表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【吸血鬼の変奏曲(パルティータ)】  作者: 稲木グラフィアス
第一章『銀髪の追跡者(チェイサー)』
15/46

Phase.3『スクールティンカー』part.3


「皆~、たこ焼買ってきたよ~」


 人数分のたこ焼のパックを抱えた美佳が戻ってくる。

 ちなみに、このたこ焼は美佳の奢りではない。

 スクールティンカーの部費を使ったらしい。


「はぁ……部費をこんな事に使っていいのかなぁ」


「ん、何か言った?」


「何でもないよ」


 何の躊躇いも無く部費を使って買ったたこ焼を永夜は口に入れる。

 すると、


「うま、…………美味しい!」


 どうにか男喋りを抑えたが、永夜はたこ焼を美味しそうに平らげる。


「何コレ!」


「いや何って、たこ焼だけど?」


「日本の食文化ってやっぱいいなぁ」


 幸せそうな顔をする永夜を見て「確かに美味しいけど、そんなに喜ぶ味かなぁ」とスクールティンカー全員が思っていた。

 永夜はウィアドの仕事で色んな国を渡っていた。

 普通なら一支部にとどまるはずが、永夜は義父親についていって色んな支部に行っていた。

 そのため、国々の食を味わった結果、日本が一番だったのだ。


「日本の食文化って、やっぱり真夜さんは日本人じゃないんですか?」


「えぇ。私は日本人じゃないですよ? まあ『人』と言うには、ちょっと無理がありますが」


 と、自分自身を人ではないと言う永夜を、四人は哀れみの目で見ていた。

 スクールティンカーは全員、人の身で特殊な能力を持っているのであって、永夜のように元々人でない者ではないのだ。

 能力者の中でも人であるかないかで線が引かれることもあるという。

 ウィアドではそんな物は無かったために、永夜はあまり気にしていないのだ。

 ただし、能力者とそうでない人とでは距離を置いてしまう。

 それに対し、スクールティンカーは人とそうでない者と線を引いてしまっているようだ。


「さて、聞き込みの方はあまりいい情報は得られなかったけど。これからどうするの?」


「美佳が出した案でしょうに」


 すると、遥が手を挙げた。


「とりあえず、現場に行ってみませんか? 調査の基本は現場検証と言いますし」


「調査の基本は『聞き込み』ね?」


「同じじゃないですか」


 早乙女遥は早乙女財閥のお嬢様らしい。

 そのためか、所々天然な発言をしてしまう傾向が見られた。

 遥は三女で、長女や次女は更に天然だという。


「……現場検証は大事です」


「ほら、桜もこう言ってますし」


 そして、桜は遥の専属メイド。なぜメイドがここにいるのか、と永夜が聞いた所、元々ボディーガードをしていた時の癖だとの事だった。

 遥の話では、刃物の使い方は達人並みだとか。

 しかし、遥が言っている時点でどうも怪しい話である。


「では行きますか? 現場」


「OK! 現場なら私がしっかり探してあるから、場所は大丈夫よ!」


「んじゃ、行きますか」


 と、意気込みだけは良いよろず屋であった。











 現場検証をしながら、永夜はスクールティンカーの事について、深く聞いてみた。

 スクールティンカーの創設はかなり前の事で、正確な事はわからないらしい。

 スクールティンカーはやはり『よろず屋』で、去年はかなり忙しかった。

 今年、あまり忙しくない理由は三年生がいないから。

 一年生だけのグループなど、信用できないのだろう。

 つまり、吸血鬼事件の解決を周りが知れば、信用を得られるという事になる。

 永夜を入団させた理由もその一つで、永夜の知っている事件を解決するというものだった。

 成功する確率は低かっただろうに、永夜は吸血鬼事件の解決のために星亮高校に転入したのだから、大物が掛かったという心境なのだろう。

 で、現場検証の結果と言えば、やはりと言うか何も見つからなかった。


「もー、なんで何も見つからないの?」


「私達高校一年生が警察でも見つからなかった物を、見つけるなんて少々無理があると思います」


「それでも、何にも見つからない事は無いでしょう」


「警察が公開した情報は暗い場所、つまり裏通りでの犯行だってのと、致命傷の跡だけ」


 ウィアドが掴んでいる情報も暗い場所での犯行である事と致命傷の特殊な跡。

 警察は傷が吸血鬼に噛まれた様だ、というだけで犯人が吸血鬼だという事は信じていない。


「じゃあ美佳、サイトメトライズで何か見えない?」


 永夜はいい案だ、と思った。

 美佳は代々サイコメトラーの家系で、その力にきたいするのも悪くはないはずだ。


「ダメよ。私のサイトメトライズは頑張っても、一週間前までしか見えないのよ……」


「え、本当?」


「お姉ちゃんなら何か分かるかも知れないけど、今の私じゃ無理なの」


 美佳は自分の能力にコンプレックスを抱いていたのだろうか、顔を曇らせる。


「あ、ごめんね」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