去年の真実
後ろ暗い何かが見つかったみたいですよ
「真美、竜也…放課後生徒相談室に…」
「分かりました」
「はい」
6時間目の後のSHR。先生から竜也と共に指名を受ける。
竜也と目が合って思わず緊張が走る。
先生に調べて欲しいものがあると依頼してまだ2日しか経ってない。
いつの間に調べ上げたんだろう?やっぱり伝説の人なんだろうね。
「お前達…何かした?」
「う~ん、どうかなぁ?」
「行かなきゃ分からないよ」
クラスメイトに聞かれる質問を私達は上手くかわしていたと思う。
ただ…一人、歩美を除いては。
「何か…隠してない?」
「歩美…例えあっても今はゲートのデザイン画とパンフレットの表紙が
あるんだよ。お願いだからそっちに集中して」
「何かあれば、最後はお前に相談するだろ?そんなレベルの話じゃない」
「竜也が言うのなら…信じるよ」
歩美は渋々納得しているように見えた。そして歩美は委員会の作業の
為に教室を出て行った。
「バレたか?」
「多分…平気。今は知られない方がいい」
「なんで?」
「今だから言うけど…歩美さ…今年の実行委員長の元カノなんだよ。
別れる時は3股でさ…」
「そうだったんだ」
竜也はちょっと遠い目をしている。
「竜也…佳代先生と連絡取ってる?」
佳代先生は去年の秋に教育実習に来た先生。
大人なんだけども…子供みたいな心を持っていた。
そんな先生に竜也は片思いをして…現在に至る。
まだ、想いは伝えてないみたいだけども…私達は竜也の行動から知っている。
普段の竜也は全てを公平に判断できるのに、佳代先生だけは公平に見えない。
「うん…会ってないけど…メールなら」
「佳代先生を文化祭に誘うんでしょう?」
「企画が通ればね」
竜也は頬を少しだけ染めて答える。可愛いなぁ…本人に言ったら殺されそう。
「お前…今…可愛いとか思ったろ?」
「いいえ、滅相もありません」
私は自分が可愛いから即刻否定する。延命は大切だよね。
「待たせたな。真美の睨んだ通りだな」
先生が書類の束を持って入ってきた。
「そうですか。見せて貰っていいですか?」
「あぁ、それとUSBにも移しておいた。竜也持ってろ」
「ありがとうございます。歩美が感づいてます」
「あいつの嗅覚は本当に敏感だな」
「えぇ、トラブルに関しては」
私と竜也は苦笑する。歩美はトラブルメーカー。
本人に意識はなくても、腹黒い発言で更に状況を悪化させる。
「…で、どうしたい?」
「まずは、企画の変更修正をしたいので、提出したものを回収します」
「1年の方の反応はどうでしょう?」
「模擬店の手伝いでも、できるのなら協力するそうだ」
「分かりました。…一応ですけど、修正案を作ってみました」
「竜也は見たか?」
「見ましたよ。決まる前から修正案を作るのかって呆れましたけど」
「いいじゃない、別に」
「生徒会の田中先生の方はどうでしたか?」
「合同と言うのは交流が活発化するからと大喜びだ」
根回しは順調みたいだ。
「…で、去年の首謀者は今年の委員長見たいだな」
「そうですね」
「よくもここまで、俺らがたてた企画を悪く改ざんしたもんだ」
そう、私達が必死になって作成した企画書は没になるように改ざんされていた。
採用されたクラスは…私達が作ろうとしたメニューを出していたのだ。
その話を聞いた時から…私は疑っていた。けれども…当時は証拠が掴めなかった。
終わったものには訂正は効かないから、今年の選考のメンバーを変更を
要求する予定だ。
「…先生はどう思う?」
「俺は…委員長を更迭すべきじゃないか?生徒会長は知らないみたいだが、
現在の会計はどうやら分かっているみたいだからな」
現在の生徒会の会計は私達と同じ2年生だ。このネタを使って自分達が
有利になるように動く事は容易だろう。
「これから…まずは何をしたらいいと思う?」
「そうだなぁ…まずは企画の修正ってことで一旦回収な」
「真美は…生徒会の先生に企画の一部変更を報告する事」
「分かりました」
「後は俺がどうにかする。絶対去年の二の舞にはさせないから」
「先生、頼むね」
私は竜也とハイタッチをした。上手くいった時は昔からやっている。
「なぁ、なんであいつが首謀者だと思った?」
「委員会の発足の時に…あの男が歩美に今年こそは企画が通るといいねって
いやらしい顔で言ったのよ」
「お前のその直感も凄いよな」
「それにあのクラスの飲食メニューがほぼ被ってたのも疑えたから」
「更迭した後の委員長は誰にするつもりですか?」
「…3年生は無理だろうな。ある意味で共犯だろうから」
「そうなると大変ですね。私はやらないよ。面倒くさいの嫌いだもの。
委員長だと売り上げが減っちゃうから」
「そうだよ。うちのクラスの料理長をやすやすと渡せませんよ」
竜也もそう否定をする。でも…家庭科部の恵美ちゃんがいるから私が
いなくてもいいじゃないって思ったりもするけど。
「恵美はダメだよ。弘樹が裏でいいって文句を言うぞ」
「…そうだね。こういう時にはダメだしするんだもの。恵美ちゃんの彼」
「恵美は弘樹と付き合ってるんだ…知らなかった」
先生は本当に知らなかったみたいだ。普段の二人は別行動だもの。
「中学からずっと一緒だそうですよ。弘樹が溺愛してるしな」
「うん、弘樹の視界に恵美ちゃんがいればいいから独占欲はないよね」
「い…や、お前達、それは十分束縛じゃねぇか」
先生は呆れたように言う。
「そうなんだ。先生、俺部活に行ってもいいかな?」
「後は俺が済ましておくよ。真美…お前も帰ったらどうだ?」
「どうしてですか?」
「昇降口に…お迎えがいるぜ」
先生は窓を見て、私にニヤリと笑いかけた。
「じゃあ、私は帰ります。また明日」
私は鞄と手にとって昇降口に向かって走り出した。
「哲!どうしたの?」
「嫌…昇降口に寄ったらお前の靴があったからさ」
「そっか。一緒に帰ろう。今日の結果は家に着いてからでいいや」
「なんか…慎重だな」
つい、さっきの事があって自然と警戒していた私がいた。
今は…哲に悟られてはいけない。
「他のクラスに知られたくないじゃない」
私は咄嗟に嘘をつく。嘘をつくのは良くないけど、優しい嘘は
ついても許されると思うの。
「お前…委員会いいのか?」
「うん?ちゃんと仕事はしてるよ。企業回りはしてないけど依頼状は
もう発送してあるもの」
「お前は大変な事もけろりとやってのけるから…俺は不安だぞ」
「大丈夫です。無茶はしないよ。安心して」
哲はさり気なく私を気にしてくれる。
「お前は俺の大切な…」
哲はそう言って黙ってしまった。その先を聞く勇気がまだない。
「大切な…?」
「俺の幼馴染。一つ学年の上のな」
なんか…肩透かしに合ってしまう。私の期待する答えはくれないんだ。
少しだけ、少しだけ期待していたのに…。
「そうだね。そう思ってくれる哲には感謝してるよ」
でも…隣にいてもいいんだね。幼馴染としては。少しだけ嬉しい。
私達の関係が劇的に変化するのは半年後だったりするのだが、それは後の話。
どうやって調べたかというのは…想像にお任せ下さい。
案外まだ合鍵持っていそうだよね…。




