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忙しい、あぁ忙しい 当日午後

世間で言うランチタイム。私達の蜜月喫茶も盛況だった。

開店から1時間で食券は完売。食堂を使っているから席は多いんだけど

愛情こもった今日のお昼セットがメーンで店が展開してるから

回転率は下がっている。一応、11時から13時までの時間限定で

予約制をとっている。予約と食事をセットにしている。時間は30分以内。

そうしないと、待っている人に申し訳ないから。

この予約制も…クレームになるかと思ったけれども、今のところはない。

クラスの当番を縫って食事に来る在校生のだけの優遇措置。

長時間いるのは一般のお客さんなのだ。

第一、在校生には在校生ならではのイベントも行われている。

参加するのは本人の自由だけれど、全クラスのスタンプラリーを押すと

生徒会から図書券が貰えるのだ。

これだけ込んでいるとスタンプラリーどころではないけど、私達の

クラスは全員で参加予定。

図書券ゲットで皆で使える問題集を買おうと決めたのだ。

ちなみに参考書は去年のスタンプラリーで既に買ってある。

お金が使えるようで使えない高校生。皆で纏めればいろいろ買える。

ちなみに図書券等の管理は加藤先生がしてくれている。

去年の残りもまだいくらか残っている。



文化祭の準備でそんなことを1年生に話したら、1年生も同じことを

実行するらしい。とりあえず、皆で参加すると意気込んでいる。

スタンプラリーは後夜祭前までできるから、後片付け中に皆が一斉に

参加するのが毎年のお約束だったりする。

私達はその時間で打ち上げを考えていたから、とにかく休憩時間で

済ませておこうと考えていた。

最悪、忙しければ、1年の教室で待機している誰かに頼めばいいや。



「真美…足りないものある?」

「多分…。出汁がなくなったらどうしたらいいか、恵美ちゃんと聞いて」

私はカセットコンロで出汁巻き卵を焼いている。

出汁は多めに作ってあるけれども…売れていて少し追いつかない。

一応、午後からの買いだしで卵を追加でお願いしてある。

明日もフレンチトーストもかなりの量を使うからだ。

「真美…手伝うか?」

哲が私の隣に寄りそうように立つ。

「コンロは2台あるから…やってみる?」

「最初は出来ないけどな…厚みが出来たのからやってみる」

哲が少し不安そうだったけど、やってくれるというので任せてみる。

最近は私と一緒に夕飯の支度をするときもある。キャベツの千切りは

私よりも細かいかもしれない。手先が意外と器用なのだ。



「えぇ…。哲君が卵焼いてくれるんだったら…私も食べたい」

「私も…」

哲は私を手伝うつもりだったらしいけど、販売促進に繋がってしまって

更に忙しくなってしまった。…ごめんね。哲。

そろそろ13時が近くなる。私達の店は食事がメーンの店だからそろそろ

客足が落ちて来る時間帯になる。

「じゃあ、私着替えて来るね」

店員係の一人の洋子ちゃんが更衣室に向かって行く。

そう、裸風味エプロンタイムの始まりなのだ。

客足が減るであろう13時から閉店時間の15時30分までは30分間隔で一人ずつ

前から見たら裸風味エプロンになることになっている。

男子の方は…ネクタイを外して、シャツのボタンをはずすことにした。

大胸筋のチラ見せだって…絶対に需要はあると思うの…という私と一部の

女子の意見を採用していやいやながらとりあえず哲と竜也がやってくれる。



チラリとお茶コーナーに見る。今は諒君が一人で接客中。今日は比較的に

暖かいから、そんなに忙しい訳ではないようだ。無駄のない作業で的確に

こなしていく。

お客様にお茶を出すときも、皆で決めた接客用語をきちんと使っている。

-今日も頑張ったんだね。お茶飲んで休もうよ-

口元は笑っているけれども、顔全体で笑うことはない。

諒君がそんな顔をするのはただ一人だけ。さっきその相手のりおちゃんが

さつきちゃんと連れだってやってきた。

りおちゃんは、私の出汁巻き卵とおにぎりと諒君のお茶。

私からほど近い席にいたりおちゃんに語りかけていた言葉が違った事を

敢えて私は注意しなかった。

だって…諒君ってば、-りお、ちゃんとお昼は食べような。頑張れ-

と言った後に、りおちゃんにしか向けない笑顔を顔に張り付ける。

あの顔見せられたら、僕はりおちゃんが好きですって宣言しているだけなのに。

りおちゃんの接客が終わったらいつもの表情で淡々と接客している。



