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墜星のイデア ~生まれついて才能がないと知っている少女は、例え禁忌を冒しても理想を諦められない~  作者: イサキ
第3章 学科対抗戦

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 学科対抗戦、当日。

 

 会場である中央広間には、千人を超える学生が集結していた。


「…………すっごい人数…………これ全部、本校の生徒なの?」

「えぇ。でも、集まってるのはざっと七割くらいだと思うわ。学士持ちはいるとは思うけど、席クラスが参加した記録は残ってないし」


 ぞろぞろと移動する様は、さながら草食獣の大移動のよう。

 ちょっとした町と同じくらいの人数が一気に移動するため、サレンは目を白黒させ驚くことしかできない。


「サレンは一回生で驚くのは分かってたから、そんなに気にはしてないんだけど…………」


 サレンに肩を掴まれたまま、チョコは周囲をチラリと眺めると。


「ライネ、アンタ本当に大丈夫なわけ?顔真っ青だけど」

「…………だだだ、大丈夫、です」


 ガタガタと震えながらホムラの背中に体を埋めるライネは、明らかに平気ではない様子でそう答える。


 そんな様子を眺めたホムラは。


「どのみち、ライネは四番手なんだし。わたしらが全勝で優勝すれば出番なしで終わるでしょ」

「できるなら、ね」


 棘を刺すようにチョコが付け加え、険悪な空気が一行の間に漂う。


 それを見かねたのか、あるいは全く気にしてないのか。


「ところで、学科対抗戦とは具体的に何をするものなのだ?」


 傷一つない体で当日を迎えたシュラが、何気ない様子でそう口にした。


「…………シュラ、アタシ当日までにちゃんと調べろって言ったわよね?」

「言われたが、拙者には魔法具は使えんのでな。調べる手段がないのだ」

「だったらそれを最初に…………って、言わないアタシが悪いか」


 どうやら今回に始まった話じゃないらしく、チョコは一度サレンに視線を向けたうえでこう続けた。


「学科対抗戦は、魔法戦の団体戦。代表者を五人選出して、先に三勝した方が勝ちになるわ。組み合わせはランダムの勝ち上がり戦で、最後まで残った学科が優勝。ついでに、代表者は都度変更できる」

「理解したが、拙者らは五人。変更はできないということか」

「今のチョコじゃ誰も勝ち目ないし、実質四人だけどね」

「悪かったわね。アンタと違って、参謀くらいはできるけど」

「そ。ならよかったじゃない」


 この時点でチームワークなんて皆無に等しいのだが、集合時間に遅れてこない辺りは参加する意思はあるらしい。

 

(…………普通に辞めてほしいんだけど、ホムラさんの言ってることは事実だから変に否定できないのがなぁ)


 前日、チョコから聞いた限りでは、学科対抗戦で勝てるほどには回復しきれていないこと。


 それはインキュリア王国への遠征が原因ではあるが、数ある要因が重なったが故のことであり。

 サレンは、今は学科対抗戦に集中してほしいと念を押されていた。


(チョコ先輩にも事情があって、それで私に協力してくれるのは理解できてるんだけど…………)


 サレンの懸念は、クレアから伝えられた言葉。

 より大きな陰謀に、チョコが関与している可能性だった。


(仮に黒幕?てきなのがチョコ先輩だとして、私を何かしらの理由で利用しようと思ってるんだったら、内容次第で普通に協力するんだけど…………)


 単なる好感度稼ぎなら、恐らくここまでする必要はない。

 むしろ学生らしく、淡々と講義を受けて評価点を稼ぐほうを勧めたはずだ。

 実際、ここまで消耗したことでチョコが得たものは一つとしてないのだから。


 だが、そうしなかったということは、チョコにとっても何か事情があるということ。

 それが何かは分からないが、言わないことを下手に勘ぐって探るのも違う気がしてならない。


(…………あぁもう、オレはこういうの苦手なんだよなぁ!もっとこう、言ってほしいことは口にしてくれないと困る!!)


 サレンがここまで悩むのは、何よりもサレンにとって益のあることだから。

 現状だけを切り取れば、チョコはサレンの目標のために無償で手助けしてくれているだけ。


 そこに意味を見出し、何かあるのではと斜めから捉えているのは紛れもないサレンなわけで。


(『珍しく悩んでいるようだな』)

(『ロアは知らないと思うけど、私けっこー悩むからね?』)

(『そうか。それは失礼した』)


 そうこうしているうちに、四人はサレンを置いて会場へと向かおうとしていた。


 遅れてそれに気づいたサレンは、慌てて走り出そうとし。


「やぁ。久しぶりだね」


 その瞬間。

 

 周囲の人間が一斉に静止したことに気が付いた。


「…………天体科(スリス)、第一席」

「ユダ・アルゲスタ。是非とも名前で覚えてほしいかな。席次で覚えられるのは、少しだけ恥ずかしいからね」


 艶を帯びた独特な声色。

 さながら荘厳な儀式から抜け出してきたような、そんな気配を漂わせる金髪翠眼の男は軽く笑うと。


「それにしても、君も随分と無理をするね」

「…………これ、どういう仕組み?時間魔法、とかじゃないわよね?」

「残念ながら。そこまでの才能は僕にはないかな」


 軽い調子で肩を竦めたユダは、なんてことない様子でサレンに近づくと。


「おや、どうやら相当に警戒されているようだ」

「生憎と、天体科にはいい思い出がないので」

「なるほどね。だったら、この状況のネタ晴らしだけして失礼するとしようかな」


 ここまでの会話の間、周囲の人間は一歩たりとも動いていなかった。

 厳密に言えば、空を流れる雲も、そこを飛ぶ鳥すらも。

 本当に世界の時間そのものが停止したかのように、二人以外から音さえ起こらない。


「操作したのは、君の意識だ。君と僕の意識を繋げて、互いの体感時間を拡張している。世界が止まって見えるのは、君の意識が普段よりも多くの情報を獲得し、処理し終えているに過ぎないよ」


 世界の時間を止めるのではなく、サレンの認識する世界を鈍化させる魔法。

 精神干渉に分類される魔法の一種であり、本来なら医術科(セルバン)人体科(ムトン)で研究される分野の一つ。


「安心していい。君にとっての数分は、世界にとっての数秒でしかない。これは、君がたまたま昼間に見た夢の、その断片の一つだからね」

「…………聞いてもいい?」

「あぁそれと、これは僕が一方的に送った情報だから、会話は成立しないんだ。僕が予測して会話っぽく調整はしてるけど、質疑応答は諦めてほしい」


 道理で微妙に噛み合わないわけだ。


 サレンは苛立ちを覚えつつ、次の言葉を確かに聞き終えた。


「聞きたいことがあるなら、学科対抗戦を勝ち抜くといい。そうすればきっと、機会は巡ってくるよ」

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☆☆☆完結済の過去作はこちら☆☆☆
異世界に転生したら最強になって無双できるんじゃないんですか!?
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