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墜星のイデア ~生まれついて才能がないと知っている少女は、例え禁忌を冒しても理想を諦められない~  作者: イサキ
第3章 学科対抗戦

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1

 ───────ウチはきっと、最初から魔法使いに向いてなかったんだと思う。


 ウチにとって魔法は、大人たちが見栄を張るための道具でしかなくて。

 あの人は凄いとか、あの人は大したことないとか。

 そういった、何も楽しくない会話に使われてたから。


 だからウチは、魔法をできるだけ遠ざけようとした。

 

 上のお兄ちゃんやお姉ちゃんが、誕生日プレゼントで魔法に関する物を貰ってたけど。

 それには興味がない、欲しくないって、駄々をこねるようにウチは主張し続けた。


 この子供ながらの我が儘は上手くいっていたと思う。

 

 魔法が全ての世界で、魔法を断固として拒絶する。

 それは、テストで赤点を取るよりもずっと、落第の象徴として分かりやすいから。


 加えてウチは、性格が明るいわけでも、お話が上手なわけでもなくて。

 とりわけ秀でた部分も、目に見えて分かるような長所もなかった。


 愚鈍で、人見知りで、話すのが遅く、動きもトロい。

 出来のいい姉が二人いれば、ウチへの関心が損なわれるのは当然のことだった。


「…………えへへ」


 だけど、それがウチには心地よかった。


「ターくんだけですよ。あぁえっと、マーちゃんもですからね!」


 周囲の評価は、ウチからすれば逆だった。


 機敏で、躊躇なく相手へ踏み込み、詠唱でもするかのように話し、何かに追われているようにせわしない。

 ウチにとって世界は早すぎて、同時に訳が分からないほど怖いものだった。


 そんなウチにとって、誰も近づいてこないのは逆に心地よくて。

 無理についていかなきゃと、変に焦る必要もなくて。

 穏やかに流れる時間だけは、ウチを受け入れてくれる。


 広々とした自室の一角。

 クローゼットの奥に作った、ちょっとした秘密基地だけがウチの安全地帯で。

 夜な夜な作った、小さな友達がウチの唯一の話し相手で。

 

 それさえあれば、他は何も必要ないと。

 疑うことなく信じられるほど、ウチの生活は平和に包まれていた。


「…………なんだ、それは」


 だけど、そんな平和は長くは続かなかった。

 

 元より子供のつく嘘なんて、本人がどれだけ完璧だと思っていてもバレる日が来る。

 だからウチが作った友達も、小さなきっかけで忽ち暴かれてしまって。


「…………そんな…………こんなこと」


 バレたらもう、あの早すぎる世界に戻らないといけなくて。


「……………………これは、魔法なのか?」


 才能という。

 捨てることもできない呪いが、魔法という形でウチに宿ってしまった。


「どうする?こんなこと、他の家でも見たことがないぞ?」

「方式も不明。過去のどの記録を見ても類似する記述がない」

「なにより、本人にその覚えがまるでないとなると…………」

「まさか…………『終典』?」

「馬鹿なっ!?それは、そんなふざけたことがあるわけないだろう!?」

「だがしかし、それ以外でどう説明すれば…………」


 そこからはもう、ウチに逃げ場はなかった。


 羨望と畏怖、幽霊でも見ているかのような視線を向けてくる大人と。

 嫉妬と憎悪、親の仇でも見ているかのような視線を向ける家族と。


 まるで商品を眺めるような視線を向ける、見たこともない他人に晒され続ける日々。


 ウチは嵐に晒される若木のように、ただジッと座って過ぎるのを待ち続けた。

 そうすれば、また同じような日々が戻ってくると。


 誰もウチに見向きもしない、するわけもない。

 こんな痛く、苦しい日々から逃れられると。


「……………………ぇ?」

「荷物をまとめろ。近いうちに魔法統括局がここに来る。そしてお前は、魔法学校の本校へと入学するんだ」

「…………んで」

「簡単な話だ。お前のそれは、そうなるだけの才能に満ちている。あるいは、そうさせてしまうと言うべきか」


 嫌だ。


 ウチはずっと、ここにいられると。

 誰にも関わらず、ただ静かに暮らしていけると。


「我が儘を言うな」


 だけど。

 そんな子供じみた我が儘を、わざわざ聞いてくれるほど大人は優しくない。


「お前が単に凡愚なら、永遠にこの部屋で暮らしていくのも悪くはなかった。元より、お前を我が子供と思うこと自体が不愉快だったからな。人様に晒すくらいなら、ここにずっといるほうが遥かにマシなのは事実だ」


 大人は、ウチに語った。


「だが、お前には魔法の才能があった。それも我が一族でも飛び抜けた代物、もしかすれば本校でも例がないかもしれないと思うほどの代物だ」


 お前には、興味がないと。


「何も役に立たないと呆れ果てていたが、まさかこのような形で役に立つとは思わなかったが。なんにしても、お手柄だと褒めるしかないな。こんな気色悪い魔法を、最も役に立たないお前が発現してくれるとは」


 必要なのは、お前の魔法で。


「おかげで、先の一族が被害を受けることはなくなったわけだ。とはいえ、魔法という奇跡を完璧に把握している人間はいない。もしかすれば、ということもあるかもしれない」


 それを、とても恥ずかしいと思っていると。


「だからライネ。お前は本校できちんと検査を受け、そして必ず仕組みを解明してきなさい。そのための費用はどうにでもなる。これから先、お前みたいな欠陥品が現れないようにな」


 そして流されるまま、ウチは生まれ育った家を離れ。


 辿り着いた学び舎でも、やはり異端として爪はじきにされ。


「だから何?それ、必要なこと?」

 

 行き場を失ったウチは、そこで遂に出会ったのだ。


「よく分かんないけど、気味が悪いからって嫌う理由なくない?」


 それがどうした、と。

 ありのままの、ウチを受け入れてくれる相手を。

 

「なんでもいいけど、ここで暮らすからには色々知らないと不便でしょ。荷物も持ったままだし、部屋の位置とかも聞いてないんじゃないの?」

「…………ぁ、はぃ」

「なら、まずはそっから案内するから」


 だから、ウチにとって彼女は救世主で。


「ついてきて。困ってる人を放っておけるほど、まだ人間辞めてないから」


 いつの日か、こんな風になりたいと。


 この時初めて、ウチの魔法は意味を持ったのだ。

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☆☆☆完結済の過去作はこちら☆☆☆
異世界に転生したら最強になって無双できるんじゃないんですか!?
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