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開店前の準備をしましょう 当日朝

流石に、10月の末の朝は冷える。私は久しぶりにこの時間に自宅を出る。

今日は文化祭当日の朝6時。ちょっと冷えるから、薄手のコートを羽織って

一台の車が来るのを待っている。

「おっ、待たせたな。じゃあ、学校か?」

私が待っていたのは、親戚のおじさん。えっと父のなんだったけ?って

位に薄い血縁なんだけども、親達は仲がいい。

今回の企画で規格外の野菜を格安で譲って貰ったのだ。

昨日までに、ニンジンと里芋とジャガイモと大根と30キロのお米を貰っている。

今日は最後の青菜を待っていた。

おじの運転する軽ワゴンの助手席に乗り込む。

「ごめんね。おじさん、学校のそばのコンビニに寄って貰ってもいい?」

「構わねぇぞ。だったら、これで缶コーヒー買ってこいよ。お釣りで欲しいものを

買えよ」

おじさんは私に千円札を渡してくれた。私はコンビニ向かって走り出した。

「ありがとね。そうそう、青菜のお金はいくらになるの?」

「段ボール2箱で500円でいいぞ。足りなければ電話しろ?10時過ぎれば家にいるから」

足りないって事は…ないと思うけどなぁ。

「それと…こっちも規格外だから、俺からの差し入れな。100個は入ってるから」

ビニール袋の不安定そうに入っていたのは…卵だった。これほど嬉しいのはないかも。

「おっと、学校に着いたな。じゃあ、校門に泊めて昇降口までは運んでおくか。

そこからは自分でできるか?とにかく頑張れよ。」

おじさんは昇降口の前に段ボールをおいて私を置いて車は走り出した。



とりあえず、段ボールを運び入れる為に警備さんに昇降口を開けて貰う。

7時までは先生が来ることはなくて、民間の警備さんがいらっしゃる。

「すみません…。運んで貰って。家庭科室の前でいいんで。ありがとうございます」

警備さんに運んでもらったから、あっという間に搬入は終了。

職員室に行って、家庭科室の鍵と生徒会室の鍵を借りる。

まずは家庭科室の鍵を開けて、大鍋に仕掛けてあるだし昆布の状態を確認する。

冷蔵庫から、昨日使っただし昆布の昆布を淹れたバットを取り出して、

昆布を収納する。この昆布は細かく切って、昆布と大豆の煮物を作る予定だ。

だいずは昨日の帰る前に水に浸してあるから、恵美ちゃんが来てから作業で十分。



一度家庭科室の鍵を閉めて、私は生徒会室の鍵を開けた。

本来ならば開ける必要はないんだけども、クラスの準備との兼ね合いで

了承して貰った。鍵を開けるとすぐにある-佐藤さんへ-と書かれた紙がある

段ボールが目にとまった。その段ボールを一つ持って私は生徒会室を出て

再び鍵をかける。

昇降口に置いておいた、今は使っていない机と椅子を入場ゲートの側に

左右に二つずつ並べる。その後に、生徒会が準備してくれてある

受付作成キットを取り出す。

受付は左右2か所。右側は主に一般のお客さん用。

左側は学校関係者と卒業生用。記入して貰う資料は、左側の方が多い。

それをバインダーに鉛筆を挟んで名簿が見えないように机に置く。

それから、全校生徒と職員に配った残りのパンフレットを各机の横に

一箱ずつ置いておいた。ここ数年はパンフレットが不足しているので

今年は200部増やした。1日目の午前中に学校説明会を学校が始めた結果かも

しれない。足りなくなったら、印刷室で印刷することは決めてあるし、

作業する人も決めたある。やってくれればねってのが本音だけど。

作業終了した事を私は文化祭の実行委員長と生徒会長にメールを送信する。

-ゲート横の受付の設置終了。オープンまでは家庭科室にいます。佐藤ま-

業務メールの時は私は佐藤まと自分を表現する。

実は…私の学年には佐藤まみは二人いる。一人は真美の私。

もう一人は7組の麻美さんになる。きっと同じクラスにはならないと思う。



再び家庭科室に戻った私は、早速恵美ちゃんにメール報告を入れる。

-今から出汁の鍋に火をかけるから。それととりあえず、一升分のご飯が

