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【吸血鬼の変奏曲(パルティータ)】  作者: 稲木グラフィアス
第一章『銀髪の追跡者(チェイサー)』
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Phase.6『傷跡』part.3

中途半端な所で止まってしまって、申し訳ございません。

さて、バンパル再開です。

張り切って執筆していきます!


「お前、ウィアドを知ってるのか?」


「知ってるも何も。私はウィアドを探してたのよ」


 少女の言葉に永夜は驚く。

 少女は確かに『ウィアドを探してた』と言った。

 永夜は頭の中で、色々な可能性を考えてみる。

 ウィアドに何か依頼するため。

 ウィアドに入社希望。

 ウィアドの商売敵からの依頼で、ウィアドの場所を探るため。

 などなど……


「私を助けてくれたあの人がね、自分を殺した後はウィアドに行けって言ったの。でも、私はウィアドなんて知らないし。それがどういう団体なのかはわからなかったの。あの人が信頼できる場所だって言うから、孤児院のような場所かと思ってたんだけど……なるほどねぇ」


 魔王は以外と親切な人だったのではないだろうか。

 永夜はそう思った。

 確かにウィアドのメンバーの中には、前科があった人ばかり。

 つまり、悪人であった人である程、ウィアドの存在に詳しくなる。

 しかし、権力者の場合は別。

 とにかく、ウィアドは表向きには知られていないだけであって、結構有名な会社である。

 もちろん、ウィアドにも商売敵という会社はあるので、彼らが解散でもしない限りウィアドの仕事は絶えないだろう。


「ねぇ、あなた。今、ウィアドのどこかの班に入れてもらうって言ってたわよね?」


「あ、あぁ。言ったな」


「やった! これで、やっとまともな食事ができるのね! 好きでもない男の血なんて、美味しくなかったんだもん!」


「おいおい、すぐに班に入れてもらえると思うなよ。ちゃんと罪を悔いて、更正してからなんだか…………ん、ちょっと待てよ?」


 今の会話の内容に違和感を覚える永夜。

 吸血鬼事件とは去年、2051年の秋から発生している連続殺人未遂事件の事。

 被害者は十数人。その全員がうら若き女学生。

 裏通りや真っ暗な夜道での犯行と見られ、争った形跡は無し。致命傷は首筋に付いた二つの傷で、その傷がまるで吸血鬼に噛まれた様な傷に見える事から、吸血鬼事件と呼ばれるようになった。

 しかし、少女は『好きでもない男の血』と言った。

 吸血鬼が吸う血は、決まって異性の血である。

 少女は紛れもなく女性。

 女学生の血を吸う事はない筈。

 つまり、永夜の目の前にいる吸血鬼の少女は吸血鬼事件の犯人ではないという事だ。


「お前、吸ったのは男の血だよな?」


「当たり前でしょ、異性の血だからね」


「吸血鬼事件の被害者は、皆女学生だ」


「って言うか、吸血鬼事件の内容があまりわからないのだけど……」


「あ、そう」


 永夜は少女に吸血鬼事件の概要を説明する。

 説明が終わると、少女はため息をついてから言った。


「その事件の犯人、私じゃないわね」


「やっぱり……か」


「第一、私は相手が死ぬ程は吸ってない筈よ。それに男の血だし」


「じゃあ、犯人は別にいる……と?」


「そうなるわね」


 永夜はその場にどさりと仰向けに倒れ、ため息をついた。


「なんだよ、また振り出しかよぉ!」










「さて、……帰るか」


 空が明るくなってきて、雨も止んできた。


「あぁ、あんたって学生なんだっけ?」


「潜入してるだけだ。仕事じゃなきゃ、何でこんな短いのを……」


「憎たらしいくらい、違和感がないのに?」


「言ってろ……」


 にしし、と笑う少女。

 ふざけていると分かっているのに、永夜の内心は傷付いていた。


「迎えはいつ来るの?」


「今から約三時間後だな」


「この時間に女の子を一人置いて行っちゃう?」


「俺はこれから潜入に行かなきゃならないん……あ、成る程」


 永夜はこれから学校に行ってどんな事になるかわかった物ではなかった。

 不安なのは桜が何もする筈がないという事。

 永夜の事を『殺し屋』や『化け物』と認識している事は明らか。

 そのまま、桜の目の前に姿を晒せば何をされるかは想像をしたくもなかった。

 少女はそれを分かっていて永夜に気を使ったのだ。


「……じゃあ、その代わり俺の愚痴に付き合え」


「ふふっ、了解♪」


「あれ、そう言えば名前を聞いてなかったな」


「そうね、私の名前はルナ。荒牙鬼あらがきルナ」











「……真夜、いる?」


 星亮高校の寮の天月真夜の部屋の前には美佳が立っていた。

 何度ノックをしても返事が返ってくる筈はない。

 天月真夜は現在、部屋にいないのだから。


「当たり前だよね。昨日、あんな事あったんだし……」


 美佳の目にはいつものような活気がない。

 美佳は人の気持ちがよくわかる。

 ふざけている場面は別として、相手が言われたくないと思っている禁句は絶対に口に出さない用にしていた。

 永夜の場合、桜の言った『化け物』という単語は、永夜の言われたくない単語にド直球だった。


「桜だって、ちゃんと永夜の事情を知れば納得する筈だよ。うん」


 美佳は扉から離れ、足早に学校へと向かった。

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