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【吸血鬼の変奏曲(パルティータ)】  作者: 稲木グラフィアス
第一章『銀髪の追跡者(チェイサー)』
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Phase.8『過去』part.6 +Epilogue


「本当に良いんですか?」


「あぁ、頼む」


「わかってると思いますが、私ができるのは記憶を奥深く沈める事と浮き上がらせる事。つまり、意図的に記憶喪失にする事も記憶を甦らせる事ができます。ですから、何かの拍子に思い出す事があるかもしれません」


「わかってる」


 仲間が到着してから、永夜はカプセルを飲み、記憶操作のプロの岡山(おかやま)(てる)という人物に、スクールティンカー達の永夜が転校して来たばかりの頃から現在までの天月真夜、柳永夜の記憶を全て消してもらうよう頼んでいた。


「やけに念を押すんだな」


「忘れられるってのはとても悲しい事なんですよ」


 岡山輝という人物の記憶操作は生まれつきで、幼い頃は力の使い方を知らず、無意識に他人の記憶を呼び起こしたり忘れさせたりして、回りから気味悪がられていた。

 そう。ウィアドのメンバーの殆どが幼い頃は……という過去に回りから嫌われていた者達なのだ。

 よく考えれば星亮のA組も似たような環境だった。

 自分達は仲間だから。同じ境遇に立った事のある者同士だから。

 独りという事がどんな事かよくわかるのだろう。

 美佳の何処でも馴染めそうな性格は、自分の仲間が欲しいが為の物。

 そういう人がいるからこそ、星亮のA組ができたのだろう。

 『絆』永夜の頭にその一文字が浮かんできた。

 A組という括りとスクールティンカーという括りにどちらにも絆で繋がっている節がある。

 絆。断ちがたい人と人の繋がり。

 永夜との繋がりはまだ弱くても、それはまだ初めだから。

 例え永夜が吸血鬼でも、そうでなくてもA組に来た時点で互いの縁が結ばれた。


「大丈夫。忘れるのは記憶だけだから……。輝さんが言ったんですよね? 一度結ばれた縁は決して切れる事はないって」


「元々は私の祖母の言葉なんだけどね。縁は決して切れる事はない。例え忘れられたとしても、心の何処かでは忘れない物よ」


「頭で忘れても、心が覚えてるって事ですよね」


「成る程、チェイサー7は彼女達を信じている。と」


「説明しないでください。恥ずかしい」


「恥ずかしがらないでいいと思います。とても素晴らしい事だと思いますよ?」











 眠ってしまったスクールティンカーのメンバーの天月真夜と柳永夜に関する記憶を消し、それぞれの家にこっそりと帰した翌日。

 風邪を引いていた事になっていた天月真夜はちゃんと登校していた。

 真夜は道中、スクールティンカーのメンバーに会ったが、柳永夜とはわかっていない様子だった。


「ねぇ、天月さん」


 真夜は心の中で「ほらね」と呟いた。

 美佳なら初対面の仲間には積極的に接してくるのだ。


「何ですか、朱知さん?」


「美佳でいいわ。私も真夜で良いでしょ?」


「じゃあ……美佳さん」


 真夜が名前を呼ぶと、美佳は顔をしかめた。


「同年代なんだから『さん』は付けなくていいって。あと、敬語もダメ」


「じゃあ、…………美佳」


 美佳は名前で呼ばれると満足そうに笑う。


「うんうん、それでよし。で、突然だけどね……私達の部活に入部しない?」


「どんな部活ですか?」


「えっと、主に生徒からよく頼まれた仕事こなす……万屋みたいな部活でね。スクールティンカーっていうの」


 初めての時は渋ったが、今の真夜は違う。

 そう、真夜が答えるべきは一言だ。






「…………はい、いいですよ」






吸血鬼の変奏曲(パルティータ)

第一章『銀髪の追跡者(チェイサー)』完

はい、題名の通り吸血鬼の変奏曲の第一章はこれにて完結します。

当然、これで終わらせる気は無いのですが、残念ながら二章をどのような話にしようかぼんやりとしか考えていません。

しっかりと考えてから再開したいと思っていますので、再開するのは活動報告でするつもりです。


第一章まで読んでいただき、ありがとうございました。

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