7:30にスイッチ押せるように用意するね。ゆっくりおいで-

私はメールを送信して一升分のお米を洗いはじめた。

水を切って、少し休ませる。時間にして7時。おじさんが早く来てくれて

本当に助かった。

出汁の鍋にだしパックに入れた鰹節を用意する。昆布の出汁が沸騰したら

入れればいいから私は椅子に座った。

携帯を見ると恵美ちゃんからの指示メールが入った。

-青菜を洗っておいてくれてもいいよ。それと昆布を切って、大豆の水切りも

よろしくね-

優先事項に青菜の煮びたしが入った。そういうことは今日は暑いってことかな。

冷やして冷蔵庫に保管したいんだろう。



文化祭当日だけに、いつもなら7時過ぎには来る運動部も流石に今日は

朝練習をする部活は流石にないようだ。

シーンとした校内では私の足音と家庭科室の音が響いている。

もう少ししたら、誰かがやってくるだろう。その前にコンビニで買った

サンドイッチと缶コーヒーを食べることにした。

味気ないけれども…それはそれでいいかなと思う。

今日は売上貢献の為に、今日はお弁当を作らなかった。

哲はその事になんか不服そうだったけど、今日の夕ご飯を食べさせる約束も

したから多分なんとかなるだろう。今夜は何にしようかな。



「おはよう。真美どこまで終わった?」

恵美ちゃんが足早に家庭科室に入ってきた。

「とりあえず、カツオ昆布出汁は完成。青菜は洗って水を切った状態。

ご飯は今一回目を炊いていて、二回目を洗う所…ってカンジ?」

恵美ちゃんは持っている工程表にチェックをしていく。

「助かったよ。ここまでやってくれてあると明日の分の仕込みの開始が

早くできるからね。じゃあ、次は抹茶のシフォンを作り始めようか?」

「言うと思って、粉は計ってふるってあるし、砂糖もはかってあるよ」

私はちょこっと時間が開いていたので、恵美ちゃんの行動を少しだけ予測して

前倒しで行動していた。

「それと…これ使おうよ。家にあるの2台持ってきたよ」

私は紙袋から、電動泡立て機を取りだした。時間の効率化を計るには必須だと

思ったからね。

「助かるよ。じゃあ、私がケーキを作るから、真美は青菜の煮びたしと

昆布と大豆の煮物作れる?」

「いいよ。トン汁の用意もしないと。豚肉とゴボウのササがきしてあく抜き

しないとね」

「じゃあ、最初に材料を全部切って用意しようか?」

「それでもいいよね。開店10時だからちょうどいいかもしれないね」

廊下の向いの私達の教室に誰かが入った音がする。もう少ししたら皆が

やってきて慌ただしい二日間が始まる。もう泣きごとを言っても誰も

助けてはくれない。

「頑張ろうね…真美」

「うん、恵美ちゃんもよろしくね」

私たちは互いに作業を進めていった。

ちょっと前まで静まり返っていた学校が、一気に浮ついた空気を身にまとう。

私は気を引き締めないといけないと思って。両頬を軽くパチンとたたいた。



「おーい、佐藤。入っていいか?」

家庭科室の入り口で誰かが呼んでいる。けれども手が離せないから

「こっちに来てよ。ごめんね」

声の主に話しかけても、鍋の中の煮物に集中している。

「受付の準備サンキューな。後、不足が出た時のパンフレットの製作

手順をマニュアル化してくれて助かったよ」

「委員長、印刷は生徒会の協力を依頼してあるのでお願いしますね」

私に用事があったのは実行委員長。受付の確認だったようだ。

「お前…オープニングは?」

「きっと…ここで出汁巻き卵の準備してる」

「なんだよ。お前に任せようと思ったのに」

実行委員長は誠実な人なんだけども…人前で話すのはダメなんだよね。

それに私は後夜祭の仕切りをやれって3日前に言われたばかりなんですが。

「だったら…後夜祭の仕切りやる?」

「いえ…結構です。それよりもおいしそうだな。本格的な和食なんだな」

「そうよ。ヘルシーを売りに食物繊維を多く取れるように意識したの」

「だったら…食券を前に買うんだっけ?」

「原則的にね。炊き込みご飯とおにぎりと…トン汁は現金でも良かったっけ?

