ずっと私達のターン(笑)
「いい加減…認めたらいかがですか?」
たっちぃが口角だけをあげた微笑で語りかけている。
今日は月曜日の放課後。私達の2年1組に元1年1組が全員揃っている。
相手にしているのは、現文化祭執行部と去年の執行部の方々。
私達は、卒業した先輩を呼び出す気はなかったけど、先生が呼んだようだ。
先生も独自に…切り札になるネタを掴んでいるようだ。
それは一体…なんだろう?
私達は努めて淡々と対話をしたいと思っているんだけども、先輩方は
顔を蒼くしたり、赤くしたり、表情もとても豊富だ。
自分達の罪を早く認めてさっさと楽になればいいのに。
「あゆ…お前はそんな事俺がしてないの知ってるよな?」
「さぁ?3股かけるような男だから…元カノに縋る男ってキモイ」
実行委員長は歩美に縋ったが、速攻で拒否される。
自分のしたことを棚に上げてよくもまぁ…言えたものだ。
私達は淡々と進めていて…ずっと私達のターン状態なんだけども…
逆からしたら針のムシロ以外の何物でもないだろうな。
「証拠はどこにあるんだよ?見せてみろよ」
「ありますよ。あるから説明をお願いしているんですよ」
たっちぃは先輩達にコピーを突き付けた。
「御覧の通りですよ。かなり…不自然なものがあるんですが?
今からでいいからご説明お願いします。私達が納得できるように」
そういって、たっちぃは今まで見た事のない笑顔を張り付けた。
可愛いんだけど…怖すぎる。言うに言えないけど…。
その瞬間、先輩達の壁に亀裂が入ったように見えた。
「申し訳ありませんでした」
「そうですか、認めるんですね。真美?」
「あっ、先輩方、この話し合いはICレコーダーで録音してありますので
言っていないと言うのは無効ですよ。それから署名捺印して下さいね」
私はICレコーダーを見せた上で、今回の事に対しての覚書を用意した。
今回の件は他言無用にする代わりに、その責務から辞任する…といった
内容にしてある。
多分…これにサインさせるのが一番の難関だと思っていた。
けれども…すんなりと先輩達がサインをしている。
さっき…先生がなにか呟いていたけど…切り札をチラつかせたのかな。
「はい、確かに記入しましたね。では、全校生徒にこの件を謝罪・
説明の時間を早急に手配してください」
「そっ、そんなことは?」
「今年度も同じことをしようとしたことを公表しましょうか?」
「もしかして…文化祭の予算を…着服なんて…先生?」
「さぁ…俺はそこまでは把握していないけどな…」
言葉を濁しているという事は…どこかが着服している事を掴んでるんだ。
「私達の企画は、1年1組との合同企画で食堂と家庭科室と2年1組を
使用します。訂正版は後日改めて提出します。いいですね?」
「…分かった。今まで申し訳なかった」
「もう…結構ですよ。お帰り下さい」
先輩達は大慌てで逃げて行った。あっさりと幕切れしたので
ちょっと拍子抜けしている。
「先生、明日のLHRは1年生を招待したいんですけど」
「こっちでそれは手配しておく。多分大丈夫だろうけど…暫くは
自分達でも注意しとけよ」
「そうだな。暫く警戒しておこうな」
「後、訂正版の企画書の作成はどうする?」
「簡単なものは私が作っておくよ。今日はもう皆帰ろう。お疲れ様」
私は皆に今日は解散しようと提案する。
「真美…ごめんな。ずっと気にさせて」
「もう…終わったから。今年の企画成功させよう…ね?」
「そうだな」
私は小さい頃に読んだ絵本を思い出した。一人は小さいけど皆で一緒なら
大きくなる。越えられない壁なんてない事を実感した。