「真美さん、真美さんは森ガールテイストなんですね」

私はベージュのコットンワンピースをさらにパニエを合わせてふんわりと

させている。普段はストレートの髪もクラスの子にいじられてふんわりカールに

なっている。確かに新興住宅地にいそうな若奥様テイストになっている。

「真美さんの卵焼きおいしいですよ」

「あら、ありがとう。でも基本に忠実に作っているだけよ」

「本当に?今度教えてもらおうかな?」

「私の家より諒君の家で皆で作った方が良さそうね。諒君も相当おいしい

ご飯つくるものね。和食は苦手だって言ってたけど」

「なんだ?真美。リョウのヤツそんなのこと言っていたのか?」

「うん。文化祭が落ち着いたら、4人で諒君の家でご飯作る約束したの」

「4人には俺も入ってるよな?」

「当たり前でしょ。当たり前すぎて言うの…忘れたわ」

私は哲に謝るが、哲からは軽くゲンコツがふってきた。

「…痛い。哲、時間よ。ネクタイ…外してあげようか?」

「その演出は計算か?」

哲は意地悪く囁く。

「当然。疲れたでしょ?ネクタイ?」

私はにっこりとほほ笑んでから、哲のネクタイに手をかけた。

その光景を見ていた一部の人から、きゃあという声が上がった。

「そうだな。外してくれよ」

「いいわよ。ちょっと屈んで?」

私は哲にお願いして、ネクタイを外す。

「はい、どうぞ」

外したネクタイを哲に渡す。哲は私達の後ろにあるハンガーに無造作にかけた。



ほどなくして、洋子ちゃんが戻ってきた。洋子ちゃんはチューブトップと

ホットパンツ。エプロンの効果は絶大で、ランチタイム以上に店が混んでしまった。

オプションで店員との写真撮影の回転は凄い勢いで進む。

在校生は、とりあえず翌日に渡すことで納得して貰い一般客はプリンターで

その場でプリントする。その場プリントは一枚100円。翌日は半額の50円。

在校生は、オーダー表にクラスと名前を書いて貰う。

14時からは洋食メニューの準備が始まる。家庭科室は大変そうだ。

恵美ちゃんにメールを送信して確認してみる。

-洋食の準備は明日の朝がメーンだから大丈夫だよ。今日の料理はほぼ完売できそうよ-

恵美ちゃんから嬉しい返信が戻ってきて、私達はそれを回覧して皆で喜びを共有する。



「お前らな、客を煽るなよ」

竜也が呆れた顔をして私の側にきた。怒ってるわけじゃない。

「少しは演出をしないと困るでしょ?」

私は頬笑みを絶やさずに竜也に答える。

「お前はやる時は徹底しているからな。任せるわ」

自分が巻き込まれたくない竜也は早々に逃げ出した。

私は時計を見る。そろそろ…私の当番時間だ。

「じゃあ…ね」

「お前もやるのかよ」

「うん。胸のチラ見せさせてるのに、私がしないわけいかないわ」

私は手をヒラヒラ振りながら更衣室に向かって行く。

まさか…この後パニックになるとは思わなかった。



「お待たせ」

私が店に戻ると…さっきまで男女にが程良かった店内がかなりむさ苦しくなってる。

…ついにバレた訳か。先生達からのクレームはないみたい。ちゃんと服を着てるからね。

「おぉっ、真美ちゃんまで…そんな」

「俺…もう死んでもいい」

なんか訳分かんない事言ってる男子がいる。にっこりとほほ笑む程度でスル―しとこう。

その後、店は閉店するまで、男子だらけの暑苦しい店になってしまった。

まぁ、それだけ売り上げは増えた訳なんだけどもね。



「本日はこれにて閉店します。ご利用ありがとうございました」

-気をつけてね。いってらっしゃい-

最後のお客様をお見送りして、今日の作業は終了。明日に向けて準備する。

それと共に、今日の反省会を簡単にする。

問題は裸風味エプロンタイムということになった。

明日はランダムに出していくことに。ただし、フレンチトーストを焼き続ける

私は、一日裸風味エプロンになることにした。寒い時間はロングのカーディガンか

男性もののパーカーを羽織ることに。

今日の食材は全て完売だった。反省会用で食べるお握りを作る為にご飯を炊く位に。



1年生が帰った後に、2年生だけで明日の打ち合わせ。

当日調理がとにかく多いので、男子の店員の比率を増やすようにする。

意外とワイシャツチラ見せの効果もあったみたいで、ワイシャツ店員を増員する

事が決定した。私達の目の保養にもなるわけだ。

最後に、恵美ちゃんと調理の最終確認をしておく。

明日用のクッキーは全て焼き終わっているとのこと。後は、ドリアとグラタンの

ソース作りがメーンになる。

夕方、千沙子さんの会社から明日の食材が搬入された。今日の食材で未使用として

