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変人さんとの出会い

 家出をしてきてしまった。行くところなんてどこにもないのに考えなしに家を飛び出してきてしまった。

 あるのは少しのお金が入った財布と学校のかばんと教科書くらい。これじゃ生きていけない。

 雨が降っているのに傘もささずに家を飛び出してきてしまった、今は公園のベンチに雨が降りしきる中ぽつんと一人座っている。当然だが公園には誰もいない。


 「これから、どうしようかな・・・」


 誰に言うでもなくぽつりとつぶやいた。

 頭がぼんやりとする、体が熱い、熱でもあるのだろうか雨をしのげる場所を探すためにベンチから離れる。


 「あっ」


 雨で地面が濡れていて足を取られて転んでしまった。制服に泥がつくのがわかるけれど気にならなかった。


 「もう・・・どうなったっていいや」

 目をつぶってそうつぶやくと足音が聞こえてきたそしてその足音は私の前で止まった。

 何だろう、お巡りさんなのかな、それともたまたま通りかかって私を笑いに来た人なのかな。


 「なんでどうなったっていいって思うんだい?」

 「へっ・・・」


 急に私の頭上から聞こえてきた声は男の人の声だった。


 「今言ったでしょ?自分でさ」


 体を起こすと若い男の人の顔が見えた、茶色い髪の毛の整った顔立ちの人だった。その人はぼんやりとした顔つきで私のほうを見ていた。


 「ねぇ君は今死にたいって思ってるわけ?」

 「えっ」


 なんでこの人は私にこんなことを聞いてくるのだろうか。かなり変わった人だと思ったけど失礼じゃないか初対面なのに。でもその質問の答えは私にもわからなかった。


 「・・・思ってるんでしょうか?」

 「なんで俺に聞くの?自分のことなのにわからないの?」

 「自分のことだからこそわからないことってありますよ」

 「へー勉強になったよ」


 淡々と抑揚のない声でそう言った、顔は相変わらずぼんやりと眠そうだった。


 「それで話変わるんだけどさ君なんでこんなところにいるわけ?雨の日に」

 「・・・・」

 「それは言えないことなの?」

 「そうじゃないけど・・・家出をしてきました」

 「どうして家出したの?」

 「それは言えません」

 「そう、で行くところとかあるわけ?」

 「・・・ないです」


 目の前の男の人は顎に手をあてた後「ふむ」と考えるしぐさをした。


 「もういいですか?ではさようなら」


 もうこの人と話してると面倒くさいと思い勢いよく立ちあがりその場を去ろうとした。しかし私の足は思い通りには動かずその場に倒れこんでしまった。そういえば熱があったんだったなと意識がなくなるまえ思い出した。


 まどろむ意識の中ひんやりと冷たいものが額にかぶさってきた。何なんだろうとぼんやり思った。


 「あっ起きた?」


 目をうっすら開けてみると聞き覚えのある声が聞こえてきた。すぐには思い出せなかった。


 「誰・・・」

 「あれ?わからない?顔見える?」

 「・・・ああ、公園で会った人だ」

 「そうそう」


 そんなやり取りをした後ふと気になって周りを見渡す先ほどまでは公園だったはずが今ではどこかの部屋にいるようだ。


 「ここは、どこですか?」

 「記憶喪失の人みたいなこと言うね、まあ急に別の場所に来てたらそう思うよね」


 一人で自己完結してしまった。私の質問はあっさり無視されてしまった。


 「ここは俺の部屋、熱出してたみたいだから連れてきた」

 「そうだったんですか、迷惑かけてすみません、ありがとうございました」

 「いえいえ、どういたしましてって・・・どこ行くの?」

 「長居するのも悪いんで、お世話になりました」

 「おい、まだ熱下がってないよもう少し寝てたほうがいい」

 「でも・・・」

 「行くとこ無いんだろ」

 「だけど」


 あまり長居するのも迷惑かと思い早々立ち去ろうとしたのだがまだ熱があったらしい私はあっさりと戻された。


 「まあ、これからのことは熱が治ってから考えることにして今日はゆっくり休んだらいいよ」

 「すいません・・・」

 「謝らなくていいよ」

 「じゃあ、ありがとうございます・・・」

 「うん」


 そういうと助けてくれた親切な男の人は私の寝ているすぐ近くにある椅子に座って本を読み始めた。

 不思議な人だなと思った。失礼な人だと思ってたのに助けてくれたりとか、変人だけどいい人らしい。とにかく今日は甘えさせてもらってゆっくり眠らせていただくことにした。


 「これから、どうしようかな・・・」

 眠りに落ちる前ふと不安になってしまい一言つぶやいた。 


 

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