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バイオロイドサーヴァント  作者:


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33/75

第33話「守られる学び舎、揺れる心」

朝の学園。

いつものようにハートシールドの面々が集まっていると、校長室の方からざわめきが聞こえた。

ナイアが耳を澄ませて眉をひそめる。

「……来たか。」


校長室の前に立っていたのは、昨日と同じ黒服たちだった。

「――ハートシールドのメンバーを、直ちに学園から退学させていただきたい。」

穏やかながらも威圧感のある声が室内に響く。

「彼らの活動は危険を孕んでいます。我々の管理下に置くべきです。」


しかし、校長はゆっくりと立ち上がり、眼鏡を押し上げた。

「……学びの場は、すべての子供達に開かれるべきです。」

その声は静かだが、決意が宿っていた。

「彼らは危険を乗り越えて、今ここに立っています。可能性を潰すなど……大人げないにも程がある。」

黒服たちは顔をしかめたが、校長の視線に一歩も引かず、やがて無言で踵を返した。

ナイアたちは廊下の影からそのやりとりを見ていて、校長がこちらを向くと深く頭を下げた。

「……ありがとうございます。」

「君たちが未来を選ぶ目を持っているなら、それでいい。」

校長は柔らかく笑った。


―――


夕方、ナイアの研究室。

バイトがそっと扉を叩いた。

「……ナイア様、少し……お話を。」

「ん? どうした?」

ナイアが工具を置いて振り返る。

しばし黙った後、バイトは言葉を探すように続けた。

「……この前、子供に聞かれました。『なぜ助けるのか』と……」

「おう、そりゃ聞かれたら困るよな。」

「……私は……『助けたいから』……確かにそう思った……のだと思います。」

ナイアは一瞬目を見開き、それからへらりと笑った。

「じゃあ、一歩レベルアップだな。」

バイトは小さく瞬きをして、言葉を失ったまま立ち尽くす。

後ろでセンドが静かに頷き、優しい目でバイトを見つめていた。


―――


翌日、ナイアは学園の裏庭でみんなを呼び集めた。

「さて……新しい発明をお披露目します!」

いつもの調子で堂々と両手を広げる。

その後ろに並べられていたのは、見たことのない小型兵器の数々。

「これさえあれば……バイオロイドを壊さなくても、戦闘を無力化できる!」

「……え?」ハイネが目を瞬かせる。

「一時的に、機械の心臓を停止させる。起動系統は生きてるから、修復後にまた動かせるんだ。」

「そんなことが……」リラリが思わず息を呑む。

「これなら、相手を守りながら戦える。」

ナイアは真剣な眼差しで仲間を見渡す。

「……バイオロイドも、人間も、護る。それが俺たちだろ?」


夕陽が差し込む中、ハイネは静かに拳を握りしめた。

「……ああ、やろうぜ。そのためのハートシールドだ。」

仲間たちが頷き、バイトもまた、胸の奥に芽生えた新しい感覚を大事そうに抱えていた。


―――


数日後。

学園の正門前には、教師や生徒、保護者たちが集まり、プラカードを掲げて声をあげていた。

「オルド・ガーディアンズは真実を隠している!」

「バイオロイドの戦闘を操り、人間を危険に晒した!」

校長が先頭に立ち、マイクを握る。

「我が学園の子どもたちは、命をかけて街を守っています! その可能性を脅かす組織に、未来は託せません!」

その言葉に大きな拍手と歓声が沸き起こり、ニュースカメラが一斉にシャッターを切った。


―――


一方、学園裏の訓練場では、ナイアが新たな兵器の試運転を準備していた。

訓練用に設置された模擬戦闘用バイオロイド。

その胸部には「模擬心臓」とラベルが貼られた装置が組み込まれている。

「よし……これで試すぞ。」

ナイアがスイッチを入れると、装置は淡い光を放ち、兵器から放たれた特殊電波が模擬心臓を停止させた。

機体がその場で動きを止める。

「成功だな。」

レントが満足げに頷く。

「壊さずに無力化……これなら、守れる戦いができる。」

ハイネが小さく笑った。


試験が終わると、ナイアは模擬心臓を手に取り、じっと見つめていた。

「なぁ、バイト。」

「はい。」

バイトはまっすぐナイアを見上げる。

「……お前、心臓がほしいか?」

その問いに、バイトは一瞬だけ視線を落とし、自分の胸に手を当てた。

そして、静かに首を横に振る。

「……心臓がなくても、心がある。それが自分なんだと……思います。」

ナイアはしばし目を見開き、それから、少年のような笑顔で吹き出した。

「……だよな。いい答えだ。」


彼はその模擬心臓をひょいと持ち上げ、くるりと回して――ぽいっとゴミ箱へ投げ入れた。

「……はい、ゴミ決定っと。」

「え!? そんな扱いでいいんですか!?」

タイチが吹き出し、ナナミも笑いをこらえきれずに肩を揺らす。

「心臓がなくても心はある……なら、いらねぇだろ?」

ナイアはにやりと笑い、センドがその横で穏やかに微笑んだ。


遠くでは、学園前でのデモの声がまだ風に乗って聞こえてくる。

ハートシールドの仲間たちは顔を見合わせ、また一歩、自分たちの「心」を確かめ合ったのだった。

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