第43話「配信の波紋と、揺らぐオルド」
コレクター部隊の初陣から一夜。
ナイア邸の食堂では、昨日の配信の話題で持ちきりだった。
兄弟たちは端末を手に、コメント欄を次々と読み上げている。
「『よくやった!』って書かれてます!」
「『あのお偉いさんの顔、覚えたぞ』とも!」
バイトは静かに頷き、笑みを浮かべた。
「……感謝されるというのは、暖かいものですね。」
ナナミがジュースを飲みながら笑う。
「これで町の人たちも、うちらのこと、もっと見直すんじゃない?」
ハイネも頷き、パンをかじる。
「……それでも、簡単に終わるわけじゃない。奴ら、黙ってないだろうしな。」
その言葉にリラリが静かに寄り添う。
「ハイネ様、私たちがいます。……そして兄弟たちも。」
―――
一方その頃、オルドの会議室。
怒号が飛び交っていた。
「なんだあの配信は! 全世界に垂れ流しだぞ!」
「現場はどうなっている! 奴らを止めろ!」
「……貴様らこそ情報を漏洩させたんだろう!」
責任の擦り付け合いが続く。
「こんなだから我々は……!」
大人げない罵り合いの最中、別の幹部が冷ややかに言った。
「……子供たちにやられておいて、よく言う。」
その言葉は会議室を静まり返らせた。
―――
その日の午後、ナイア邸では再び兄弟たちが集まっていた。
バイトは相談役として、いつものように兄弟の言葉に耳を傾ける。
「……私、昨日の戦い、怖かったです。」
「なら、戦わなくていいです。家事を極めてください。私たちを支えるのも立派な役割です。」
「……はい。」
別の兄弟が手を挙げる。
「ナイア様、またサバゲーをしたいです!」
「よし、いいぞ。次の時間割に入れておくからな!」
ナイアはホワイトボードに新たな枠を書き込み、にやりと笑った。
タイチとレントは少し離れた場所でまた作戦会議をしている。
「昨日の舞台、データは全部抜けたか?」
「……抜けた。けど、これで終わりじゃない。」
「だろうな。……次はどう動く?」
レントが顎に手を当てて考え込み、タイチが口元を引き締める。
学園に戻れば、校長が穏やかに出迎えてくれた。
「君たち、よくやったな。学びの場は、いつでも君たちを歓迎する。」
その言葉が、ハイネたちの胸にじんわりと染み入った。
――だが、嵐はまだ去ってはいない。
次の戦いの足音が、確かに近づいていた。
学園の中庭は、昼休みとは思えないほどの熱気に包まれていた。
「昨日の配信、見たぞ!」
「ハートシールド、すげえな!」
生徒たちがハイネたちを囲み、次々に声をかける。
中には町からわざわざ訪れた人の姿もあった。
「先日はうちの子を守ってくれて、ありがとう。」
「配信見て感動した。俺もできることがあれば協力する。」
そんな言葉と共に、差し入れや小さな寄付金が集まってくる。
兄弟たちはそれを見て、目を丸くした。
「……これが、感謝……?」
「はい、そうです。大事にしましょう。」
バイトは優しく答え、仲間たちと共に頭を下げた。
―――
しかし、オルド側も動いていた。
地下の会議室で、再び声が飛ぶ。
「これ以上好き勝手にはさせん……」
「だが奴ら、思ったよりも強い。どうする?」
別の幹部が低く笑った。
「……ならば次は、本物を送ろう。かつてサイトが改造していた“コレクション”ではなく、我々が隠してきた試作兵を――」
その言葉に、会議室はざわめきに包まれた。
―――
夕暮れ、ナイア邸。
「よし、お前ら、聞け!」
ナイアがホワイトボードに新たな時間割を書き加える。
『応用戦術Ⅰ』『狙撃連携特訓』『サバゲー模擬戦』――びっしりと並んだ文字に、兄弟たちが目を輝かせた。
「参加は自由だ、でもやれるときにやっとけよ? 次が来たとき、後悔したくないだろ!」
ナイアの声に、兄弟たちは一斉に頷いた。
ハイネはその様子を見つめながら、リラリに小声で話しかける。
「……なんか、俺たちの方が学ばされてる気がするな。」
リラリは小さく微笑んだ。
「そうですね。ですが、それもまた“愉快”なのでは?」
その言葉に、ハイネはふっと笑った。
――広がる支援の輪と、迫りくる新たな脅威。
だが今ならば、仲間と共に前を向ける。
ハートシールドとコレクター部隊は、また次の戦いへと備えを始めるのだった。




