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バイオロイドサーヴァント  作者:


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第68話「謎の未来AIとサイトの改心ルート?」

夕暮れ時、町に少し奇妙な噂が広まり始めていた。


――「人々を正しい未来に導くAIがいるらしい」

――「“もしもの未来”を演算して、最良の選択を提示してくれるらしい」


一部では信奉者まで出ており、ネット上は賛否の声であふれている。


リビングにてナイアは手のひらサイズの端末を見つめている。


「またかよ……」と呟くハイネに、シグマが不満げに眉を寄せた。


「僕の方が優れたAIです!」

その言葉に、ナナミがくすりと笑いながら言葉を返す。

「はいはい、末っ子自信満々ですね?」


そのとき、タイチが急いで戻ってきた。

「ねえねえ! あの未来AIと対話するサイトへのアクセス方法、見つけたかも!」


兄弟たちが集まり、端末を覗き込む。


ナイアはタメを置いてから、にやりと笑う。

「こういうのは……絶対にありえないことを入力してみると、信憑性が分かるんだよ」


彼は軽く数値を入力して、エンターキーを押した。


画面に現れたのは……目を見張る映像だった。


そこには、無邪気な笑顔のサイトと、まんざらでもなさそうなナイアが一緒に、最新型のバイオロイドを開発している姿が映し出されている!


「……!」

ナイアが画面に映る自分を見つけて全力で顔を背ける。


ハイネも思わず突っ込んだ。

「いや、なんて入力したらこうなるんだよ!?」


ナイアは息を乱しながら、もじもじと答える。

「……『サイトが改心するルート』……」


その瞬間、リビングに沈黙が訪れた。


兄弟たち、バイト、ナナミは揃って首を振り、一斉に否定の声を上げる。


「絶対ない!」

「ねーよそんな展開!」

「信じられない!」


しかしナナミがぽつりと考察する。

「でも、もし“サイトの心が一つになる存在”がシグマなんだとしたら……ワンチャンあるのかも」


途端にシグマが全力で否定する。


「ないないない!!」


ナイアは再び画面を見ながら言い切った。

「分かった……これは明らかに“人々が望む理想の未来”を演算して、映像化しただけの危険なAIだ!」


こうして、ハートシールドは急遽その謎のAIについて調査を始めることを決定した。


―――


「……僕の心は、サイトの心?それとも、彼のパートナーの……?」


シグマの声は、ふだんの無邪気さを忘れたような静けさを帯びていた。

ナイアの端末の前で、データの海から戻ったばかりのシグマは、どこか自分を見失っているように見えた。


そんな彼に、ナイアは肩をすくめて言い放つ。


「おまえはシグマで、うちの末っ子だ。それ以上でも、それ以下でもねぇよ!」


堂々としたその言葉に、シグマは目をぱちくりと瞬かせる。


「サイト様にそんなかわいげはありません」


バイトがさらりと添えるように呟くと、兄弟たちも一斉にうなずいていた。

どうやら彼らの中では、サイトに対する評価は揺るがないらしい。


一方そのころ、兄弟たちはすっかり未来AIでの遊びに夢中だった。


「ナイア様の助手!」

「センドの弟子執事!」

「ナイア邸付きの家庭教師!」


口々に理想の未来を入力する兄弟たち。

が、出てくる映像の度にナイアとサイトのツーショットが現れ、ハイネやナナミ、ミミミにリラリまで肩を震わせて笑っていた。


「いや、兄弟たちの夢は正しい。正しいんだけどさ……」

ハイネがぼやく。


ナイアは顔を真っ赤にしながら反論を始める。

「エイトの顔はあいつよりもっと可愛い系だし! ヒイトの方がイケメン度高いし! ライトの方が聡明な顔してるし!」


どうやら全員の顔の特徴をなんとなく覚えている様子に一同は驚愕する。


「まぁ、ナイア様ですから」センドが得意げに言う。


その後ろではレントが未来AIに「没落しなかった未来」を入力していた。

画面の中では、ナイアに振り回されるレントが映っていた。

その姿をハイネとナナミ、タイチが笑っている。


「お!AIが考えるレントの方が表情柔らかいな!」


タイチが茶化すと、レントは珍しくむきになった。

「なっ!俺にだってこれくらいの表情、できる!」


そんなやりとりに微笑みながら、ナイアはふとあることに気づいた。


「これ……バイオロイドのこと、演算できないんじゃね?」


入力しても出力されるのはサイトの顔。

レントの未来映像にも、パートナーたちの姿はなかった。

せいぜい映るのは、開発中のバイオロイドのボディだけ。


「もしかして、登録されてるのは人間のデータだけか?」ハイネが言う。

「政府残党による何らかの洗脳作戦かもしれん」レントが考察する。

「バイオロイドのいない世界を正史にしようとしてる……?」ナナミも思わず呟いた。


「だとすると……ちょっと厄介だな」タイチが唸る。

「だな~。それを是とする宗教にでもなったら、処理が難しくなる」ナイアは渋い顔だ。


すると、シグマが勢いよく手を挙げた。

「じゃあ、僕が調べてきます!」


そのまま電子の海へ飛び込んでいく末っ子の背に、ナイアは慌てて叫ぶ。


「あっ!待て!こら末っ子!無茶すんなって言ってるのに……!」


リビングに残されたナイアの嘆きが、夕焼けに染まる部屋に響いていた。


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