嵐の前の静けさ 前日午前
「明日は当日だから、今日の準備は取りこぼしのないようにな」
「はぁい」
今日のHRはなぜか食堂。皆で再確認した方がいいということになったからだ。
「今日は前にも行っていたけど食堂の使用許可は2時からね」
「了解」
「写真館のセッティングが終了なら食堂のセッティングをお願いね」
「いいよ。写真館のチェックもお願いな」
「展示班は申し訳ないけど、今日はたっちぃと一緒に消耗品の買い物。
食材の方は、自転車がある人は自転車で9:45にマルシア前集合。
先生が同伴するから、先生の指示通りに食料品を買うように」
「はいよ」
「女子は…事前打ち合わせの通りに準備を頼むな。使用できる冷蔵庫は
確認してあるか?」
「完璧だよ。2台貸してくれるって」
「そっか。もし出来るのなら接客練習したいから明日の当番の子の分の
試食を用意できるか?」
「メニュー外でもいい?結構ギリギリで食材用意しているから」
「接客練習だから同じでなくていいぜ」
「分かった。練習は…何時にする?」
「そうだな。4時に食堂で。お茶係も同時進行な。それと今日のお茶は
お茶係のリハーサル兼ねるから。10時とお昼は提供させてくれ」
竜也から急なリクエストが来たけれども…どうしてくれようか。
「それじゃあ、各自の今日の予定はリストアップしているから各自
把握して行動するように。解散」
竜也の言葉が終わって、皆が一斉に動き出す。
各自の予定がリストアップされている。その人数79人分。
この作業は誰がやったんだろう?私はやっていないんだけどな…。
「真美…私が作ったの。女子だけどさ…調理できないから」
歩美が申し訳なさ程度に呟いた。
「何言ってんの。皆の行動を把握しているのも重要な仕事だって」
私が答える前にたっちぃが歩美に語りかける。
「そうそう。歩美にできるのは、買い物と皿洗いもあるからね」
「それよりもあんなにかわいいポスター書いたんだからいいの」
そう、ポスター作製は歩美に任せきりだったっけ。
本人も直前まで見せてくれなかったから出来上がった時は
私達も驚いた。同じ絵は一枚もなかったのだから。
「歩美は今日は何をするの?」
私は歩美の予定を聞いてみる。今回は完全に別行動だから。
「途中でゲートのチェックに行くけれども、基本的に皆の情報を
集約して明日の各自の行動計画書を作成して職員室でプリントかな。
それと会計報告書の作成。領収書を見やすくまとめたいしね」
歩美は竜也に志願して完全裏方に徹するみたいだ。
でもね、こういった作業にはそういう役割をしてくれる人がいるのは
とっても嬉しい。全ての作業が終わるスピードがけた違いだもの。
多分歩美の頭の中では2日目の各部門の片づけの開始時間が計算して
いる…そんな気がした。最初は、多分家庭科室と冷蔵庫の撤収だろう。
「まぁ、歩美に任せておけば問題ないから…よろしく」
「何か欲しいものがあれば、メールして。買い物班に手配をするから」
「了解。…ねぇ、最近加藤先生との距離が近くない?」
私はちょっと気になったから聞いてみた。歩美の片思い程度で済むなら
それでいいと思うけれども…やはり問題だよねぇ…。
「真美が考えるようなことはまだ何もないよ。気楽な相手なだけよ」
歩美がそういうのなら、その言葉を信じよう。
「じゃあ、こちらも準備をしましょう」
家庭科室にいる歩美とたっちぃ以外の女子チーム。
「接客練習のメニューはどうする?」
「煮物は少しずつ貰おうか。青菜の煮びたしは…家に葉物野菜があるから
ちょっとだけ貰ってこようね」
「いいの?」
「それってどうよってのもあるけど、残ったら家の夕飯にするよ。
竜也の無茶ぶりがあると思って、少し多めに備えておいたから」
「焼き魚も家にあるのを持ち込んでもいい?鶏肉は味噌漬にしたのが
