Phase.1『銀髪の吸血鬼』part.3
「あぁ?」
「何、君?」
仁王立ち女生徒は堂々としていて、永夜にはどこかのヒーローに見えた。
「今時そんな古いナンパじゃ誰も釣れないっての」
……そういう問題なのか?
と永夜は心の中で呟く。
女生徒はくどくどと男二人を諭していった。
そして遂に我慢の限界が来たのか、片方の男一人が「行こうぜ」と言って、もう一人と去っていった。
「ありがとうございます……、えっと」
「貴女も駄目だよ?」
「え、何がですか?」
「何が、『ワタシ日本語、分ッカリマセ~ン』よ。本当にそれで誤魔化せると思ってるの?」
「お、思いません」
その女生徒は男達の次に永夜を諭してきた。
それからたっぷり20分。近くにあった時計の長針が120度傾いた。
「どう? わかった?」
「はい、それはもう」
くどくどと何か言っていたらしいが、永夜は何を言っていたのか全く覚えていなかった。
だが、ここで分かりませんと言えば、初めからもう一度話されそうだった。
「ねえ、所でさ」
「はい?」
「さっきの私、格好良かった?」
「…………はい?」
女生徒(そろそろ自己紹介をしてくれると助かる、と永夜は思っている)はニコッと笑って見せる。
元気系の笑みとでも言うのだろうか。
「ほら、道端で女の子が男二人に絡まれている所を颯爽と現れて助ける。あぁ、格好良いじゃない!」
女生徒は目をキラキラと輝かせている。
そんなにヒーローになりたいのだろうか。
しかし、永夜は自分の事を女の子と言われたことに、複雑な心境に陥る。
「はぁ、女の子……かぁ」
「ん、何か言った?」
「いいえ、何も」
自分の女顔を今ほど悔しく思ったことはないだろう。
(義親父の言う通り髪を切ってればもっと変わったのかな?)
と、そんな事を思いながら女生徒の話を聞いていた。
が、しかし
「あの~」
「ん、何?」
「貴女のお名前は?」
一人だけで長々と話し続ける女生徒に痺れを切らし、永夜は遂に名前を聞いた。
「私は朱知美佳。星亮高校の一年A組で、スクールティンカーの団長よ」
「スクール……ティンカー?」
School=学校
Tinker=よろず屋
永夜の頭の中の変換はそうなった。
まあ、合ってはいるのだろう。
しかし、永夜はまだよくわかっていなかった。
彼女――朱知美佳が言ったスクールティンカー、『学校のよろず屋』というのは何なのだろうか。
「そう言えば貴女見ない顔ね」
「え? ああ、そうでしょうね」
しかし、美佳は何の説明もなく話を先に進めてしまう。
「何、転校生?」
「はい、明日から星亮高校の一年A組に転入することになっています」
「え、本当? やたっ、一足早く転校生に会えた! じゃあ……」
美佳は嬉しそうにした後、鞄の中をゴソゴソと漁り始めた。
何をしているのかと覗いてみると、美佳は一枚の紙を取り出して永夜に差し出してきた。
「はい、スクールティンカーに勧誘しておくね?」
紙には
『来たれスクールティンカーへ!
学校のよろず屋。電話一本で何でも解決。
電話番号は〇〇〇‐〇〇〇〇‐〇〇〇〇』
と書いてある。
「あのこれ、勧誘っていうより広告じゃないですか?」
「あ、間違えた………えっと、まあいいや。同じクラスに来るんだからその時までに考えておいてね?」
「あ、ちょっと!」
美佳は言いたいことだけを言い終えて去ってしまう。
永夜には別に追いかける理由もなければ、明日また会えるだろうと思ってそこを動かなかった。
ただ、一つだけ頭に引っ掛かる点があった。
「なんで、あの人は俺の事を転校生だと?」
確かに見ない顔のはず。当然、永夜は美佳とは初対面である。
永夜が潜入する星亮高校は星亮市立の高校で、ここ星亮市には星亮高校の他に、三つの高校が存在している。
その内の一つと考えてもおかしくはなかったはず。
それなのに美佳は最初からわかっていたかのように、永夜のことを転校生だと言ったのだ。
「あっと、そろそろ時間だ」
永夜が一足先に星亮市に来た理由は、星亮高校の校長と会うためだった。
共学の高校に潜入といっても依頼主は元々、星亮市に存在する四つの高校の校長達が話し合って決めたらしい。
しかし、警察は永夜がこのような依頼を受けていることなど知らない。
誰かに正体を知られ、その人物が警察に通報すれば永夜はたちまちお縄にかかってしまう。
その為に校長に会いに行かなければならないのであった。