返品するものはない。貰った食材を家庭科室に閉まって鍵をかける。

「怖い位に売れたけど…どうして?」

「校長先生がおいしいって言ったから」

恵美ちゃんが簡潔な答えを導いた。そうなんだ。確かに校長先生はご満悦だったっけ。

「それにね…完売ってなったのは、家庭科室に直接買いに来る先生が多発したから」

「なんで?」

「今夜の夕食にしたいって、切干とか、昆布とか。ちゃんとお金は貰ったよ」

「恵美ちゃんは、小銭が入った封筒を見せる。それなりの額が入ってそうだ」

「明日はとにかく忙しくなりそうだからね」

「分かった、明日も同じ時間で準備なんだ。私は何をしとこうか?」

「それなら、チキンドリアのソースとチキンライスと野菜を切って貰っていい?」

「エビは今は解凍してあるよね?マカロニは10分茹でるやつでいいの?」

「明日は何を持ち込む予定なの?」

「予定ではキッチンタイマーを持ち込むよ。明日はホウレンソウがくるよ」

「ベーコンは1キロ頼んだから大丈夫」

恵美ちゃんは私を見て笑う。

「何?どうしたの?」

「一番近い人が一番働いてるね」

「そうだね。でも来年はこんなことしてられないよ。推薦組は文化祭不参加でしょ?」

「でも…また校内オリエンテーリングやりそうだもの」

恵美ちゃんはにこやかに言う。私の進路は竜也達と同じ教科を選択するからありえるな。

「やりそうだね。入試問題100連発とか言ってさ」



「今日の売上…10万近いんだって」

「そっか。でも仕入れを落としたから単純利益が6万位かな」

「そうだよね。原価計算したら…まだ高いよね」

私達は溜め息をついた。今日はまだ仕入れを下げれるだけ下げてこの結果なのだ。

明日の方が仕入れ額が大きいから少しだけ不安になる。

「明日は全部売り切りだからさ。他に作れるものがあれば作って売っちゃおうよ。

味は保証する。どこのクラスにも絶対に負けないから」

「そうなの?」

「うん、うちは家庭科部が調理しているようなものよ。真美だって、諒君も料理が

できるんだから。あるクラスの焼きそばは油とソースの味しかしなかったわ」

恵美ちゃんは他のクラスの商品を一通り食べたみたいだ。

「クレープも粉っぽさが最後まで残ってたしね。サンドイッチはまともだけど

パンのパサツキに管理の杜撰さが見え隠れしてる」

他のクラスの状況をしっかりと把握もしている。

「その点、うちのクラスは皆でチェックしていたからそういったトラブルは一切

怒らないから。あるとしたら…店員のサービスを勘違いされた時かな」

「言いたいことは分かってる。そこは竜也だって分かってるよ」

「そうだね。そろそろ弘樹が迎えに来そうだから、終わりにしようか?」

「弘樹君は今日は部活?」

「うん、子どもサッカー教室だって。可笑しいの」

「じゃあ、明日はワイシャツ組かもね」

私は少しだけ含み笑いをした。

「何?その楽しい企画は」

私は恵美ちゃんに急遽始めた企画を話した。

「私その姿見たい。チラ見せ最高!!」

「恵美ちゃん…キャラが違う…」

「えっと…その…あのさ…弘樹に見えそうで見えないキスマークつけとく?」

「ちょっと、それは…」

「演出ってことでいいんじゃない?ウフフ…楽しみ…」

もしかして恵美ちゃんって…そういう人なのかしら?

少しだけ自分と同じ腹黒い香りがした気がする。

そんな話をしながら、私達は帰る支度を始めた。



「終わったか?」

廊下に出ると、ちょうど弘樹君と哲がいた。

「あんな恥ずかしい事明日もやるのかよ」

哲は少しだけうんざりしている。そりゃそうよね。散々いじられたんだもの。

「我慢…してね?」

「こうやって見ると、真美が尻に敷いてそうだな」

弘樹君が元も子のない話を振ってくる。

「やめなさいよ。弘樹。困ってるでしょ?」

「悪い、でも…交際してますって宣言している奴らよりも自然だぞ。お前ら」

「それは私も否定しないよ。深いところで繋がってるんだよ」

「深い所?」

恵美ちゃんの発言に哲が不思議がる。

「好きだろうがそうじゃないだろうが、互いが信じあっているから。

全てを任せられるんじゃないの?」

恵美ちゃんの言う言葉に私は納得する。哲が私をどう思っていようが、

私が哲を信じているのは事実だ。その気持ちがあればいい。

「そうだね。なんとなく分かった気がするよ」

私は恵美ちゃんに笑いかけた。ありがとう…恵美ちゃん。


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