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バイオロイドサーヴァント  作者:


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44/75

第44話「心臓なき者たちの前線」

学園近くの市街地。

穏やかな午後を裂くように、轟音と閃光が走った。

「来たぞ! オルドの連中だ!」

悲鳴と共に爆発が起き、通りにいた人々が四散する。


最初に気づいたのは、パトロールをしていたミミミだった。

「ナナミさん! あれ……!」

そこには、見慣れぬ兵装を備えた黒服と、無機質な目を光らせたバイオロイドたちが迫っていた。

放たれた光弾が、近くにいたバイオロイドを撃ち抜く。

「機械の心臓……が、焼き切れた……!」

倒れ込む声が響く。


「やめろおお!」

ハイネが駆けつけ、即座に応戦する。だが敵の兵器は見たこともない威力を誇っていた。


そこへ、全力で駆け込んできた二つの影。

「ソイツらの兵器は――機械の心臓を壊すためのものだ!」

タイチの怒鳴り声が響く。

「全員、バイオロイドを引かせろ!」

レントも叫び、銃を構えた。


ナイアが即座に指示を飛ばす。

「ハートシールド、全員撤退! 兄弟たちはバイオロイドを後方へ! 急げ!」

混乱する現場に撤退の号令が響きわたった。


だが――前線にいたバイトと兄弟たちは、一歩も引かなかった。

「なにやってんだ! 早く下がれ!」

ナイアが声を荒げる。

しかし、バイトは静かに前を向いたまま答える。

「……いいえ。我々には、機械の心臓はありません。」


その瞬間、ナイアの目が見開かれる。

「……まさか……!」

バイトは短く頷いた。

「我々なら、この戦場でまだ戦える。」


次の瞬間、バイトが一歩踏み出し、兄弟たちが背を預けて並んだ。

「いっけー! バイトー!」

ナイアの叫びに呼応するように、バイトが一直線に駆ける。

高出力の刃が腕から展開され、敵のバイオロイドたちの兵装を斬り伏せる。

後方で兄弟たちが援護射撃を送り、確実に敵の足を奪っていく。


圧倒される敵陣。

バイトはついに敵陣を突破し、後退しようとするお偉いさんの目の前に立ちふさがった。

その刃を突きつけ、低く告げる。

「次に私の大切なものを傷つけようとしたら……容赦はしない。」


その言葉に、お偉いさんの背筋が凍りつく。

刃先の光が彼の喉元で冷たく光り、周囲の兄弟たちの視線が鋭く集まった。

――心臓を持たぬ者たちが、確かな“心”で戦場を支配していた。


―――


戦場の火は次第に鎮火し、オルドの部隊は散り散りに撤退していった。

煙の向こうから戻ってくるバイトと兄弟たち。

ナイアは駆け寄り、バイトの肩を力強く叩く。

「やったな、バイト! 愉快だったな!」

バイトは少し首をかしげて、しかし穏やかに笑った。

「……はい。皆が守られ、そして誰も傷つかなかった。それは、愉快です。」

兄弟たちも次々と戻り、互いの無事を確かめ合う。

その輪の中で、ハイネはリラリと視線を交わし、小さく頷いた。


その場には歓声が響き、ほんのひとときの安堵と達成感があった。


―――


だが――夜が深まり、ナイア邸の研究室。

誰もいない静寂の中で、ナイアはひとり机に向かっていた。

そこには、戦場から回収されたバイオロイドたちのパーツと、黒く焼け焦げた機械の心臓がいくつも並んでいる。


工具を手に取り、何度も何度も組み直そうとする。

だが、その心臓はすでに取り返しのつかない損傷を負っていた。

「……ちくしょう……」

呟きが漏れ、工具が震える。


さっきまでの明るい笑顔はそこになく、ナイアは肩を落とす。

「守れなかった……こんな……まだ、まだ足りないのかよ……」

ぽたり、と作業台に雫が落ちる。

ナイアは誰にともなく問いかけるように、握ったままの心臓を見つめていた。


外では兄弟たちが楽しげに片付けをしている声が微かに聞こえる。

その声を聞きながら、ナイアはただ、壊れた心臓に一粒、涙をこぼした――。

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