし、私は耐えた、よくに打ち勝つのだ。ただ黙って黙々とご飯を食べている広野さんを見ていた。


 「あのさあ・・・」

 「なんですか」

 「食べづらいんですけど、恨めしそうな目で見られて」

 「うっ・・・すいません」


 私は太ったことを正直に話した、ダイエットを試みていることも、すると広野さんは呆れた様な顔になった。自分がいくら食べても太らない体質だからって・・・。


 「気にすることないでしょ、そんなにわからないって」

 「いいえ、わかります!太りたくないんですよ!」

 「あっそう」


 そういってまたご飯を食べ始めた。


 「食欲の秋を楽しんだ方がいいと思うけどな」

 「・・・そうでしょうか?」

 「うん、それにご飯食べなかったら体に悪いし余計太るかもよ」

 「余計に・・・太る?」


 それは嫌だ、私は白米を茶碗についだ。いつもよりかは若干少なめについだ。少しずつ量を減らしていけばいい。やはりご飯を食べるのは至福の時だ。


 「やっぱりご飯はおいしいですね」

 「うん」


 茶碗はあっという間に空になってしまった。お腹はまだ減っていたが腹八分目が健康にも良いそうなので我慢した。広野さんは二杯目のご飯をつぎに行った。広野さんに罪はないが少し恨めしく思った。

 

 「うわあ、おいしそうですね」


 テレビ画面に有名店のスイーツが映し出された。きれいにデコレーションされているものもあれば、シンプルなものもあった。しかしそのどれもがおいしいであろうことは分かった。


 「食べてみたいですね」


 甘党の広野さんは頷いた。広野さんは食後のデザートに板チョコを食べていた、私は必死に広野さんのチョコレートを見ないように努力した。


 「いる?」

 「遠慮しときます」

 「どうして?チョコレート好きじゃないの?」

 「いや・・・大好きなんですけど・・・」

 「変なの、いるの?いらないの?」


 広野さんの手にある茶色のつやつやとしたチョコレートを見る。食べたら甘くておいしいんだろうな。でも食べたら太ってしまう、その一口が命取りなのだ。

 しかし、私は欲にあっさりと負けてしまった。


 「いります!食べたいです!」

 「どうぞ」


 チョコレートはおいしかったが食べ終わった後に激しい後悔が襲ってきたのだった。


 「食べなきゃよかった・・・」

 「食べたものは仕方がないじゃないか、今更嘆いたって時間が戻せるわけでもましてや体重が減るわけじゃない。それに食べたいものを食べて何で後悔しているんだ?」

 「・・・うるさいです!」


 変な理屈をしゃべっている広野さんの腹を立てつつもどこかで正論だと思っている自分が悔しい。


 「まあまあ、成長ということにしといたら?」

 「体重の成長はいりません・・・・」

 「大変だね、女の人は」

 「そうなんですよね・・・」


 太らない体質になりたいと私は切に願うのだった。

 


 

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