第41話「侵入と、照れと、実践」
夜の帳が降りた頃。
タイチとレントは、黒服の影が行き交う街外れの倉庫――オルドの隠れアジトに潜入していた。
薄暗い通路を抜け、無人の端末が並ぶ情報室にたどり着くと、タイチが小声で呟く。
「……急ぐぞ、見つかる前に抜く。」
レントが頷き、端末に小型デバイスを接続。
スクリーンに次々と機密ファイルがコピーされていく。
その時、重い扉が開いた。
――バイオロイドを伴った、軍服姿のお偉いさんが現れる。
「侵入者だと?」
ユウロとガルドが即座に前へ。
ガルドの大剣が閃き、ユウロの小さな身体が光を帯びて高速展開する。
二人の手には、ナイアが開発したばかりの新兵器――“機械の心臓を止める武器”が握られていた。
ユウロが冷静に射出する光線がバイオロイドを貫き、その機体は悲鳴もなく動きを止める。
ガルドが一気に飛びかかり、最後の一撃で完全停止させた。
「……行くぞ。」
「応。」
二人は情報を抱えたまま夜闇を駆け抜け、息を整えながらレントの屋敷へ戻る。
そこで明かされたのは――オルドが秘密裏に行っている裏代理戦争の舞台の場所だった。
「……ここか。」
レントが地図を見つめ、タイチは険しい顔で頷いた。
「次は、俺たちも本気だな。」
―――
一方その頃、ナイア邸の一室。
ハイネとリラリが、妙に気まずい空気をまとって向かい合っていた。
あの時――教壇で口にした「パートナー」という言葉が、ずっと頭から離れない。
リラリは膝の上で手を組み、そっと視線を逸らす。
「……パートナー、という言葉……誇らしく、嬉しいはずなのに……何故か、ハイネ様の顔を見れません。」
ハイネは頬をかき、少し俯いて笑った。
「それは……照れだな。」
「……照れ、ですか?」
「俺も……照れてるから、あんま見ないでくれ。」
リラリはぱちりと瞬きをしてから、微かに笑った。
「……では、私も見ないようにします。」
二人の間に、ほんのりとした温かさと心地よい沈黙が流れた。
―――
そして――夜の訓練場。
「さぁ、今日もサバゲーだ! 全員集合!」
ナイアの声が地下に響き渡る。
今日の実践は特別だ。
センド、リラリ、ミミミも参加。
さらにはハイネ、ナナミ、ナイア自身もプレイヤーとしてフィールドに立つ。
薄暗いフィールドでペンキ弾が装填され、全員が構える。
ハイネは銃を握りしめながら、ふと思う。
(……そういえば、こいつら全員……人間に攻撃できるんだよな。)
それでも、不思議と恐れはなかった。
背後でリラリが控え、横でナイアとナナミが笑っている。
掛け声と共に、ペンキ弾が飛び交う愉快な戦場が、再び幕を開けた。
サバゲー訓練場は、まさに混沌だった。
通路を駆け抜ける兄弟たち、飛び交うペンキ弾、背後からの声――
「敵か味方かわからん!」
「通信! 通信を信じろ!」
誰かの叫びが飛び、ナイアの張り切った指示が飛び交う。
兄弟チームのコンビネーションは、まさに難敵だった。
遠距離・中距離・近距離が有機的に連携し、ハイネたちを翻弄する。
だが、負けていないのがハートシールド。
人とバイオロイドがタッグを組み、前線をじわじわ押し上げていく。
「前に出るぞ、センド!」
「はい、ナイア様!」
ナイアとセンドのペアは、体術を基本とした連携で敵陣を切り裂く。
ナイアが素早く組み付いて相手の動きを封じ、センドが隙を突いて強烈な一撃を叩き込む。
その鮮やかな連携に、ナナミが叫んだ。
「もうあんたら前線で戦いなさいよ!」
「いいじゃん、楽しいんだもん!」
ナイアは笑って、さらに組み付く。
一方のナナミは、ミミミと共に銃を構えて応戦中。
「右だよ、ナナミ!」
「わかってるって!」
ミミミが優しい声で指示を出し、ナナミは的確に引き金を引く。
ペンキ弾が敵を直撃し、ナナミがガッツポーズをした。
「お! こっちも行けるんじゃない?」
ナイアが茶化すように叫ぶと、ナナミは「うるさい!」と返すが、頬は少し緩んでいた。
そして最前線。
ハイネとリラリは、舞うように戦っていた。
これまでのように「守る」だけではなく、「勝つため、楽しむため」の戦い方。
リラリのスカートがひるがえり、ハイネの動きと重なって一つの流れを作り出す。
「……楽しいな、リラリ!」
「ええ、ハイネ様!」
二人の息は完璧だった。
試合が終了したとき、フィールドにはペンキまみれの笑顔が広がっていた。
兄弟たちが「愉快だった!」と口々に叫び、ハイネも息を切らしながら笑っていた。
―――
夜。
ナイアの通信機が震え、静かな声が耳に届く。
『ナイアか。――敵の尻尾をつかんだ。』
ナイアは一瞬目を細め、すぐにニヤリと笑う。
「了解。コレクション……いや、コレクター部隊、いつでも突撃可能さ!」
その声には、次なる戦いを待ちわびる高揚が混じっていた。
――愉快な戦場の後には、また新たな戦場が待っている。
ナイアの笑みは、夜の灯りの中で頼もしく光っていた。




