Phase.8『過去』part.3
「何、遥?」
「キョンシーは鏡に弱いそうです。そして、普通の攻撃は効かないらしいですが、集さんなら対抗できるかもしれません」
「へぇー、調べてたんだ。遥」
「えぇ、ちょっとだけ」
遥は口を滑らしてなどいない。
だから後悔はしていない。
自分の意思で口に出したのだ。
ウィアドの情報を横流ししたようで、罪悪感が少し残っただけだった。
早く解決して、スクールティンカーのもとへ永夜に戻ってきて欲しいという願いは、いつの間にか遥の中で大きくなっていた。
「なるほど、鏡を持っていればキョンシーは近寄れないと」
スクールティンカーの考えは一致している。
しかし、その考えを持っている者は、スクールティンカーだけではない。
天月真夜……本名、柳永夜。
「じゃっ、鏡を持って夜の星亮市裏路地に繰り出そうか!」
「まじかっ!」
修は咄嗟に立ち上がるが、落ち着いてから着席する。
「まぁ、待て。そんな夜中に出歩ける程、俺の家の門限は緩くない。それに遥さんの家の方がもっとキツそうだ」
「確かに私の家の門限は厳しいですが、スクールティンカーで勉強会などと言えば、一晩くらい大丈夫だと思いますよ」
「でも、いいんですか? 男が一人いるのに」
「それは大丈夫だと思います。よくスクールティンカーの事は父や母にも話してますし」
「じゃあ他に意見がある人は……桜は?」
「いえ。遥様がいいとおっしゃるのなら、私は全身全霊を持ってお守りするだけですので。私が逃げてといいましたら、すぐに逃げてくださるようお願いします」
桜は座りながらも深くお辞儀をする。
席の位置から、立つのは無理。
「うん、わかったわ」
午後11時。
遥の言った通り、一晩の勉強会が許された。
消灯は強くは決められてはいないが、日付が変わる頃には消灯をしろと言われた。
言うまでもなく修は初めて遥の家中に入って興奮状態だ。
スクールティンカーは一つの部屋で勉強をする振りをしながら、今晩の作戦会議をしている。
開始は午前0時。
消灯と共にそれぞれ手鏡を持って窓から外へ出る。
裏路地へ行き、美佳が永夜がキョンシーと戦っていた場所を探索。
最悪、午前3時には戻る。
と、しばらくして時計の針が12の所で重なる。
「では、皆さん。それぞれの部屋でお休みなさい」
『おやすみなさーい』
各自、それぞれ自分に与えられた部屋に入ると、すぐに窓を開けた。
すでに桜が玄関の外までワイヤーを張っていた。
美佳と修は、ベランダを伝ってワイヤーについたハンドルを握ると、一気に玄関の外へと渡る。
「なんか私、こういうのってテレビの中だけだと思ってた」
「俺も」
二人が地面に降り立つと、後から桜が遥を抱えて渡ってきた。
「桜、王子さまみたいね」
「可愛いのにカッコいいと思ってしまった俺が憎い!」
「いいじゃない別に」
「さ、皆揃った所で裏路地探索に向かうわよー!」
『おー!』
やや抑え目に声を揃えるスクールティンカーにはわからないだろう。
桜のポケットが異様に膨らんでいるのを。
桜はそっとその膨らみに触れる。
ずっしりとした重りに何を確認したのか、桜は口元で静かに笑う。
「桜、どうかした?」
「いえ、ワイヤーを回収しているだけです」
確かにワイヤーを巻いているが、桜は分からない程小さな声で呟いていた。
「ウィアドめ。ようやく貴様らにあの時の復讐ができる。……楽しみだ。柳永夜、貴様に引導を渡してくれる……」
本当は2000文字越えを目安に書いていたのですが、今回は少し短くなってしまいました。
これもテストが近い上に、やりたい事が多いからでしょうかねぇ(泣)




