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【吸血鬼の変奏曲(パルティータ)】  作者: 稲木グラフィアス
第一章『銀髪の追跡者(チェイサー)』
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Phase.2『サイコメトラー』part.1

 

「と言うことで、皆さん仲良くしてあげてくださいね~」


 ホームルームに二年A組にて、自己紹介をした。

 永夜が入ってきた瞬間、教室全体が騒がしくなって、佐野先生は生徒達を静めるのに苦労していた。

 そして、ホームルーム終了直後。


「ねぇねぇ、天月さんって日本人なの?」「綺麗な銀髪だけどハーフとか?」「天月さんはどっから来たんですか?」「最近の趣味とか」「好きな食べ物とか」


 よく喋るクラスだ。

 転校生がそんなに珍しいか?

 それとも銀髪が?

 そんな事を思いながら、生徒達の質問に順を追って答えていく。

 すると、見覚えのある顔が現れた。


「おはよっ、真夜!」


「あ、美佳。おはよう」


 そんな永夜と美佳の行動にクラス中の視線が美佳に集まった。


「何、美佳。天月さんと知り合いだったの?」


「ううん、昨日知り合ったばっかだよ」


「えっ、本当? あ、でも美佳ならこのやり取りも納得もいくような」


「そうそう、もう親友レベルの仲だから!」


「そこまでの仲だったっけ?」


「うぇ? あんなに話したのに。真夜って冷たいなぁ」


「冷たいも何も……」


「本当に親友じゃないの?」


「だから本当に昨日会ったばかりだから」


 美佳は親しみやすい性格なのだろう。

 だからといって永夜と美佳は親友という訳ではない。

 そもそも性別を偽った親友など、美佳も欲しくはないだろう。


「美佳には普通の態度で、私達には他人行儀ね」


「確かに。もう少し砕けて喋ってほしいよな」


「いや、他人でしょうに……」


「天月真夜はこの1年A組の一人。つまり私達のクラスメイト。その時点で他人ではないのよ?」


 クラスメイトは十分他人ではないか。

 と思った永夜だったが、話が拗れそうなので止めておく。


「だから、わかるよな!」


「敬語禁止、ボケやツッコミ以外では全面禁止!」


 すると、生徒達は一斉に叫びだす。


『我々、1年A組は全員家族!』


「どこの熱血アニメ?」


「そんな事言ってると、クラスで浮いちゃうゾ☆」


「今でも十分浮いてるんだけど……?」


 非常にテンションの高いクラスに圧倒される永夜。

 教室の外で永夜の事を見に来ていた他のクラスの生徒達の存在に気づいたのにそう時間はかからなかった。











 高校生の授業なんて簡単簡単、なんて思っていた永夜だが、今日の授業を終えた途端に机に突っ伏す。

 永夜の時代の教科書内容と今の教科書内容とでは違う。そうに違いない。でなければ、先生の授業をする声が催眠術の言葉に聞こえるはずがない。

 そう、心の中で繰り返した。

 A組全員からの全質問発射に加えて、他のクラスの生徒達からの一斉掃射があったのだ。永夜は初日からクタクタである。


「真夜~」


「え、何?」


 放課後になり、さっさと帰ろうと思った所に美佳が話しかけられる。


「何って、スクールティンカーについてよ」


「何で、私はいきなり勧誘されているのかわからないのだけれど?」


「真夜には特別な力があると見たわ。さあ、今すぐその力を解き放つのよ!」


「別に波も何も出ないよ?」


「えぇ? 出ないの?」


「逆に何で出ると思ったのか聞きたいわ」


 まず、スクールティンカーがどんな団体なのかを知る必要がある。

 それがわからない限り話しても無駄。

 学校のよろず屋、スクールティンカーとは、いったい何なのか。


「ねぇ、美佳。スクールティンカーってそもそも何なの?」


「スクールティンカーっていうのは、その名の通り学校のよろず屋よ。生徒達や先生方からのちょっとした依頼を受けて行動するの」


 永夜は心の中で小規模なウィアドを思い浮かべた。

 あながち間違いではないだろう。

 だが、そのミニウィアドのメンバーは自分と勝吉とチェイサー4となっていた。

 永夜に女装をさせる際に、その光景が永夜の脳裏に焼き付いていたからだろう。


「でも、私は忙しいから……」


「お願い、入ってぇ~」


「いや、だから……」


「入るべきよ、真夜は!」


「何で命令口調?」


「入らないと過去を覗くよ?」


「また訳のわからない事を……」


 と、その時。美佳は永夜の持っていた鞄を持ち、目を閉じた。

 ……………。……、…………………。

 しばらくして、美佳は目を開く。

 しかしその目は、先程までとは異なり、驚いて目を見開いていた。


「………………真夜」


「何?」


「ちょっと、こっち来て」


「え、私これから行く所が……」


 美佳は永夜の言葉を無視して、永夜の腕を強く掴んで引っ張っていく。

 顔が一瞬近づき、美佳は呟いた。


「いいから、来なさい」


 その声は本当に美佳の発した声だったのか、永夜に疑わせる程どすの効いた声だった。


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