あるからそれも出せるよ」
「それって…真美先輩が普段からしているんですか?」
「えぇ。中学3年の9月からは夕食は用意しているよ。今は母よりも
私の方が冷蔵庫の中身は知ってるくらいだし。うちも共稼ぎなので」
「真美のお弁当は本当に凄いよね。しっかりと栄養バランスがいいし」
「そんなことないよ。私どちらかというと太りやすいんだ」
「この体のどこが太りやすいんですか?」
皆は私の努力を知らない。知っているのは、幼馴染だけ。
「元々体操をやっていたんだ。太りやすいからなるべく時間をかけて
食べるようにしているの。なるべく固いものを取るようにしてる」
「今度教えてもらいたいよね」
皆の手が止まっている。
「さあ、ドンドン支度しちゃおうね。食堂の冷蔵庫は13時から
使えるようにしてくれたから。でも試食したいんだって」
「恵美ちゃん。食堂用も調達してくる。家には11時に戻るから」
「今日のおやつはおにぎりにしようか?私達も練習になるから」
恵美ちゃんが思いついたように呟いた。
「じゃあ、竜也君に相談してみるね」
手が開いている子が竜也に連絡する。
「了解だって。食べた分は皆から打ち上げ代金の資金にするって」
「じゃあ、一人100円にしておく?」
私は恵美ちゃんに聞いてみる。去年は確か一人100円でジュースとお菓子と
更に残金を払ってカラオケパーティーだったことを思い出した。
「じゃあ、そこのところは確認しておいてね」
私は下拵えが終わったので手を洗った。そろそろ家に食材を取りに行くか。
「恵美ちゃん、ちょっと準備室来れる?」
私は恵美ちゃんを呼び出した。
「何?真美?」
「えっとね、ご飯のことなんだけども」
多分私が家に戻っている間にお米を洗うだろうから。
今回使うお米は、私の親戚から分けて貰ったもの。昨日精米したてのものを
学校に運んでもらった。
「そういえば、お金払ってないよね」
「それはうちが親戚から一括で払う中に入ってるから」
「…で竜也は、経緯は知ってるの。清算方法は決めてなくて」
「そっか、文化祭が終わってからでもいいかなと思って。収支がを見てから
でもいいと思ってる」
「だって、運んだの30キロだよ。残ったのは私が持って帰ってもいいかなって」
「分かった、今は特に考えないでおく。使った量は控えておくね」
「それともう一つ。今年の新米だから、炊くときに水を控えて、普通に炊くと
おじやになっちゃうから。恵美ちゃんにしか頼めないからさ」
「分かった、ご飯だけは私が管理する」
「じゃあ、お願いね。今日は歩き?」
「家までは。学校に戻る時は自転車使う。新米食べるのに、ふりかけ適当に
持ってこようか?」
「いいの?」
「いいわよ。お昼買う子もいるでしょう?今からならお昼休みに炊けるよ」
「女子だけって事でいいか」
「うん、結局家庭科室使うのうちの企画だけだから」
「そうなんだ。やっぱり」
「うん、他はすべて軽食で逃げ切るみたいだよ」
「ふぅん。明日は青菜の煮びたしを作ったと同時に抹茶シフォンと黒糖クッキーを
焼かないといけないからね」
「結構大変だよ?もう少ししたら卵と牛乳が一気に来るからね」
「バターは?」
「千沙子さんから昨日届いたからうちの冷蔵庫に入ってる。
千沙子さんの所の仕入れは未使用は今回は返品できるようにして貰ったの」
「どうやって?」
「パンフレットの企業広告乱の無料使用と家庭科で使う食材の仕入れで」
「そんなことやっていたの?」
「もちろん。どっちも損をしない方法はこれしかないからね」
私は恵美ちゃんににっこりと笑いかけた。
「それじゃあ、私は帰るから。よろしくね」
忙しくなったけれども、私達は加藤先生から言われていた。
こんなのはまだ嵐の前の静けさだと言う事を




