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墜星のイデア ~生まれついて才能がないと知っている少女は、例え禁忌を冒しても理想を諦められない~  作者: イサキ
第3章 学科対抗戦

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 学科対抗戦(がっかたいこうせん)


 正式名称を学科対抗(がっかたいこう)魔法模擬戦(まほうもぎせん)

 新入生が入学してから二か月後に実施される、全学科が参加する学校行事の一つ。


 目的は各学科の交流と、新入生の実力を披露すること。

 

 魔法学校で設定されている、学士や席の区分は年に一度だけ更新される。

 極めて稀な例外を除けば、基本的には新学期に合わせる形で実施されるため。

 その学科に属していない限り、何がどう変わったのか正確に知ることが難しいのだ。


 また、新たに選ばれた人間の顔見せも兼ねており。

 どの程度の魔法使いなのか、どれくらい自分たちの学科にとって脅威なのか。

 そういった、ある種の品定めを目的とする魔法使いも多い。


 どちらにしても、参加率は例年さほど高くなく。

 その優勝学科に臨時予算を給付するという時点で、どこの学科もさほど乗り気じゃないのは明らかだろう。


 そんな思惑が流れるなか、サレンは思わずといった様子でこう告げた。


「…………仲間、集め?」

「そうよ。学科対抗戦に参加するには、学科から五人の参加者を集めないといけないわけ。もし集まらなかったら、その時点で問答無用で失格になるわ」


 活発な印象を周囲に与える黒髪少女、サレンは困惑していた。


 なにしろ、彼女は徒労という名の長期間の遠征を終えた直後。

 結果的に境遇を理解しあえる友を一人得たが、目的は何一つとして達成できなかったばかりだ。


 そんな彼女にとって、その長期間遠征に協力してくれた学友、チョコ・フォルワの言葉はイマイチ理解できないものだった。


「仲間って、今までどうしてたの?」

「参加してないわ」

「…………はい?」

「だから、誰も参加してないのよ。把握してる奴のが少ないんじゃない?」


 唖然とするサレンの隣では、大きな欠伸をする虎の精霊ロアがいるのだが。

 今回の話にはまるで興味がないのか、一言たりとも話し合いに参加する気配がない。


「それ、いいの?」


 辛うじて出てきたのは、サレンとて特別持ち合わせていない常識の確認だった。


 サレンは分校時代、魔法の才能を伸ばすという名目であらゆる授業をサボり続けていた。

 無論、全てというわけではなかったが、とはいえ勤勉とは程遠い学生生活を過ごしてきた身だ。


 そんなサレンとて、全校生徒が参加する行事をサボろうと思ったことはなく。

 むしろ参加しないほうが、却って肩身を狭くするという私見を持っていた。


 するとチョコは、懐から化粧ポーチを取り出すと。


「いいんじゃない?むしろ喜ばれたと思うわよ。アタシら嫌われてるし」

「でも、一応は全員参加なんだよね?」

「だからって、わざわざ参加しよう!って提案するわけなくない?ぶっちゃけ、サレンがいなかったらアタシも参加する気ないし」

「…………なんで?」

「面倒じゃん」


 なんというかもう、これ以上は出てこないと分かる回答だった。


 サレンは静かに事実のみを受け入れ、喉から出かけた感想を呑み込むと。


「それで、チョコ先輩以外に誰を誘うの?私、他の先輩たちのこと何も知らないけど」

「とりあえず、シュラは確定ね」

「えぇ!?いやでも…………」

「大丈夫よ。アイツ、あれでも頑丈だし。ついでに、今向かってるのもシュラの部屋だしね」


 サレンとチョコがいるのは、精霊科(シャト)の宿舎だった。

 宿舎といっても学舎と同じ建物なので、歩いて行けるどころか外に出る必要すらない。


 なにしろ、精霊科は総数で二十にも満たない弱小学科だ。

 他の学科が一学年百人近くいることを踏まえれば、もはや存続しているだけ奇跡に近い扱いである。


(…………シュラさん。結局あの後、一度も会えてないんだよなぁ)