恵美ちゃん?」

「そうだよ。急遽それだけは変更したんだよ。真美が休んだ時に」

「…だって。委員長」

「そうか。お前開店時間中はどこだ?」

「私は二日間とも終日食堂。今日は出汁巻き卵を実演して、明日は

フレンチトーストを実演するの」

「お前らか?昨日マルシアで大量に卵と牛乳と買ってたのって」

「…多分ね。今日も行ってもらうけど…クレームが出たの?」

「逆、さっと来て、さっと帰ったらしい」

「うん、先生が同伴の買い物だもの。自転車で卵は怖いじゃない」

「…成程。じゃあ、出られるならオープニング来いよ」

「期待しないでね」

私は軽口を叩いてから再び作業に戻った。



「おぉ…日本の朝ご飯だ」

家庭科室の匂いにつられてやってきた男子が口々に言う。

「あら?その日本の朝ご飯を今日食べた人っているの?」

恵美ちゃんがすかさず質問をする。誰も答えない。

「だから…購買ターゲットを成人男性に絞っているのが

今日なのよ。限定10食の焼き魚付き定食は誰が食べるのかな?」

「校長先生が予約って加藤先生に言ったみたいだよ」

「マジかよ」

「手が抜けねぇよ」

「そういえば、食堂のおばちゃん達も10時に食券を買いに来るって

言ってたぜ。昨日の試食でうまかったって」

私達は、店の事は特に大々的に広告らしいものをしていないんだけども、

尾びれ背びれがついて大変なことになりそうな気がしてきた。

「真美…オープニング行ってもいいよ。オープニングがすべる訳には

いかないでしょう?」

「恵美ちゃん」

「そうですよ。真美先輩。家庭科部の底力を見て下さいよ」

恵美ちゃんの横でサポートに徹しているのは家庭科部の女の子。

最悪、調理班が間に合わないと、手が空いている家庭科部の女の子が

ヘルプで助けてくれるそうだ。やっぱり恵美ちゃん、抜かりがない。

「じゃあ、甘えちゃおうかな」

私は恵美ちゃんの好意に甘えることにした。



「おはよう、真美」

「おはよう竜也」

気がつくと竜也が私の横にいる。竜也も…ソムリエエプロンをしている。

衣装の方は、ワイシャツに学校指定じゃないネクタイを締めている。

「俺たちだって考えたんだぜ」

家庭科室の扉を見ると、衣装に着替えた男子がいた。

竜也の様にワイシャツだったり、ポロシャツだったり。どこから入手したのか

作務衣までいる。そして私は気がついた。哲が眼鏡をかけている。

普段はコンタクト使用なのに。

「ねぇ…二人ともネクタイは誰から借りたの?」

「借りてねぇよ。使ってもいいから買ってきた。似合うか?」

哲が私の耳元で意地悪く聞く。それは反則。カッコよすぎて見ていられない。

「お前も着換えろよな?オープニングの店舗紹介は店員チームは衣装で

参加が決まったから」

嘘。そんなこと…私聞いていないよ。

「悪い。俺が伝えなかった。お前今日が早いの知ってたから」

竜也が慌てて説明する。確かに昨日言われても私は困っていたと思う。

「顔色悪いな。今日はメークして接客しろよ。新婚さんはスッピンでなくて

いいんだろ?」

哲は私の化粧ポーチを手渡した。どうして彼が持っているの?

