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墜星のイデア ~生まれついて才能がないと知っている少女は、例え禁忌を冒しても理想を諦められない~  作者: イサキ
第3章 学科対抗戦

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16

 幻想種。

 

 それは世界中のあらゆる生態系に属することなく、完全に独立した存在として周知された生命体。

 発見例は極めついて少なく、研究に関しても殆どが進んでいないのが現状。


 精霊と異なり、動物の姿を模してはいるものの実体を有しており。

 大前提として、生物としての機能や肉体を保有している点からも動物に区分される存在だ。


「本物の龍に育てられたぁぁぁ!?」


 ひと際大きな声を挙げたサレンに、チョコは軽く耳を塞ぎながらこう続ける。


「本人が言うにはね。なんでも偶然イグニアと会って、そこから本校に入学してきたみたいよ。一時期は『原典』なんじゃないかって言われてたけど、そういうのとは少し違うみたいだし」

「…………ほんとにいるんだ、龍って」

「精霊科で会ったことある奴はいないけどね。ライネも会ったことないでしょ?」

「あっ、はい、そうです。ホムラちゃんが言うには、お母さんが戻ってくることを禁じてるみたいで…………」


 話を振られると思っていなかったのか、やや驚きながらもライネはそう答えた。


「でも、あまり家族のことは話したくないみたいなので。ウチもこれ以上のことは…………」

「そういうわけだから、ホムラの使う魔法は人間が扱うそれとは違う。どう違うって言われても、アタシでも分かってないけど」

「話変わるけど、イグニア先生って今何してるの?」

「さぁ。どっかで寝てるんじゃない?」


 本当に興味がないのか、チョコは適当にそう答えたあとで舞台の上へと視線を向ける。


「ホムラの魔法は炎。それも自然現象として発生する炎とは全くの別物。一部の連中はアレを『(ほむら)』って呼んでるみたいだけど、当の本人がその気じゃないから忘れて構わないわ」


 なんでそんなことまで知ってるのか、サレンは割と真剣に気にはなったが。


「決定的に違うのは、ホムラの扱う炎は魔力を媒介にして燃える点よ」

「…………それだと、何が違うわけ?結果は同じだよね?」


 炎を起こす。

 ただそれだけなら、マッチで火を起こし藁に付ける方法でも同じことだ。

 そして魔法であれば、サレンでも扱える簡易的なものも幾つか存在する。


 だからサレンにはイマイチ理解ができなかったのだ。

 魔力を媒介にして燃えるのが、具体的にどう恐ろしいのかを。


「魔法で発動した自然現象は、基本的には物理法則に従って作用されるわ。例えば、液体を生成する魔法を使った場合、ある程度の挙動までは指示できるし操作もできる。だけど、込められた魔力が尽きた時点で、その液体はただの液体として地面に落下することになる」


 魔法とは、奇跡を起こす儀式である。


 無から有を生み出す魔法は、確かに万能に映るうえに制約が殆どないように見える。

 魔力、という代物も、魔法に精通している人間でなければ認知できない。


 だが、魔法によって生じた現象は、その瞬間から世界の法則に従うことになる。

 それはどれだけ高度な魔法であっても、複雑怪奇で難解な魔法であっても同様だ。


「だから、魔法で起こした炎は空気を媒介にして、込められた魔力が尽きない限りは燃え続けるの。逆の言い方をすれば、空気がないところでは炎の魔法は発動できても持続できない。例外を除いてね」


 そこでやっと、サレンはチョコの言いたいことが理解できた。


 できたと同時に、思わず肩に乗る小さなロアに手を伸ばす。


「ホムラの魔法は、魔力さえ例え空気のない場所であっても燃え続ける。そして燃える条件には、相手の魔法も平然と含まれてるわ」

「…………強すぎない?」


 辛うじて出てきた感想に、チョコは小さく笑うと。


「だから言ったのよ。学士を含めても、ホムラに勝てる魔法使いはいない。なにしろ彼女の炎は、相手が発動させた魔法を火種に永遠と燃えるんだから」


 そこから先は、一方的な虐殺だった。


 サンタリア家の魔法使いは必死に魔法を発動させるが、ホムラからすれば薪を贈ってもらうのと同義。

 つまりは、足掻けば足掻くほどホムラが有利にしかならない、完全に詰んだ盤面が既に完成していたのだ。


 虐殺と表現したのは、サンタリア家の魔法使いが最後まで諦めなかったこと。

 恐らくサンタリア家に伝わる魔法のほぼ全てを、本来なら秘中の秘として人目に晒してはいけない魔法まで彼女が使用したことだ。


 結果、それはサンタリア家そのものの成果を開示してしまう形となり。

 完全に保有魔力が尽き、そのことに気づいた時には何もかもが手遅れになっていた。


「終わり?」


 ただただ炎を振るっていたホムラは、相手の魔法が途切れる度にそう尋ねた。

 相手はそれを挑発の一種と解釈したようだが、実際は違ったと今なら理解できる。


「……………………えぇ」


 ホムラの言葉には、深い意図なんて一切なかったのだ。

 

 ただ、単純に分からなかっただけ。

 本気を出せば殺せてしまう相手を、どうにか殺さずに勝利する方法を。


「降参するわ」


 だから、相手が白旗を挙げるのを彼女は待ったのだ。

 そうすることが、この状況では最善だと本気で思っていたから。


「そ。ありがとね」


 ホムラは簡潔に礼だけを伝え、特に気にすることなく舞台の上を後にする。


 後に、相手の魔法使いが本校を退学し、サンタリア家が斜陽の憂き目に遭うことになるのだが。


 その事実をホムラは知ることはなく。

 世間にて噂になる頃には、既にホムラは忘れているのだった。

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☆☆☆完結済の過去作はこちら☆☆☆
異世界に転生したら最強になって無双できるんじゃないんですか!?
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