表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【吸血鬼の変奏曲(パルティータ)】  作者: 稲木グラフィアス
第一章『銀髪の追跡者(チェイサー)』
9/46

Phase.2『サイコメトラー』part.2

「ちょっと、美佳。痛い!」


「真夜」


 美佳は永夜を女子トイレの中に連れ込むと、先程と同じような声で話す。


「真夜、あなたは何でここに来たの?」


「え、ただ単に転校してきただけ……」


「嘘」


「え?」


 すると、美佳は永夜を個室に連れ込んだ。

 永夜はただでさえ、女子のトイレに入ることに躊躇いを持っていたのに、個室にまで連れ込まれてパニックに陥っていた。


「ちょっ、ちょっと美佳? 何を……」


「ちょっと脱いで」


「はぁ!? 何でっ……」


 戸惑う永夜の言葉を聞かず、美佳は永夜の服に手をかけた。

 永夜は驚き抵抗する。


「ちょっ、止めてよ。美佳!」


「何で?」


「何でって……」


「人前で脱げない理由があるの?」


「普通脱がないよっ!」


 美佳の気迫は凄い。

 決してふざけているはずのない、真剣な眼差し。

 永夜は美佳のやりたいことがわからずにいる。


「さっき、真夜の過去を見た時ね、変なおじさんが真夜の事を『えいや』って詠んでいたの。真夜、あなたは本当に天月真夜なの?」


 永夜の事を本名で呼ぶ人間は勝吉一人しかいない。

 それを知っているのはウィアドメンバーのみ。

 ならば、何故美佳が『えいや』という名を知っているのか。

 永夜は頭の中に残っていた一つの言葉を思い出す。


 ――――過去を覗くよ?


 それは美佳が永夜に言った言葉だった。


「美佳、あなた何者?」


「それはこっちの台詞。真夜、あなたは誰?」


 自分が何者かなど言えるはずもない永夜は、黙秘しかなかった。

 にらみ合いが続く。

 すると、痺れを切らしたのか、美佳は永夜から離れる。


「部屋で話そう、真夜」


「…………」


 美佳のプレッシャーは先程より更に強くなっている。

 永夜はそのプレッシャーに圧され気味だった。











「さあ、さっさと白状したらどうだね」


 美佳は永夜の部屋に入り込み、窓の方に行く。

 誰になってるんだよ、という突っ込みは心の中だけに止めておく。


「お袋、田舎で農業をしてるんだって? お前が務所なんぞに入ったら、さぞ悲しむ……」


「……おーい、美佳~」


 永夜は一人だけ違う世界に入り込んでいる美佳を止めようとするが、美佳がそれで止まる事はなかった。


「ほら、カツ丼でも食って……」


「どこにカツ丼があるの!? これどう見ても箸だけだよね?」


「有機物なだけ、お皿よりは食べ物に近いよ」


「知らないよ! そもそも食べ物じゃないよね!?」


 何故だかわからないが、美佳は永夜の正体に感づいているようだ。

 ハッキリとわかっている訳ではないのか、なかなか本題に入ろうとせずに、手前でふざけている。

 先程美佳が言っていた『過去を覗くよ?』という言葉。

 永夜が吸血鬼である通り、この世界にはオカルトな能力を持った者が隠れている。

 その多くが人間の社会に溶け込み、回りに気付かれる事無く暮らしていけている。

 他人の過去を覗けるのは、その類いの能力の持ち主か、もしくは……





 ――――サイコメトライズ






「美佳、あなたまさか」


「やだぁ、百合じゃないわよ」


「なんだ、そっちか」


 百合、というのなら美佳はまだ永夜が男であるとは思っていないのだろう。

 だが、男だと知られるのは時間の問題だった。


「……じぃ~」


「み、美佳?」


「……じぃ~~~~」


 美佳は永夜の体を舐め回すように見る。

 その仕草に不快感を抱きながらも、逃げれば怪しまれる為、永夜は動けない。


「真夜ってさぁ、本当の名前は何?」


「な、名前?」


「真夜…………本当は男だよね?」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