「おばさんが、パートに行く前に俺に渡してくれた。ちょっと顔色が

悪いからって、お前ちゃんと休めよ…いいな?」

「分かったから。ちゃんと休むから。哲ありがとね」

そう言って、私は哲の袖を引っ張る。

「ん?なんだ?」

「かっこいいね。衣装。ドキドキしちゃうよ」

もう、自分の気持ちを隠すことは昨日でやめたから思った事を正直に口に

する。多分顔は赤いかもしれない。

「お前も可愛くなるんだろ?そろそろ着換えろよ」

「あぁ、うん。分かった」

私は作業が終わったので、続きは恵美ちゃんに託した。



「ちょっと待った。真美はこっちの衣装を着て欲しいんだ」

紙袋に入った衣装を手渡される。この紙袋…私は見覚えがある。

「哲は…こっちな。いいな着替えるんだぞ。二人ともこれは命令だから」

竜也が滅多に使わない命令を口にした。これを言われたら…従わないと

後が怖い事を私達は十分は程知っている。

「はい」

「分かりました」

私と哲は諦めてお互いに苦笑いしながら見合っていた。

「真美…それアレでしょ?メイクもあるから準備室で着替えようか?」

恵美ちゃんが小悪魔チックな笑みを見せる。やっぱりアレ…か。

恵美ちゃんが作ったなんちゃってウェディングドレス。

軽くめまいがしてくる。すみません、明日の命がなくても逃亡したいです。

「ところで、なんで哲となんちゃって結婚式まがいをするの?」

「ビジュアル的にいいから。新婚みたいな初々しさがあるかなって」

「それ…いつ考えたのよ」

「真美が自宅に帰った時に。2年生皆で決めたの。既成事実を作ってしまえって」

もっと頭が痛い展開になっている。どうしろって言うのよ。

「皆分かっているの。二人の気持ち。文化祭でじゃなくてもいいからね…

二人じゃないとダメなんだってのをアピールしておこうかなって」

もう、私の意思でなくて、集客アップと割り切ろう。

「分かったよ。この祭りの楽しむよ。皆…覚悟はあるのかなぁ?ウフフ…」

「真美?新婚さんはそんな腹黒い微笑みはしません。明日まで封印」

神様…ここに悪魔に魂を売った集団がいるようです。助けて下さい。



「凄かったねぇ。一組合同チームの、行ってみたいね」

「あのフリフリエプロン可愛かったな」

「飯が二日間で違うんだって。まずは食券をゲットしないとな」

「男の子がお茶を入れてくれるサービスもあるんだって」

「隣でコスプレ写真館もあって、忙しくなければ写真も一緒にできるって」

私達の発表の後の体育館は…異常な反応を示していた。

さいしょから、私と哲のなんちゃって結婚式から始まって、コンセプトと

システムの説明。最後は店員チーム皆が-早く帰ってきてね-という

必殺文句…。えっとうちはメイド喫茶じゃないんだけど…いいか。

つかみはオッケーみたいだからいいか。ステージの袖で哲と少しだけ話をする。

「恥ずかしかったね」

「あぁ、こんなことをしたら交際宣言と一緒だな」

「それでいいの?哲は?」

「ちょっと嫌だな。ネタにされたくはない」

「だったら…真美のその日が来るまで待っててもいいか?」

「うん…我がままでごめんね」

私は哲に笑いかける。哲は目が細くなくなりそうな位優しい目をしてる。

「かわいいな。いつかは…なろうな」

ちょっとステージが五月蠅くて肝心なことが聞こえなかった。

「まぁ、いいか。本当にやるのか?裸風味エプロン」

「うん、写真館での撮影はNGだけども、教室で撮影だとプラス100円の

オプションにしたの」

「お前ら…女を売り物にするなよ?」

「だったら…なんで反対しなかったの?」

私は当たり前のことを聞いていく。

「それは…その…男のロマンって言うか…その…」

やっぱり…。そんなものと思っていたよ。

私は苦笑しながら、体育館のはじでステージを眺めていた。

これが終わると販売開始になる。急いで衣装に着替えないと。

私はそんなことを想っていた。


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