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【吸血鬼の変奏曲(パルティータ)】  作者: 稲木グラフィアス
第一章『銀髪の追跡者(チェイサー)』
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Phase.4『吸血鬼の時計』part.4

 寮に帰って来た永夜は部屋に入る前に、美佳を気にして、サイコメトライズの事をもう一度聞いてみることにした。


「美佳、もう大丈夫?」


「うん、もう大丈夫……」


 大丈夫、と言うわりには顔が真っ青である。

 とても大丈夫とは言えない。


「もう少し、この時計でサイコメトライズをしてみる。そうすれば何かわかるかもしれないし……。明日の放課後は有紀斗と一緒に行って吸血鬼を捕まえるんだから、真夜も休んだ方がいいと思う」


 永夜は具合が悪そうにしている人間を見捨てられるような吸血鬼ではない。

 もちろん、天月真夜という存在が偽りだと知ってからも、何も気にせず接してくれて、更に調査の協力をしてくれる人を心配せずにはいられない。


「…………。俺も一緒にいてやるよ」


「真夜……いや。え、永夜?」


「そんな青い顔をしてたら、誰も心配しない訳ないだろ?」


「いや、でも。永夜は男だし」


 美佳は頬を赤らめて俯く。

 やはり女装をしているとはいえ、男性を部屋に入れるのは気が引けるのだろう。

 永夜は今度は天月真夜として話してやる。


「寝るまで一緒にいてあげるから」


「いやいや、真夜も疲れてるだろうし」


 美佳は耳まで赤くしながら言う。

 しかし、永夜も引かなかった。


「遠慮しないで。私の体は丈夫にできてるし、まだ元気だしね」


「何も変な事しない?」


「美佳は私をどんな目で見てるの」


「それはもう、残念に……」


「目線を下げないで」


 現在、夕方の午後6時頃。

 まだこれから例の場所を探さなくてはならないため、こんな時間に休んではいられない。

 それでも、目の前の美佳の方が心配なのだ。

 すると、美佳はチラチラと永夜を見た後に頷いて言った。


「じゃあ、ちょっとだけ見ててもらえる?」


「了解」


 ということで、美佳の部屋にお邪魔させてもらう事となった。

 美佳の部屋に入ると、お決まりのように女の子特有の香りがする。

 慣れない雰囲気に、永夜は若干の緊張感を覚えた。

 美佳は椅子を机に対して後ろ向きにして座って、時計を開く。


「ベッドに座ってて。……で、さっそく始めたいけど、いい?」


「うん、いいよ」


 すると、美佳は目を閉じる。

 サイコメトライズの始まりだ。

 じっと動かない美佳を見て、永夜は自分の置かれている状況を改めて認識してしまった。

 一つの部屋に二人の男女。

 修のような者が聞いたら、おもわず『それ、何てラノベ!?』と言いそうな状況。

 永夜は我に帰り、首をブンブンと左右に振って落ち着かせようとするが、美佳は集中して何も言わない。だから永夜が喋る訳にもいかない。という状況がドキドキと心臓の鼓動を大きく聞こえているように思わせる。

 とにかく何かに気をそらさなければと思い、部屋をキョロキョロと見回す。

 すると、永夜はある物に目がとまった。

 写真である。

 美佳の机の上には美佳と思われる少女とその他に女性が二人、男性が一人写っている写真が立てられていた。

 家族写真のようで写っている美佳以外の三人は美佳の両親と姉なのだろう。

 美佳の姉『朱知美代』は美佳と似て明るそうな雰囲気だ。

 仲良しそうな姉妹。とびきりの笑顔を見せる美佳を優しく微笑む美代が抱き上げている。

 美佳が幼い頃の性格を想像して、少し微笑む永夜。

 今と同じように楽しい事を考えながら過ごしていたのだろうか、と思ったのである。

 ふと、美佳を見てみると……


「…………zzZ」


「?」


「…………zzZ」


「!?」


「…………zzZ」


「美佳?」


 近づいて顔を覗いてみると、美佳はいつの間にか寝息を立てていた。

 サイコメトライズ中に寝てしまったらしい。


「はぁ…………美佳、座ったまま寝ると疲れるぞ?」


 肩を少し揺らすと「うん」と返事はするものの、覚醒しそうになって、すぐ眠りに落ちる。

 相当疲れていたのだろう。


「まったく……」


 永夜は仕方がないな、と美佳を抱き起こし、ベッドに寝かせてやる。

 美佳は幸せそうに微笑みながら寝ていて、永夜はその寝顔に少し頬を染める。


「ありがとな、美佳」


 吸血鬼事件の調査に協力してもらっている事にお礼を言うと、美佳を起こさないように音を立てずに時計を返してもらい、部屋を出ていった。

 扉が閉まった音に、美佳はふと目を開けた。

 ぼーっとした頭で何をしていたのか思い出し、完全に思い出した所で顔を赤くする。


「ま…………永夜?」


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