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バイオロイドサーヴァント  作者:


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35/75

第35話「愉快のかたちと、割れる大人たち」

オルド・ガーディアンズの本部、重厚な会議室。

報道されたリーク情報が世間を揺らし、内部は荒れに荒れていた。

「――誰だ! あんなことをしでかしたのは!」

「そもそも、もっと慎重に動くべきだったんじゃないのか!?」

「な……! 貴様らこそ、情報を漏洩させて――!」

怒号が飛び交い、黒服たちが互いを罵り合う。机が叩かれ、書類が宙を舞った。

彼らの耳に、以前校長が口にした言葉がよぎる。

――学びの場は開かれるべきです。

子供達の可能性を潰すなど、大人げない。

その言葉が鋭い棘となって、誰も口には出さずとも胸に刺さっていた。


―――


一方そのころ、学園の裏庭。

ハートシールドの面々は小さなテーブルを囲んでいた。

夕方の柔らかな光に包まれながら、湯気の立つお茶が回される。

バイトは湯飲みを見つめながら、ぽつりと呟いた。

「……愉快、ですね。」

ナイアが笑う。

「何がだ?」

「みんなで集まるのも、愉快。お茶を飲むのも、愉快。」

リラリが優しく目を細める。

「……そう思えるのなら、とても素敵なことですよ。」

センドも頷く。

「愉快を知ることは、心を育てる一歩かと。」

バイトは少し考えてから、ふと顔を上げた。

「……サイト様の死に顔も、愉快でした。」

湯飲みを持つハイネの手がピタリと止まる。

「……それは、言わないようにしよう、な?」

渋い顔で釘を刺すと、バイトは小さく首を傾げて「……はい」と答えた。

ナイアは肩を揺らして吹き出す。

「お前、どんどん面白くなってくなぁ!」


―――


その後もハートシールドは、町で小さなお手伝いを重ねていく。

迷子を探し出す。壊れた農具を直す。落し物を届ける。

感謝の言葉が、少しずつ、確実に彼らの胸を温めていった。

「ありがとう、助かったよ。」

「本当に……あなたたちがいてくれてよかった。」

その度に、メンバーたちは目を合わせ、確かな絆を感じる。


それはただの実績ではない。

誰かの心に届いた証であり、皆を強く結びつけていく糸だった。

新たな戦いが待っていようと、この瞬間だけは、皆が同じ気持ちを抱いていた。

「……今日も、愉快でした。」

バイトのその言葉に、リラリが優しく笑い、ハイネは小さく頷いた。


―――


オルド・ガーディアンズの地下施設。

暗い倉庫の奥、埃をかぶった無数のカプセルが並んでいた。

「……これが、かつてサイトが改造していた“コレクション”か。」

黒服の一人がモニターを見ながら呟く。

「人間にも攻撃可能……忌々しい機械だが、今は利用価値がある。」

別の男が笑みを浮かべる。

「よし、起動しろ。」

カプセルの中の人型たちが目を開けた。

かすれた声で、命じる者を探すように首を動かす――その顔立ちは、どこかバイトに似ていた。

まるで、彼にとっての兄弟たち。だが、その瞳には感情が宿っていない。


―――


一方、ハートシールドの拠点。

「なぁ、レント! もっと予算くれよぉ!」

ナイアが机を叩きながら詰め寄る。

「……お前は昔から散財しすぎだ。」

レントがため息をつく。

「研究費だって! 心臓無効化兵器とか、色々いるんだって!」

「俺は一度没落している。無駄遣いがどれだけ身を滅ぼすか、痛いほど知っている。」

レントの言葉にナイアが黙り込み、しかしすぐに頬をかく。

「……うーん、説得力あるなぁ。」

そんなやり取りを見て、センドは静かにお茶を差し出す。

「ナイア様、落ち着かれては?」

「……はぁい。」


―――


隣の部屋では、タイチとユウロがこそこそと端末をいじっていた。

「見ろよ、これ。」タイチが画面を指差す。

監視カメラの映像が映し出すのは、オルドの施設。

ユウロが小さく声を漏らす。

「……あれは、コレクション……。」

「まさかあいつら、あれに手ぇ出すとはな。」

タイチの目が鋭くなる。

「やばいな……バイトに似てる奴らが、いっぱいだ。」

ユウロは黙って頷き、データを保存する。


―――


そのころ、街ではハイネとナナミがパートナーと共に巡回――いや、半分はウィンドショッピングだった。

「これ、似合うと思わない? ミミミ!」

「……かわいい、と思う……。」

ナナミは目を輝かせながらワンピースを手に取り、ミミミの肩に当てる。

「やっぱりこれ買おうかなぁ!」

横でハイネは、少し離れた靴屋のディスプレイを眺めていた。

(……リラリのハイヒール、そろそろ新しいの買ってやるか……。でも、この予算じゃちょっと足りないかな……。)

リラリは隣で静かに微笑んでいる。

「……ハイネ様、どうされましたか?」

「ん、いや、なんでも。」

 ハイネは小さく笑って、もう一度ショーウィンドウに目をやった。


―――


夕暮れが街を赤く染める。

オルドは新たな“コレクション”を動かし、ハートシールドは日常の中でまた一歩進む。

そして、バイトは拠点の隅で、賑やかに笑い合う仲間たちをじっと眺めていた。

「……愉快、ですね。」

その声は小さく、しかし確かな温かさをもっていた。

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