 負い目がない、といえば嘘になる。

 サレンの憂いであるシュラの大怪我については、元々はサレンの我が儘に付き合ってもらったから起きたことだ。


 一方的な善意で協力してくれたのだから無意味だとは思うが、それでも怪我させた張本人として何も思わないわけがない。

 

 そんなサレンは。


「どうした、サレン殿。鳩が豆鉄砲を食ったような顔をして」

「シュラさ、学科対抗戦に出てよ」

「…………なんだそれは?」


 本気で首を傾げるシュラがいるのは、広々としたトレーニングルームだった。

 

 ざっと見ても百人は入れるほどの広さに、大小様々なトレーニング器具がずらりと並び。

 その中に紛れる形で、槍や剣といった武器が転がり立て掛けられている。


「そういえば、そのようなものがあったな」

「ほら。サレン言ったでしょ?アタシらにとっては、これってそういう認識なのよ」


 どこか自慢げに言うチョコに対し、サレンは絞り出すようにこう尋ねた。


「部屋…………広くない?」


 サレンらが訪れたのは、シュラの個人的な部屋。

 そして精霊科の生徒に割り振られた個室は、六畳くらいのこじんまりとした簡素な部屋だったはずだ。


 だが、シュラがいるそこは錯覚では済まないほど広く。

 規則的に配置された照明も、消音目的で設置されたであろうマットも、どこからどう見ても備品には見えなかった。


「そりゃ、トアに魔改造してもらってるからね」

「トアさん、って確か…………」

「サレンと同じ元造形科(サンジュ)の学士一年。念のため言うけど、既に三回留年してるから、実際は四回生だから」

「三留!?いやでも、学士ってことは優秀な魔法使いなんだよね…………?」


 サレンの記憶にあるトアの印象は、なんだか独創的な話し方をしていた女生徒だけ。

 なんならチョコとシュラ以外の精霊科の生徒と会っていないので、もはや誰が誰か怪しいまである。


 すると、チョコは勘弁してほしいと言わんばかりにげんなりとした表情を浮かべると。


「ホント、優秀なのが厄介なのよね…………」

「愉快な人ではあるな」

「シュラはまだ巻き込まれてないだけでしょ。というよりも、そうなる寸前で逃げ出してるわけだし」

「さて、どうだったかな」

「まぁアタシも最初の一回以外は全部逃げてるし、人のこと言えないんだけど」


 どうやら話せば長くなる案件らしい。

 こうなると身内だけトークで延々と盛り上がってしまうので、サレンは早い段階で話題を本筋に戻した。


「それで、シュラさんも学科対抗戦に出てくれませんか?」

「無論、そういうことなら協力するのも吝かではない」

「っ、ありがとうございます!」


 勢いよく頭を下げたサレンに対し、シュラはただと一言置くと。


「拙者とチョコ殿、サレン殿を入れて三人。勝算がないとは言わんが、可能なら残り二名も集めておきたいところだな」

「そうね。最悪レナリアの名前を借りれば数は誤魔化せるけど、万が一の時を考えたら危険だし」

「レナリアって、精霊科の人?」


 知らない名前にサレンがそう尋ねると。


「元天体科(スリス)学士四年。年の殆どを留守にしている、実質失踪扱いの精霊科の一人だ」

 

 シュラが簡単にそう説明し、そして二人にこう提案した。


「とりあえず、滞在している者たちに打診するのが最善であろうな。少なくとも、拙者とて未だ本調子とは言えん」

「…………そのバーベル、六十って書いてある重りが十個くらいあるんだけど」


 思わずサレンが小声で指摘するが、シュラはそれに反応することはなく。


「恐らく、トア殿とクアム殿はここにいるはずだ。参加するかはともかく、一度話をしてみるといい」


 こうしてサレンは精霊科の宿舎巡りをすることになった。


 学科対抗戦に出場するために必要な、サボらず参加してくれる人を集めるために。

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異世界に転生したら最強になって無双できるんじゃないんですか!?
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