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墜星のイデア ~生まれついて才能がないと知っている少女は、例え禁忌を冒しても理想を諦められない~  作者: イサキ
第3章 学科対抗戦

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30

「っ!?」

「っ、だれ!?」


 邪魔が入ったのは、双方にだった。


 一発の弾丸が両者の間を通り抜け、遅れて数発の弾丸が二人を等しく襲う。

 

 サレンとカナサリの戦いは佳境を迎え、自発的な収拾がつかない状況にあった。

 故にその弾丸は、さながら終わりの合図を知らせるようであり、同時に積み重ねた殺意を解く契機にもなった。


「双方、そこまで」

「…………レゾルテア。どういうつもり?」


 現れた格好と、既に下に向けている銃火器を見て、サレンは即座に増援だと理解。

 改めて、ロアの魔力を足元からブン回そうとすると。


「撤退です。ひとまず、我々の留意は晴れ間ましたので」

「…………分かった」

「待てよ」


 渋々といった様子で武器を収めるカナサリとは対照的に、サレンは敵意を剥き出しにした視線をレゾルテアへと向けると。


「いきなり攻撃されて、謝罪の一つもなく終わりにするとか。流石に都合がよすぎねぇか?」

「仮に謝罪をしたとしても、形だけのもので納得されるのですか?」

「…………それ、は。確かに納得はしないけど」

「であれば、こちらから謝罪はいたしません。我々は命令に従い行動したまでであり、現時点で謝罪することはないと考えていますので」


 やけに堂々と断言されてしまうからか、サレンは気圧され納得しそうになる。

 それでも黙り込まなかったのは、近くに学友であるラシェトがいたからだ。


「だったら、こっちの質問に答えてよ。それで私は納得するし、今回のことは不問にしてあげる」

「おや、このレゾルテアに問答を仕掛けると?」

「世間知らずで悪いけど、レゾルテアって名前に覚えはないわ。いちいち比較に出されても私から言えることは何もないわよ」


 カナサリの言葉を鵜呑みにするなら、彼女の狙いはサレンではなくラシェトだと言っていた。


 ありえない話ではない。

 彼の兄は天体科の第一席で、アルゲスタ家は魔法使いの中でも名の通ったほうではある。


 だが、それは地方から見た場合の話であり。

 こんな明らかに、一般人なら生涯ずっと会わない確率のほうが高い組織の人間に狙われるほどの、格式と地位は持っていないはずだ。


 するとレゾルテアは軽く髪を揺らすと。


「予備策としてカナサリ単独で仕掛けさせましたが、とんだ地雷を踏み抜いたものですね」

「…………仕方ないじゃん。隙っていう隙がなかったんだもん」

「責めてるつもりはありませんよ。我々は軍人、過程で咎められることはあっても、結果の程度は指示を出した側の責任ですから」


 口先を尖らせるカナサリの頭を撫でるレゾルテアは、ただそこだけを切り取れば歳の離れた兄妹に見えるほど和やかだ。

 

 だが実際、カナサリと戦ったサレンからすれば全くの別であり。


(カナサリより格上が一緒の二対一は…………流石にロアの補助アリでも厳しいかも…………)


 尋常じゃない強さだ。

 恐らく先の魔法戦に出ていたのか、極めて僅かに疲弊しているのが分かるが。

 逆に言えば、極僅かな疲弊を除けば、レゾルテアの状態は万全に近い。


「では、要望通りにお答えいたしますね。とはいえ、問いによっては仮定の段階のものもありますし、確固たる証拠があるわけではありませんので。先にそちらを理解いただければ」

「分かった。ラシェトもそれでいいわよね?」

「…………お、おぉ。構わねぇよ」


 除け者にならないよう声をかけることが、実な一番残酷な仕打ちなのをサレンは気づいていない。

 そしてレゾルテアもまた、分かったとて伝えるほどの関係でもなかった。


「レゾルテアたちは、何を警戒してるの?」


 サレンの問いはシンプルながら、些か抽象的なものだった。

 少なくともラシェトには意味が理解できず、隣にいるカナサリですら訝しそうに眉を顰める。


「…………存外、鋭いですね」


 ただ一人。

 レゾルテアだけは真意を理解し、同時にこう返した。


「呼称を『堕星(ついせい)』。どこからともかく聞こえ始めた、近い将来で起こりえる世界規模の災害。いつ、どこで、どのように起こるのか。その一切は不明とされており、具体的な定義があるわけでもない」


 曖昧模糊な表現は、聞き手によっては疑問を増やすだけで終わっていたかもしれない。

 だが、話しているのは敵に本音を伝えるレゾルテアだ。

 その彼がそういうことは、他のどの証拠よりも言葉に現実味を帯びさせている。


「これが単なる杞憂なら、我々が動くことはなかったのですが。どうも各国の動向を追う限りでいえば、その情報を我々が拾えていないだけという、なんともお粗末な事実が明るみになってしまった。そこで慌て、やっと調査を始めたというわけです」

「ラシェトを狙った理由は?」

「いくつかある懸念点の一つだと思っていただければ。無論、それは貴女も含まれていますよ」


 嘘は、ついていない。

 サレンに読心術は使えないし、ペテン師と向き合って騙し合いができるわけでもない。


 ただそれでも、相手が本心で話してるかどうかくらいは分かる。

 レゾルテアが今の事態に、心の奥底で苛立ちを覚えていることも。


「西は『帝国』と『教会』が睨みあい、北は『極環同盟(きょっかんどうめい)』に『八大名家』の一つが接触、南では『火岸華』と『影不踏(かげふまず)』の抗争が激化。今、この世界は有史以来の危機にあるといってもいい」

 

 世界規模の騒動。

 それは個人の意思に関係なく、人を選ばずに容赦なく呑み込んでいく。


「どうか、お忘れなきように。それと契約したということは、あなたは既に渦中にいるのです」


 レゾルテアの言葉は、まだ温情だ。

 少なくとも、手遅れだと暗にすら伝えないところが、特に。

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異世界に転生したら最強になって無双できるんじゃないんですか!?
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