1/2
序章
帝国が滅びると、人々は言っていた。
財庫は空に近く、貴族は争い、オスマンは国境の向こうで牙を研いでいた。
私は官僚だった。
剣も取らず、機械も作らず、ただ帳簿と勅令を扱う男だ。
だからこそ、滅びがどれほど現実的な数字で迫っているかを、誰よりも理解していた。
それでも、帝国はまだ終わっていなかった。
港は動き、職人は残り、皇帝は決断できた。
地下工事の報告書に紛れていた、奇妙な記述――
青銅の筒と、歯車と、古い設計図。
これは、滅亡寸前と呼ばれた帝国が、
なぜ滅びなかったのかを記した、官僚達の回想録である。




