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【吸血鬼の変奏曲(パルティータ)】  作者: 稲木グラフィアス
第一章『銀髪の追跡者(チェイサー)』
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Phase.7『再捜査』part.2


「ダメ、分からない」


「真夜さ……いや、永夜さんも魔術を使えるのでしょうか?」


「さあ、簡単な術式程度ならとか言ってたけど……」


 永夜を除くスクールティンカーのメンバー達は永夜を探す為に聞き込みをしていた。

 途中から永夜の使用した魔術が美佳の能力を妨害しているため、ルナの隠れ家から移動したという所までしか分からなくなってしまったのだ。


「とにかく、目を潰しに行きましょうか。修さん、長瀬さんに連絡できますか?」


「……ああ、わかった」


「美佳、他に何か見えた?」


「後は、男の子のキョンシーが……」


「え、キョンシー?」


 美佳の返答に遥は驚く。


「キョンシーというと、中国の?」


「うん、テレビみたいな服装でも、額にお札が貼ってあった訳じゃないけど。ぴょんぴょん跳びはねていたから、たぶんキョンシーだと思う」


「キョンシーって、人の血を吸うんでしょうか?」


「さぁ?」


 美佳と遥は事件について考え、修は目を潰すために有紀斗に連絡。

 そして、桜は永夜がどこに行ったのか推理していた。

 当然、永夜がどこに行ったかはわからない。

 キョンシーがどこにいるかすら分からないのだ。

 スクールティンカーが知っているキョンシー像は、中国の妖怪で、両腕を前に突き出してぴょんぴょんと跳びはねるくらい。


「すいません、ここら辺で吸血鬼……あ、いや。キョンシーを見ませんでした?」


 美佳は通りかかった人に片っ端から話しかけていた。


「キョンシー? 何だ君もか。最近、キョンシーが流行ってるのか?」


「も、ってどういう事ですか?」


「ついさっきまで、君と同じ事を聞いていた女の子がいてね。長い銀髪で、可愛い子だったなぁ。何かを見たのか、走ってっちゃったけど……」


 美佳の知っている人物の中で、長い銀髪の女の子は一人もいない。

 しかし、女装した男なら知っている。


「その女の子、どっちに行ったかわかります!?」


「確か、あっちの方に走っていったよ」


「ありがとうございます! 皆っ、こっち!」


 美佳はスクールティンカーのメンバーを呼ぶと、指差された方向に走っていった。

 銀髪の女の子は間違いなく永夜で、見たのはスクールティンカーだ。

 自分自身を探していると知って、見つからない内に逃げ出したのだろう。

 永夜によって美佳の能力が妨害されているが、それは目を潰せばおしまいとなる。


「何も悪い事してないんだから、逃げる事ないのに……」











「ったく、まさか俺を探してるなんて……」


 スクールティンカーのメンバーを見つけた永夜は、その場を離れて建物の陰に身を隠した。


「真夜ぉぉぉ!」


 美佳が目の前を横切る。

 気付いていないようだ。

 続いて修、桜。


「……はぁ」


 だが、一人だけ立ち止まった。


「あ、真夜さ……永夜さん」


「……っ!?」


 立ち止まったのは遥。

 永夜は反射的に遥を陰に引き込み声を出せないように口を押さえて、遥を抱えて奥に連れていった。

 奥に行くと、ルナの隠れ家につく。

 永夜はようやく遥から手を離した。


「えっと、永夜さん……でいいんですよね?」


「美佳から聞いたんですね」


「は、はい」


「まったく、美佳って……」


 あれほど口外するなと言っておきながら、と心の中だけで呟く。


「本当に男性なんですか?」


「ええ、そうですよ」


「おかしいですねぇ」


「何が?」


「私、知らない男性が相手だと触られただけで相手を叩きのめしてしまうんですけど……」


 気がつかなかったという事だろうか。

 なら、それで良かったのかもしれない。

 もし気付かれていたら、遥の怪力で叩きのめされていたのだろう。


「あの……美佳から、永夜さんが男性であると聞いて……」


「軽蔑しますか?」


「いえ、そうではなくて。ウィアドの調査班であるということで、お礼を言いたかったんです」


「お礼?」


「まぁ、今話す内容ではないでしょうから、またいつか。桜と出会えた時は、どうもありがとうございました」


 お礼を言われても、永夜にはさっぱりわからなかった。

 過去にウィアドに依頼をしたのだろう。


「あと、桜の事を悪く思わないで下さいね?」


「だいじょうぶですよ。悪いのは俺なんですし」


「そんな事ありませんよ。永夜さんは吸血鬼事件を解決するために、女装してまで調査にあたってるんですから」


「『した』っていうか『させられた』って感じなんですけどね」


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