第73話「ゲームが創る平和の形」
ハートシールドが開発した仮想戦争ゲームが世界中に公開されると、瞬く間に話題となった。
このゲームは、リアルな戦闘を模した競技でありながら、誰一人傷つかないという革新的なアイデアで注目を浴びた。
「いよいよ、世界の反応が来るぞ……」
ナイアは自室のモニターの前で身構えていた。
公開からわずか一時間足らずで、各国のメディアが特集を組み、政治家や軍関係者までもがコメントを出し始めていた。
「予想より……反応がいいな」
レントが報告書を見ながらうなる。
「ただし、戦争を失った権力者たちがどう出るか、だ」
「そこが肝だな」ナイアも同意しつつ、ちらりと視線をモニターに戻す。
ハートシールドの仮想戦争ゲームは、プレイヤーが仮想世界に意識を転送し、戦場で競い合う形式。ポイント制で勝敗を決め、フィールドや装備も多彩に設定できるようになっている。
「さて……第一回公開対戦、始めようか」
ナイアの宣言で、世界各国から選ばれた代表者たちによる試験戦が始まった。
それは、世界の未来を左右する、新たなステージの幕開けだった。
一方、町では……
「リラリ、装備のチェックを頼む」
「了解、ハイネ様。今回は特に準備万端です」
「ミミミ~この銃かっこよくない?」
「ナナミ、やっぱりピンクでかわいいのがいいです~」
「タイチ、私の操作補助をお願いします!」
「任せとけ!絶対勝とうな、ユウロ!」
「うむ、これが我が初陣だな」
「ガルド様、レント様の戦術を守りましょう!」
それぞれのペアが仮想戦場にログインし、試合開始を待ち構える。
その中心には、相変わらずニコニコしているシグマと、少しおっとりとした笑みを浮かべるベータの姿もあった。
「さて、僕ら兄弟の活躍、見せてやろうか!」
そして、画面が切り替わる。
世界中が注目する中、仮想戦場の第一幕が静かに開かれた。
―――
仮想戦争ゲーム『ハートシールド・コンバット』の初戦は、世界中から選ばれた参加者たちによる熱戦となった。
「フィールド展開、エリア制圧戦開始!」
司会AIのコールとともに、仮想世界に色鮮やかな戦場が広がる。都市部、砂漠、森林、廃墟……プレイヤーの戦術と装備によって様々な戦略が展開された。
ナイアとレントは開発者モードでフィールド全体を見渡す。
「これが……世界の戦争を代替するってことか」
「バイオロイドの心臓を止めずに、力を競い合う。お前の発明、世界を変えるぞ」
その言葉に、ナイアは小さく笑う。
「でもさ、やっぱり楽しいのが一番だよな」
その頃、仮想フィールドでは兄弟たちの活躍が光っていた。
「エイト、左から!」「了解、援護射撃!」
「ヒイト、陣形崩さないでね!」「任せろ、ナナミ様!」
「ミミミ、回復頼んだー!」「はーい、ミミミは癒し担当~」
それぞれがチームとなり、楽しみながら勝負に挑んでいる。
そして、観客席では、仮想世界にログインできない兄弟たちが大型モニターの前で応援していた。
「がんばれお兄ちゃん!」「エイト兄ちゃんが一番かっこいい!」
その光景をモニター越しに見たベータは、ぽつりと呟く。
「……こうして、笑っていられる未来が続くといいですね」
シグマも頷く。
「うん。戦うなら、こうやって。誰も傷つかない戦いで」
そして、第一回大会は幕を閉じた。
各国の政治家たちはこぞって「新時代の平和的手段」として高評価を出し、世界中のメディアがそれを取り上げた。
だが、ナイアは浮かれた様子を見せない。
「……このゲームが代替になった瞬間、本当の意味で俺たちは一歩進むんだ」
その言葉に、ハイネがふっと笑って言った。
「大丈夫、ナイア。お前の願いは、ちゃんと届いてるよ」
こうして、ハートシールドが作り出した「戦争のない競技」は、世界の未来に向けて、新たな一歩を踏み出したのだった。




