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変人さんの誕生日 1

誕生日篇です!!

 「おーい、新しい小説のアイデアは浮かんだか?」


 大きな声でそう言いながら九森崎さんは広野さんの仕事部屋に入って行った。


 「そんな簡単に浮かんだら俺は苦労していない」

 「そうか、あと何時間くらいで浮かびそうだ?」

 「・・・話聞いてるか?」


 そんな会話を聞きながら昼食を食べていた。今日の昼食は冷凍のうどんを湯がいてうどんスープで作った素うどんだった。すでに広野さんのも作っていたのだがいらないと言われたのでそのまま置いている、面はたぶん伸びに伸びているだろう。

 食べ終わった後二人分のお茶を用意した。仕事部屋に入ろうとすると九森崎山が出てきた。


 「おや、瑠璃ちゃんじゃないか」

 「こんにちは、えっと帰りますか?」

 「ああ、そうだね、お茶ついでくれたのかい?」

 「はい」


 そういうと九森崎さんはお茶を勢いよくのどに流し込んだ。入れたばかりなのに暑くはないのだろうか九森崎さんの喉が心配になった。


 「おっとじゃあ俺はこれで、おっそうだ」


 九森崎さんはかばんから一つの箱を取り出した、白色の箱に赤いリボンが付けられていた。


 「これあいつに渡しておいてくれないか?」

 「はい、わかりました」

 「あいつ明後日誕生日なんだよ」

 「えっ!はじめて知りました・・・」

 「中身は万年筆だ、安物だけどな編集長からのだ」

 「はい、渡しておきます」


 渡すと九森崎さんは颯爽と帰って行った。


 「誕生日、か」


 私も何かできないだろうかと考えた。いつもお世話になっていることだし、どうにか広野さんにばれないように何か準備できないだろうかと考えた。


 「ケーキ作ろうかな?」

 「えっケーキ作るの、なんで?」

 「・・・食べたいからです」


 自分でももっと良いいいわけが思いつかなかったのかと思った。広野さんは不審そうな目でこちらを見ていた。


 「わざわざ手作りしなくても・・・買ってくれば?」

 「いや・・・やっぱり食べる気なくしました、いいです!」


 勢いよくリビングに転がりこむようにして入る。隠していたプレゼントの入っていた箱を見やる。


 「これ、誕生日の日に渡したほうがいいよね・・・」


 忘れないようにどこかに隠そうかとも思ったのだがどこに隠せばよいか迷った挙句クローゼットの中の奥のほうに隠した。忘れないように覚えておかなくてはならなかった。

 何とかケーキだけでもこっそりと作れないものかと考えた。広野さんはほぼ毎日家にいるので内緒にするのはきっと無理だろう、サプライズをしたいのにできないのが歯がゆい。


 「うーん」

 「さっきから本当になにしてんの?」

 「・・・何もしてませんよー」

 「ふーん、ずっとなんか挙動不審なんだけど」

 「気のせいじゃないですか?」

 「怪しい」


 完全に私を疑っているような目で見る、なんだか理不尽だが腹が立つ。


 「それより小説のアイデアは浮かびましたか?」

 「ん?全然」

 「駄目じゃないですか、ちゃんと考えてください九森崎さんを困らせたらだめですよ」

 「いや、いつも俺が困らせられているんだけど・・・まあいいや」


 そう言って仕事部屋のほうにあっさりと帰って行った。ホッとしてため息をつく。そんなに挙動不審だったけと自分の行動を思い返す。

 確かに変な言い訳をして挙句クローゼットにこそこそと物を隠したりと怪しい行動はしていたはずだった。そうして気がつかなかったのだろうか、きっと広野さんだけでなく誰もが怪しいと思うような行動だった。


 「・・・穴があったら入りたい」


 それが今の自分の気持ちだった。


 

 

 


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