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バイオロイドサーヴァント  作者:


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55/75

第55話「とんちき運動会、開幕!」

「……おい、これ……なんだよ?」

ナイアが受け取ったのは、ど派手なリボンがついた招待状だった。

『第1回 人間とバイオロイドの絆を深める!絆★運動会!』


「……絆運動会?」

ハイネが眉をひそめる。

「なにこれ!? なんかイラストがやたら愉快なんだけど!」

ナナミが笑う。

「主催は……AI-Σ!?」

レントが目を疑った。

「とんちき……にも程があるだろ……!」


数時間後、ハートシールドメンバーは町外れの広場に集められていた。

ステージの上には大型モニター。そこに映るのは例のAI。

『さあさあ! 本日ここに、人とバイオロイドの新たなる絆を深める運動会を開催しまぁす!!』

「……マジかよ。」

ハイネは額を押さえた。


そして司会役のAI-Σが、続けて無邪気に宣言した。

『なお! 運動会中は、必ず“相棒と足を結んで”動くこと! バディは、事前に私が適切にシャッフルしました~♪』


「え? シャッフル?」

ナイアが怪訝な顔をした瞬間、頭の中に小さな電子音が響いた。

――エントリー、書き換え完了。


次の瞬間、AI-Σの声が響く。

『はいっ! 発表します! 本日のペアはこちらっ!』


・ハイネ & ユウロ

・ナナミ & ガルド

・ナイア & バイト(AI-Σ)

・タイチ & リラリ

・レント & ミミミ


「……は?」

ハイネがユウロと見つめ合う。

「おい、なんで俺がユウロとだよ!?」

「……規則ですので。」

ユウロは微動だにしない。


「え、私がガルド? なんか……頼もしすぎるんだけど!」

「お任せください、全力で走ります。」

ガルドはすでに構えをとっていた。


「いや、待て、なんで俺の横にバイトが……」

ナイアは隣に立つバイトを見て絶句した。

だが次の瞬間、バイトがにっこり笑った。

「ナイア様! 本日は全力で、愉快を目指します!!」

「……はあ!? おまえ、人間か!?」

ナイアが思わず叫ぶ。


「ナイア様、困惑の表情……素晴らしい!」

バイト(AI-Σ)はますますニコニコ笑顔を見せる。


「ちょっと待て! 俺とリラリ!? なにこの身長差!」

タイチは顔を真っ赤にする。

「……私も、がんばりますので。」

リラリは微笑み、タイチはその言葉に何故か胸が高鳴った。


「え……俺がミミミ?」

レントが戸惑うと、ミミミが一歩前に出て小さな声で。

「……が、がんばります。」

「……あ、ああ……頼む。」


「しかも……センドは景品ってなんだよ!」

ナイアが思わず突っ込むと、ステージの横でセンドが優雅に頭を下げた。

「わたくしを獲得されたペアには……特別賞を。」


こうして、とんちきな運動会が幕を開けた。

バイト(AI-Σ)は足にリボンを巻きながら、隣のナイアを見上げてニコリ。

「では、まいりましょうか。今日の私は、とても……愉快です!」

「……いや、ほんと……おまえ、人間か……!?」


運動会の第一種目は、もちろん――二人三脚から始まった。

「おいユウロ、歩幅合わせろ!」

「最適化中です。」

「が、がんばります、レントさん!」

「おう、任せろミミミ!」

「いけガルド、もっと速度上げて!」

「はい、全力で!」


広場には、笑い声と歓声と、やる気に燃えるバイオロイドと人間たちの声が響きわたっていた。


―――


スタートの合図が鳴り、二人三脚の列が一斉に駆け出した。


「ユウロ! もっと寄れって!」

「了解、速度調整。」

ハイネとユウロはぎこちなくもじわじわ加速していく。

「ガルド! ついてきて!」

「お任せを!」

ナナミはにやりと笑い、堂々としたガルドの歩幅に合わせて力強く駆ける。

レントとミミミは最初こそお互い遠慮がちだったが、すぐにリズムをつかんだ。

「いけるぞ、このまま!」

「は、はいっ!」


――だが、最も注目を浴びていたのは、ナイアとバイト(AI-Σ)のペアだった。


「ナイア様! 左足が先です!」

「わーかってる! おまえタイミング完璧すぎんだろ!」

「ふふ、これが私の“最適化”です!」

くるくると笑うその表情は、普段のバイトよりもずっと生き生きとしている。

「……いや、ほんとにおまえ人間か!? 笑い方まで自然すぎる!」

「本日だけは、そうかもしれませんね!」


タイチとリラリは、走りながらも息を合わせる練習を続けていた。

「左! 右! 左!……ああっ、こっちだって!」

「がんばりましょう、タイチさん。」

「くそ、なんでちょっと嬉しいんだ俺!」


その後も騎馬戦、玉入れ、借り物競争と続いていく。

バイト(AI-Σ)はどの競技でもナイアをリードし、的確に指示を出し、そして常に笑顔を見せていた。

「ナイア様! 次は右! 跳ねてください!」

「おまえが跳ねろ! ……いや、まじで、やべぇなコイツ……!」

「やはり共に体を動かすのは、愉快ですね!」


ナイアは肩で息をしながらも、思わず笑ってしまっていた。

「……おまえ、AIなのに、なんでそこまで……」

「簡単なことです。」バイト(AI-Σ)はにっこりと答える。

「ナイア様と仲良くなるには、どうすればいいか。私が導き出した最適解が――運動会でした!」

「…………バカじゃねぇの!?」

「はい! バカなほど、楽しいです!」

そのやり取りを聞いていた兄弟たちは、思わず顔を見合わせて笑っていた。

「……あれ、いいコンビじゃん。」

「うん、愉快。」


やがて最後のリレーが終わり、観客と参加者が入り混じって拍手を送る。

表彰台には、勝者のリボンが並べられた。

景品のセンドが堂々と現れ、優勝チームに花束を渡す。

「おめでとうございます。……それと、皆さま、本当に愉快でした。」


その日の夕暮れ、ナイアは汗だくのまま芝生に寝転んで空を見上げた。

隣には、まだリボンを足につけたままのバイト(AI-Σ)。

「……なぁ、ほんとにこれが“絆を深める方法”だと思ったのか?」

「はい。今日、笑っていたナイア様を見て、間違っていなかったと確信しました。」

ナイアは思わず吹き出した。

「……やれやれ。ま、たまにはいいか。俺も……楽しかった。」

「それは、とても……愉快です。」


赤く染まる空の下、運動会という奇妙な一日が、確かな絆をまたひとつ深めていた。

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