地味でもいいじゃない。和食なんだもの
「皆が気になるメニューをそろそろ決めようかと思って」
1年生と合わせて何度となく行ってきた企画会議。
既に、内装班・エプロン班・展示班は作業を始めている。
今日はメニューを決める打ち合わせだ。
私は家庭科室にあるランチプレートを借りる予定で企画してる。
これは実行委員会の審査も通っているので、問題は全くない。
メニューの方も、二日間で内容を変える事も承認されてる。
洋食の様は思った割にすんなりと決まったんだけども…。
「卵焼きは必須でしょう?」
「そうだな。後、青菜のお浸しと切干大根」
「なんか…地味じゃない?」
「うーん、イメージは昭和の朝ご飯ってカンジ?」
私は皆にメニューのコンセプトを話した。
「新婚さんは今の時代だけじゃなくて、どの時代にもいるんだもの」
「そうだね、和食って事でまず…地味なんだものな」
「そうそう、後はデザートをどうするかでしょう?」
「あんみつとか芋ようかんみたいで良くないか?」
「そうだね。食券なんだけども…どうしようか」
その後、金額と食券の発行数を確認した。
「…で、このメニューで一度試食会をやろうか?」
「それはいいね。でもどこで?」
そう、これから真夏にむかうこの季節。どこでいつ試食会を
やるかが問題だった。
「それはちょっと考えようか」
私は自宅に皆を呼んでもいいかなと思っていた。
企画会議もメンバーは1年生を入れても10人だからなんとかなる。
けれども…たっちぃには無理をさせることはできない。
どうしようかな…思案に暮れていた私はある場所を思い出した。
あそこなら…バス移動にもなるからなんとかなる。
ライフラインは止めていないから、掃除をすればいい。
家に帰って確認しよう。
とりあえず、和食のメニューに関しては次に決めることで終わった。
「どうだ?進んでいるか?」
学校から戻ってきてリビングでおやつをたべながら哲の宿題を見ている。
「それなりにね」
「そうか、俺…クラス役員やってないから分からないんだ」
哲はちょっと寂しそうに呟いた。
けれども…哲は私と同じ店員班になっている。
申し訳ないけど、愛想の悪い番犬という表現がぴったりな哲が店員を
やらせていいのだろうか?
竜也に一度相談したんだけど、竜也はおもしろそうだからそのままな…と
言ったきりだ。何が面白いんだろう?
「うーん、メニューが上手く決まらなくてね。悩んでるんだ」
「和食だったら、野菜が多い方が良くないか?」
「そうだね。さっぱりヘルシーでもいいか」
哲の話を聞いて、私はある意見に行きついた。
いいじゃない。低カロリーでも。和食なんだから。
そう考えるとどんどんイメージがあふれてくる。
家庭科室でちょうりするんだから、多鍋で作ればいい。
盛り付けるときにきっちり分量を決めればいいんだ。
どうも頭でっかちになっていた自分に気が付いていなかったみたいだ。
「なんだ?なんかアイデアが浮かんだか?」
「うん。ありがとうね。哲。助かったよ」
私は哲の頭を撫でた。哲は凄く嫌がってたけど。いい子なんだから。
「文化祭よりよぉ、宿題を教えてくれよぉ」
「そうだったね。哲は宿題が分からなくて玄関にいたんだものね」
そう自宅に戻ると、玄関に哲が佇んでいた。
びっくりしたよ。朝帰りで家を閉め出された旦那さんってあんななの?
って妄想できる位にしょげてたんだもの。
写真館のセットに玄関と窓からのぞけるようにしてもいいわね。
「何かあれば相談するから…そこ…違う」
私は哲のノートを指差す。さっきから同じような問題を解いている。
「俺は勉強が嫌いなんだって」
「分かるけどね。今年は大変だけど頑張ろう…ね」
私は哲の問題の答えを書いたメモを見せた。
「そっか。なんとなくだけど、分かるかも」
「それをそのままにしちゃだめよ。ちゃんと理解しないと」
「分かったよ。でも…ありがとな。そうだ、母さんが週末来いって」
「1時頃に行くって言っておいてね」
「言っておくよ」
哲は何が起こってるは分からないって顔をしていた。
まさか、文化祭で自分の母親が一枚噛んでいるなんて。
とにかく企画は進んでいるから、私も煮詰まったなんて甘えた事を
言わないで考えないと…。
ほんの少しだけ私は焦っていた。




