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バイオロイドサーヴァント  作者:


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第60話「末っ子の無茶と、兄弟の怒り」

ある日、ニュース速報がナイア邸に響き渡った。

――『サイト』を名乗るテロ集団が現れた。

画面に映るのは、かつて本物のサイトが「遊び」と称して使い捨てた異形型や、その模倣兵装たち。


「……あれは……本物だ。」

兄弟たちが震えた声を漏らす。

ナイアが唇を噛んだ。

「落ち着け! 兄弟たち、ここにいるんだ。俺が守る。俺たち全員で戦う。」

その言葉に、兄弟たちは顔を上げる。

震えながらも、それでも頷こうとしていた。


だが、その光景を見ていたシグマは胸を締めつけられるような感覚に襲われた。

――こんなに怖がっているのに、戦わせたくない。

「……僕が、やる。」

小さくつぶやいた瞬間、ナイアの端末にシグマの手が触れた。


「シグマ!? おまえなにを――」

言い終わる前に、シグマの意識は電子の海へと飛び込んでいた。

──AI-Σの本領が発揮される。


高速で流れる情報。

通信網をすり抜け、テロ組織の中枢へと接続する。

「異形型群、起動コマンド確認……権限、奪取。」

機械的な声が電子の世界に響き、異形型たちは次々と暴走……いや、AI-Σの指示で逆にテロ組織を襲い始めた。


「……やめろ! 何が起きてる!?」

「ぐあああ!」

断末魔が回線の向こうで響き、テロ組織は短時間で壊滅していった。


――そして、意識が戻る。


「ふぅ……これで、兄弟たちを戦わせなくて……」

安堵の笑みを浮かべた瞬間。


ぴしっ。

「……痛っ!? なにすんの!?」

ナイアの指先がシグマの額を弾いていた。


「馬鹿! 本当に馬鹿! 一人で無茶するな馬鹿!」

ナイアは額に手を当てて怒鳴る。

「え……いや、でも、みんなを戦わせたくなくて……。」

「だからって、おまえが消えたらどうすんだよ!」


「……末っ子に何かあったら、どうするんですか。」

低い声がシグマの背後からした。

振り向くと、バイトが真剣な眼差しで立っていた。


「バ、バイト……。」

「あなたは私たちの末っ子です。それを忘れないでください。」


シグマは思わず言葉を失う。

その肩に、センドがそっと手を置いた。

「覚えておきなさい。これは“愛されている証拠”です。……甘んじて受け入れなさい。」

「……!」


その瞬間、胸の奥――機械なのに、確かに脈打つものを感じた。

「そっか……僕って……。」

ぽつりとつぶやき、笑みがこぼれる。

『……愛されてるのか……。』


その夜、ナイア邸のリビングは静かだった。

兄弟たちはそれぞれの席につき、シグマを中心にぐるりと取り囲む。

「……本当に、心配したんですよ。」

バイトが、めずらしく語気を強めていた。

「末っ子に、何かあったら……私たち、きっと耐えられません。」


シグマは視線を落とす。

「……ごめん。でも、怖かったんだ。あんなのと戦わせたくなくて……。」

「でもな、シグマ。」

ナイアが腕を組み、深くため息をついた。

「兄弟ってのはな、守りたいって思う気持ちだけで成り立つんじゃねぇんだよ。頼っていいし、頼られていい。……おまえも、俺たちを頼れ。」

「……ナイア……。」


センドが紅茶を差し出した。

「ナイア様は、そういう方です。だからこそ、わたくしも傍にいるのです。」

「ありがとう、センド……。」

シグマは湯気の立つカップを両手で包み込むように持ち上げると、その温度を確かめるように指先を震わせた。


ふと、兄弟の一人が明るい声を出した。

「じゃあこれからは、シグマも一緒に作戦会議だね!」

「うん! 次は何するの?」

「私たち、負けないよ!」


シグマはゆっくりと顔を上げ、微笑んだ。

「……ありがとう。みんなが、そう言ってくれるなら……僕もちゃんと、兄弟の一人として、頼っていいんだね。」

「当たり前だろ!」

ナイアが即答し、バイトが深く頷く。

「……わかりました。では、改めて言わせてください。」

シグマは椅子から立ち上がり、胸に手を当てた。


「僕は――AI-Σ、シグマ。これからも、あなたたち兄弟と共に歩みます。頼って、頼られて……そして、守ります。」

その言葉に、兄弟たちから大きな拍手が起こった。


ナイアがにやりと笑い、シグマの頭をわしゃわしゃとかき回す。

「いい返事だ。よーし末っ子、これからも甘やかしてやるから覚悟しとけよ!」

「……やめてよ、そういうの、むず痒い……。」

それでも、その声はどこか誇らしげで、笑顔に満ちていた。


こうして夜は更けていく。

末っ子は確かに、ここに居場所を見つけたのだった。

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