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【吸血鬼の変奏曲(パルティータ)】  作者: 稲木グラフィアス
第一章『銀髪の追跡者(チェイサー)』
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Phase.5『協力の意思』part.3

「ど、どこだ?」


「裏通りからは出てないみたい。前のあそこから北に行った所にもう一ヶ所、同じような場所があるわ。でもその先は見えない」


「北の方角に行くと、同じような場所が?」


 『その先は見えない』という事は、結界が再び張られているという事だろう。

 結界を張ったのはやはり写真の吸血鬼で間違いは無いだろう。

 永夜の頭の中には幾つかの可能性があった。

 一つは、『魔王』があらかじめ張った場所に写真の少女が住み着いている。

 つまり、魔王は魔法使いということになる。

 一つは、写真の少女が結界を張った。

 これは写真の少女が魔法を使える、ということになる。

 他にも多々あるが、以下省略。

 写真の少女が別の場所に移ったならば、そこにも何かしらの工夫を施すはずである。



「そう。後、真夜?」


「ん、何だ?」


「今日は見回り行っちゃ駄目だからね?」


「え、なんで?」


 すると、美佳は永夜を諭すような目で見る。


「昨日、その怪我を負ったのは何で?」


「写真の吸血鬼と戦ったから、だけど」


「それで、その吸血鬼は捕まえられてないわよね?」


「う……そうだけど」


「じゃあ、失敗に終わった訳でしょ?」


「な、何が言いたいんだよ」


 永夜はなかなか本題が見えない事に焦れてくる。


「一人でダメなら、二人。二人がダメなら三人。ってよく言うじゃない」


「今回は美佳もついて行くってのか?」


「スクールティンカー全員でね」


「ダメだ」


 当然だった。

 しつこいだろうが、能力者とはいえ一般人を事件に巻き込む訳にはいかないのだ。


「どうして? スクールティンカーの力があって、ここまで来れたんじゃない」


 美佳は少しだけ頬を膨らます。

 美佳は冗談のつもりなのだろうが、永夜は真剣だった。

 真剣に話しているのに、それをふざけた態度で対応されるのは腹が立つ。


「危ないんだよ、現場は。特に犯人ってのは」


「承知の上よ」


「余計に心配だ」


「私の事は大丈夫だから」


「一般人を巻き込む訳にはいかないんだって」


「私達はスクールティンカーでしょ?」


「それでも、一般人だ」


「もう、頑固だなぁ。はぁ……卑怯だけど。協力させないと真夜が男だって皆にバラすからね?」


 その瞬間、永夜の体と美佳の体が密着する。

 永夜が抱きついた訳でもなく、どちらかがつまずいた訳でもない。

 監視カメラの死角になるように、永夜はナイフを取り出して、美佳に見せているのだ。


「……っちょっと、真夜?」


 声が震える。純粋に恐怖の声だ。


「じょ、冗談……だよね?」


 美佳は笑って誤魔化そうとするが、その笑いは明らかに苦笑いだ。

 しかし、永夜の目は殺意を剥き出しにしている。


「冗談でこんな事はしない。任務の邪魔をするなら、こっちもそれ相応の対処をする。安心しろ殺しはしないさ。だが、度を過ぎればその可能性も出てくる」


「真……永夜……」


 すっ、と永夜は美佳から離れ、ナイフもしまう。

 ついさっきまで笑っていた美佳は、今は何も言わない。

 恐怖に固まった顔は今もそのままである。

 永夜は気の毒に思いながら、立ち竦む美佳に「ありがとう」とだけ言って立ち去る。











「…………」


 永夜が立ち去った後、美佳はしばらくその場で立ち止まっていた。

 永夜の表情を思いだし、夢だったと思いたくなる。

 だが、左掌に僅かに付いた切り傷が現実だと証明する。

 密着された時についてしまったのだろう。

 ついてしまったのか、わざとつけたのか。

 脅しとして傷をつけたと思うと、さらに恐怖が沸いてくる。

 傷は永夜の手についた鎖の食い込んだ傷と同じように忘れられない傷となっていた。


「……私は、何で」


 一人、ぽつりと呟く。

 永夜が一般人を巻き込みたくないのはわかっている。

 しかし、協力してあげたいという想いが強かった。

 天月真夜をスクールティンカーに引き入れようとしたのは、初めはスクールティンカーの信頼度を回復するため。

 永夜が吸血鬼事件を追って、謎の秘密組織から派遣された潜入員だという事は美佳も想定外だったにしろ、大きな事件なら大きな事件な程、スクールティンカーの信頼度を回復しやすくなる。

 しかし、たった五日間で想いが逆転したのだ。

 気づかぬ内に、である。


「はぁ、マックにでも行って夕御飯を買って帰ろ」


 これ以上思いを巡らせても気が滅入るだけだと踏み、美佳はマクロナルドに歩き出した。

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