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【吸血鬼の変奏曲(パルティータ)】  作者: 稲木グラフィアス
第一章『銀髪の追跡者(チェイサー)』
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Phase.1『銀髪の吸血鬼』part.5

 

「あ、朱知さん?」


「美佳でいいわよ。美佳で」


 永夜に話しかけたのは永夜を男二人組から助けた朱知美佳だった。


「じゃあ……美佳さん」


 永夜が名前を呼ぶと、美佳は顔をしかめた。


「同年代なんだから『さん』は付けなくていいって。あと、敬語もダメ」


 いや、同年代じゃないし。

 と、言うことはできないので心の中に留めておく。

 永夜は最低でも20歳は越えているはず。

 それなのに高校生と同じ年代に見られるのは、少し複雑な気持ちだった。


「じゃあ、…………美佳」


 美佳は名前で呼ばれると満足そうに笑う。


「そう言えば、貴女の名前聞いてなかったよね」


「あ、ごめんね。私は天月真夜。私も真夜でいいから」


「わかった。で、そこが真夜の部屋?」


「あ、うん」


「私は206号室だから、何かあったら言ってね。じゃ、お休み~」


「うん、お休み」


 美佳が部屋に帰ると、永夜も207号室のドアを開けた。


「はぁ、……ちゃんと女の子みたいに振る舞えたな」


 永夜は先程の状況と自分の対応はベストだったと自身に言い聞かせながら、部屋の中を見回す。

 ベッドの横には段ボールが二、三個置いてあった。

 既に荷物が届けられたのだろう。

 永夜は今の内に段ボールの中に入っている物を確認しておくことにする。

 段ボールを開けて見ると、中には日常に必要な物が一通り揃っていた。

 だが、底の方が二重底になっているのがわかった。

 明けて見てみると、そこには制服の着替えや下着(やはり女物)の他に、銃弾のストックや携帯端末、ナイフ、包帯等の応急処置のセットがあった。

 どう見ても、ただの女生徒が持っている物ではない。


「とにかく、ちゃんと隠さないとな」


 永夜は学校の鞄にナイフを一本と、包帯と痛み止め、そして携帯端末を入れ、残りはクローゼットに箱に入れて隠した。

 勿論、その箱の底も二重底になっていて、ちゃんと隠すことができるようになっていた。

 一通り準備を終えると、永夜は携帯端末を取りだし、ウィアドに連絡を取る。

 だが端末の電源をいれると、ハートやら何やらと散りばめられたような画像が壁紙になっていた。

 永夜は震える手を堪えてウィアドの欄を探す。


「あれ、無い?」


 端末の電話帳にはウィアドの欄がどこにもなかった。

 だが、一ヶ所。永夜の目を止める物があった。

 『パパ』と書かれた欄だった。


「あのクソ義親父がぁ」


 『パパ』を選択してコールすると、数秒後に画面に柳勝吉の顔が写し出される。

 どうやらテレビ電話になっているようだ。


『やあ、真夜ちゃん。元気~?』


「元気? じゃねぇよ。なんで端末の電話帳に『ウィアド』じゃなくて『パパ』があるんだよ」


 またも『真夜ちゃん』と呼ぶ勝吉に、永夜は気にせず話を進める。


『いやもしも誰かに見られた時に『ウィアド』なんて欄があったら不思議に思われるだろ?』


「そうだとしてもな。なんで『パパ』なんだよ。『柳勝吉』でいいだろ」


『いやいや、誰かともわからない男の名前が電話帳に書いてある。何かイケナイ臭いがするだろう?』


「今あんたの頭の中の方が酷いと思うぞ?」


『気のせいだよ』


「はぁ、…………あぁそうだ。もう一つ聞きたいんだが」


『何だい?』


「俺は潜入中、この高校で勉強するって事になってたんだが……」


『ああ、それね。チェイサー7はちゃんとした教育過程を受けてないからね。中学校に潜入するには、ちょっと背が高すぎるし。せめて高校だけでもって思ったんだよ』


「それは義親として……か?」


『まあ、そういう事にしておくよ』


 勝吉は何かを隠したり、誤魔化したりする時、必ず顎髭をさする。

 今も顎髭をさすっている所からして、永夜のため、というのを誤魔化したかったのだろうと永夜は解釈する。


『ん、どうした? チェイサー7』


「いえ、なんでもありません」


『ホームシック? パパが恋しいかい?』


「よし、高校だけじゃなく進学までしてみるかな」


『そんなぁ! 真夜ちゃんがいないとパパ寂しいよぉ! パパは寂しいと死んじゃうよぉ!』


「勝手にのたれ死ね!」


『ま、冗談はさておき。一応バックアップは送っているが、それでは次のミッションを伝えられなくなるから止めてくれ』


「わかってます」


 切り替えの早い二人だった。

 義理とは言え、親子。永夜と勝吉特有の話のリズムは二人にしかわからない。


『では、明日から任務に当たってくれ』


「了解しました」


『期待しているよ』


 通信終了。端末の画面が暗くなる。

 永夜は端末の電源を切り、ベッドに横になる。


「明日から任務。吸血鬼事件の犯人を探しだし、警察に引き渡す。それでいい。いつも通りにやれば、すぐ終わる」


 ただ、いままでと違うのは自分が女装をしているという事だった。

 ある意味、今回のミッションの中で一番の不安要素であることに間違いはない。

 ……柳永夜は今から天月真夜。

 心の中で何度も何度も繰り返し、その内に眠りについた。


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